18:15 〜 19:30
[SGL43-P02] 砕屑性ジルコン年代から推定した福井県,富山県の手取層群の後背地
キーワード:ウラン―鉛年代, 砕屑性ジルコン, レーザー誘導結合プラズマ質量分析計, 手取層群, 中国東北部, 東アジア
はじめに 砕屑性ジルコン年代分布から,福井県石徹白地域と富山県有峰地域の手取層群の後背地を解析した.また,後背地解析の一環として,有峰地域周辺の飛騨片麻岩類・花崗岩類のジルコンU-Pb年代を測定した.
地質概説 手取層群は,西南日本内帯の飛騨帯~飛騨外縁帯に分布する中期ジュラ紀~前期白亜紀の浅海成~陸成層である.本層群は,石徹白地域では下位より九頭竜・石徹白・赤岩亜層群(前田, 1961)に,有峰地域では下位より東坂森・長棟川・跡津川層(河合・野沢, 1958)に三分され,それぞれ対比される.長棟川・跡津川層の下部層は現在の方位で西方から供給された網状河川堆積物(礫質堆積物)から,上部層は北方から供給された蛇行河川堆積物(砂岩泥岩互層)から成る.跡津川層上部(和佐府互層部層)の凝灰岩は,120.0±1.2 MaのU-Pb年代を有する。
周辺地域からのジルコン年代 有峰地域西方の飛騨片麻岩類は250-220 Maのジルコンを多く含み(Sano et al., 2000),朝鮮半島の広範囲を占める狼林地塊と嶺南地塊は,太古代~古原生代の基盤岩類,カンブリア~ジュラ系堆積岩類,および250-160 Maの花崗岩類からなる(e.g., Zhao et al., 2005).一方,中国東北部は「顕生累代の地殻成長」が顕著な地域で(Wu et al., 2000),主に250-160 Maの花崗岩類からなり,先カンブリア時代の岩石に乏しい(e.g., Wu et al., 2000).
測定試料・手法 有峰地域および石徹白地域の手取層群の各層から採取した砂岩および砂質シルト岩,有峰地域北方の飛騨花崗岩類下之本・船津岩体,西方の打保岩体,および北方の飛騨変花崗岩よりジルコンを抽出し,東京大学地震研究所及び名古屋大学環境学研究科のLA-ICP-MS でU-Pb 年代を測定した.
結 果 九頭竜亜層群および東坂森層は,上部ほど先カンブリア時代のジルコンの割合(%Pc)が減少する共通の傾向をもった.一方,石徹白・赤岩亜層群および長棟川・跡津川層について,石徹白地域では先カンブリア時代ジルコンの割合(%Pc)が80以上になるのに対し,有峰地域では10未満となった.先カンブリア時代のジルコンは,2500-1500 Maのものが卓越したが,石徹白地域では3500-2500 Ma(太古代)のものも散見された.また,九頭竜亜層群を含む全ての試料で250-220 Maおよび190-170 Maに共通のピークが見られた.中でも,有峰地域の網状河川堆積物では250-220 Maのピークが,蛇行河川堆積物では190-170 Maのピークがそれぞれ高い.飛騨花崗岩類は主に250-180 Ma,飛騨変花崗岩類は280-220 Maのジルコンをそれぞれ多く含み,180-170 Maのジルコンは乏しかった.飛騨花崗岩の下之本岩体は主に200-180 Ma,船津岩体は主に250-190 Ma,打保岩体は主に205-185 Maのジルコンをそれぞれ含む.また,有峰地域北方の飛騨変花崗岩は280-220 Maのジルコンを多く含む.飛騨帯に,180-170 Maのジルコンは乏しい.
考 察 石徹白地域の九頭竜亜層群と有峰地域の東坂森層は,岩相が類似し,上部ほど%Pcが減少するという共通した特徴をもつため,同様な後背地をもったと考えられる.
長棟川・跡津川層の砕屑性ジルコンは,%Pcが低く,ほぼ250-160 Ma(三畳~ジュラ紀)の年代を有する.従って,両層をもたらした河川の流域には,三畳紀~ジュラ紀の岩石が広く露出していたと見られる.また,長棟川・跡津川層の蛇行河川堆積物は,北方からの古流向を示し190-170 Maの年代ピークを有する.飛騨帯には180-170 Maの岩体が乏しいため,190-170 Maのジルコンは,飛騨帯より更に大陸側から供給されたと考えられる.アジア大陸東縁で先カンブリア時代の岩石に乏しい候補地は,中国東北部が最も考え易い.一方,長棟川・跡津川層の網状河川堆積物は,西方からの古流向を示し250-220 Maの年代ピークが高い.250-220 Maのジルコンは,有峰西方の飛騨片麻岩類を特徴づける.有峰地域では,平時に中国東北部からの蛇行河川により砂岩泥岩互層が堆積し,西方の飛騨片麻岩分布域が隆起するイ
ベントにより網状河川の礫質堆積物が堆積したものと見られる.
石徹白・赤岩亜層群は,2500-1500 Ma,250-220 Maおよび190-170 Maに年代ピークをもち,有峰地域の長棟川・跡津川層とは対照的に%Pcが非常に高い.また,太古代のジルコンも少量含む.飛騨帯の岩石中に先カンブリア時代のジルコンが乏しいため,これらの起源も大陸に求めざるを得ない.アジア大陸東縁で先カンブリア時代の岩石が広く分布する場所として,朝鮮半島の狼林地塊や嶺南地塊が挙げられる.石徹白地域の石徹白・赤岩亜層群は,朝鮮半島に起源をもつ河川の堆積物であると考えられる.以上のように,石徹白地域と有峰地域の手取層群中・上部は異なる河川系の堆積物である.
