日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD22_1AM2] 重力・ジオイド

2014年5月1日(木) 11:00 〜 11:45 413 (4F)

コンビーナ:*今西 祐一(東京大学地震研究所)、松本 晃治(国立天文台RISE月惑星探査検討室)、座長:小澤 拓(防災科学技術研究所)、松尾 功二(京都大学 理学研究科)

11:30 〜 11:45

[SGD22-P05_PG] 地震学的構造調査結果を反映した3次元重力モデリングによる地殻の厚さの推定

ポスター講演3分口頭発表枠

*藤岡 ゆかり1石原 丈実2及川 光弘1金田 謙太郎1西澤 あずさ1 (1.海上保安庁海洋情報部、2.産業技術総合研究所)

キーワード:重力

海上保安庁では,1983年から2008年にかけて行った大陸棚調査の一環として,太平洋プレート北西部からフィリピン海プレートにかけての海域において,あわせて約100本にも及ぶ測線で,反射法および屈折法地震探査を実施してきた.一方で,同海域では海上重力測量も面的に精力的に行なわれており,莫大な量の重力観測値が得られている.これらのデータを利用して,3次元重力インバージョン法(Ishihara and Koda, 2007)により地殻の密度分布を推定し,地殻構造の面的な把握を試みた.
まず,海水,堆積層,地殻,マントル等の各層で構成された3次元密度構造の初期モデルを作成した.その際に,それぞれの地震学的構造調査測線の結果を,重力異常分布を参照しつつ,内挿した.この初期モデルを用いて重力値を計算した.計算した重力値と観測した重力値との差から定数を除いた値が,マントルブーゲー異常に相当する.次に,この値が十分小さくなるようにインバージョン解析を行った.算出したモホ面の深さから,地殻の厚さ分布を推定することができる.
インバージョン解析のための初期モデルとして,地殻の厚さを一定値としたモデルから,屈折法地震探査より得られた速度構造から推定したモホ面の深さの情報を加えたモデルへと改良したことにより,解析の結果としてより妥当な密度構造モデルが得られることが確かめられた.
また,海域によっては,堆積層やリソスフェアの密度や厚さなどの,地殻以外の構造から及ぼされる影響が大きい場合もあり,海域ごとに異なるそれぞれの構造を考慮することが必要となる.例えば,フィリピン海プレート北西部では,九州・パラオ海嶺の東西で,リソスフェアの年代の違いによる厚さの差によるものと考えられる,モホ面より深部の構造が,インバージョン解析の結果に大きく影響する.そのため,初期モデルから計算した重力値と観測値との差にローパスフィルタ(フィルタ幅400 km)をかけた値を補正量とし,初期モデルから計算した重力値から除くことで,モホ面より深部の構造による影響を小さくした.
発表では,これらの解析上の工夫や操作,及びその結果得られた地殻の厚さ分布について報告する.広大な海域において地殻の厚さ分布を把握することにより,地球内部の構造や地殻の形成過程を知る一助となることが期待される.