日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL42_29PO1] 地球年代学・同位体地球科学

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)

18:15 〜 19:30

[SGL42-P05] NanoSIMSを用いた太古代ジルコンのU-Pb年代測定 -包有物中揮発性元素の測定を目指して

*石田 章純1高畑 直人1佐野 有司1David Jean2Pinti L. Daniela2 (1.東京大学大気海洋研究所、2.モントリオール大学)

キーワード:ウラン鉛年代測定, ナノシムス, ジルコン, 包有物, 太古代

太古代火成岩中の水素や硫黄などの揮発性成分の同位体比値を明らかにすることは、初期地球の内部進化を解釈する重要な手掛かりの内の一つである.火成岩中に産するジルコン中のアパタイトやガラスなどの包有物はそのような揮発性成分を保持していると期待されるが、これらはしばしばマイクロスケールで存在するため、高空間分解能な分析手法が求められる。同時に、そうした包有物が初生的な情報を残しているかを評価することも重要である.本研究ではNanoSIMS50を用いてこれらの問題へのアプローチを行っている.
測定は、カナダ、Nuvvuagittuq supracrustal beltのトーナル岩から分離されたジルコンを対象に行った.過去の研究で報告されているこのトーナル岩の年代は、LA-MC-ICP-MSを用いたU-Pb年代測定法で3661±4Maである[1].測定では、自形から半自形で結晶の長軸方向の長さが50から200μm程度のジルコンを対象とした.いくつかのジルコンには直径10μm以下のアパタイトやガラスの包有物がみられ、年代測定はこれら包有物を避けて行われた.
238U-206Pb及び、207Pb-206Pbの2種類の年代測定を同一スポットに対して行った.測定手法はTakahata et al.(2008)に準じた[2].1次イオンビームとして5nAの酸素イオンを用いた.238U-206Pbの年代測定では、30Si+, 90Zr216O+, 204Pb+, 206Pb+, 238U16O+, 238U16O2+を多重検出器で同時に測定し、207Pb-204Pbの年代測定では204Pb+, 206Pb+, 207Pb+を一つの検出器で磁場を変化させながら測定した。
測定の結果、206Pb/238U比は0.4932から0.7993とバリエーションをとり、207Pb/206Pb比は0.3052から0.3443の値をとることが分かった.得られたそれぞれの値をTera-Wasserburgコンコーディア図にプロットすると、過去の研究と良く一致する3638±19Maの年代が得られた.一方で、一部の試料において2つの年代値の不一致(ディスコーダント)が見られた.こうした試料では鉛を失うような変成作用を経験しているため、包有物中の揮発性元素の始原性は失われている可能性が高いと考えられる.U-Pb年代測定の結果をもとに、ジルコン中包有物の揮発性元素の分析を進めている.

[1] David et al., GSA Bulletin,121, 150-163, 2009.
[2] Takahata et al., Gondowana Res., 14, 587-596, 2008.