地質概説 手取層群は,西南日本内帯の飛騨帯~飛騨外縁帯に分布する中期ジュラ紀~前期白亜紀の浅海成~陸成層である.本層群は,石徹白地域では下位より九頭竜・石徹白・赤岩亜層群(前田, 1961)に,有峰地域では下位より東坂森・長棟川・跡津川層(河合・野沢, 1958)に三分され,それぞれ対比される.長棟川・跡津川層の下部層は現在の方位で西方から供給された網状河川堆積物(礫質堆積物)から,上部層は北方から供給された蛇行河川堆積物(砂岩泥岩互層)から成る.跡津川層上部(和佐府互層部層)の凝灰岩は,120.0±1.2 MaのU-Pb年代を有する。
周辺地域からのジルコン年代 有峰地域西方の飛騨片麻岩類は250-220 Maのジルコンを多く含み(Sano et al., 2000),朝鮮半島の広範囲を占める狼林地塊と嶺南地塊は,太古代~古原生代の基盤岩類,カンブリア~ジュラ系堆積岩類,および250-160 Maの花崗岩類からなる(e.g., Zhao et al., 2005).一方,中国東北部は「顕生累代の地殻成長」が顕著な地域で(Wu et al., 2000),主に250-160 Maの花崗岩類からなり,先カンブリア時代の岩石に乏しい(e.g., Wu et al., 2000).
測定試料・手法 有峰地域および石徹白地域の手取層群の各層から採取した砂岩および砂質シルト岩,有峰地域北方の飛騨花崗岩類下之本・船津岩体,西方の打保岩体,および北方の飛騨変花崗岩よりジルコンを抽出し,東京大学地震研究所及び名古屋大学環境学研究科のLA-ICP-MS でU-Pb 年代を測定した.
結 果 九頭竜亜層群および東坂森層は,上部ほど先カンブリア時代のジルコンの割合(%Pc)が減少する共通の傾向をもった.一方,石徹白・赤岩亜層群および長棟川・跡津川層について,石徹白地域では先カンブリア時代ジルコンの割合(%Pc)が80以上になるのに対し,有峰地域では10未満となった.先カンブリア時代のジルコンは,2500-1500 Maのものが卓越したが,石徹白地域では3500-2500 Ma(太古代)のものも散見された.また,九頭竜亜層群を含む全ての試料で250-220 Maおよび190-170 Maに共通のピークが見られた.中でも,有峰地域の網状河川堆積物では250-220 Maのピークが,蛇行河川堆積物では190-170 Maのピークがそれぞれ高い.飛騨花崗岩類は主に250-180 Ma,飛騨変花崗岩類は280-220 Maのジルコンをそれぞれ多く含み,180-170 Maのジルコンは乏しかった.飛騨花崗岩の下之本岩体は主に200-180 Ma,船津岩体は主に250-190 Ma,打保岩体は主に205-185 Maのジルコンをそれぞれ含む.また,有峰地域北方の飛騨変花崗岩は280-220 Maのジルコンを多く含む.飛騨帯に,180-170 Maのジルコンは乏しい.
考 察 石徹白地域の九頭竜亜層群と有峰地域の東坂森層は,岩相が類似し,上部ほど%Pcが減少するという共通した特徴をもつため,同様な後背地をもったと考えられる.
長棟川・跡津川層の砕屑性ジルコンは,%Pcが低く,ほぼ250-160 Ma(三畳~ジュラ紀)の年代を有する.従って,両層をもたらした河川の流域には,三畳紀~ジュラ紀の岩石が広く露出していたと見られる.また,長棟川・跡津川層の蛇行河川堆積物は,北方からの古流向を示し190-170 Maの年代ピークを有する.飛騨帯には180-170 Maの岩体が乏しいため,190-170 Maのジルコンは,飛騨帯より更に大陸側から供給されたと考えられる.アジア大陸東縁で先カンブリア時代の岩石に乏しい候補地は,中国東北部が最も考え易い.一方,長棟川・跡津川層の網状河川堆積物は,西方からの古流向を示し250-220 Maの年代ピークが高い.250-220 Maのジルコンは,有峰西方の飛騨片麻岩類を特徴づける.有峰地域では,平時に中国東北部からの蛇行河川により砂岩泥岩互層が堆積し,西方の飛騨片麻岩分布域が隆起するイ
ベントにより網状河川の礫質堆積物が堆積したものと見られる.
石徹白・赤岩亜層群は,2500-1500 Ma,250-220 Maおよび190-170 Maに年代ピークをもち,有峰地域の長棟川・跡津川層とは対照的に%Pcが非常に高い.また,太古代のジルコンも少量含む.飛騨帯の岩石中に先カンブリア時代のジルコンが乏しいため,これらの起源も大陸に求めざるを得ない.アジア大陸東縁で先カンブリア時代の岩石が広く分布する場所として,朝鮮半島の狼林地塊や嶺南地塊が挙げられる.石徹白地域の石徹白・赤岩亜層群は,朝鮮半島に起源をもつ河川の堆積物であると考えられる.以上のように,石徹白地域と有峰地域の手取層群中・上部は異なる河川系の堆積物である.