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[SGL44-04] 房総半島上総層群に記録されたMatuyama-Brunhes 極性反転境界の岩石磁気・古地磁気学的検討
キーワード:Matuyama-Brunhes boundary, rockmagnetism, paleomagnetism, L-M Pleistocene boundary, Boso Peninsula, Kazusa Group
本研究では房総半島上総層群国本層におけるMatuyama-Brunhes極性反転記録を検討するために詳細な岩石磁気実験および古地磁気実験を行った.試料は千葉県市原市田淵の養老川沿いおよび市原市柳川に分布する砂質シルト岩から,白尾タフ(TNTT)を挟む層厚13mの区間より層厚間隔約10cmで合計130本の定方位ミニコア試料を採取した.熱磁気分析および3軸IRM段階熱消磁の結果からは,試料に硫化鉄が含まれることと,磁鉄鉱が主要な磁化を担い赤鉄鉱は含まれないことが示された.磁気ヒステリシス実験より磁区構造を推定すると,殆どの試料が疑似単磁区の領域であることを示した.段階交流消磁の結果では先行研究と同様にTNTTの下位1.5m付近で逆極性から正極性への反転が見られたが,段階熱消磁では反転境界はTNTT周辺に見られた.両者の結果が不一致であった試料では,いずれも段階交流消磁で見られた正帯磁成分が段階熱消磁では300-400℃程度で消磁され,磁鉄鉱による異なる方位を持つ成分が抽出された.この原因は以下のように解釈できる.この地磁気反転境界周辺では堆積当時の地磁気強度は大変微弱であったため,磁鉄鉱によって獲得された逆帯磁した成分は僅かであった.これに対して,時間的に遅れて生成された硫化鉄起源の磁性鉱物が,極性反転後のより強い磁場のもと正帯磁成分を持つ磁化を獲得した.両者の保磁力分布はほぼ一致するため,交流消磁では正帯磁成分のみが抽出された.以上より,国本層におけるMatuyama-Brunhes極性反転境界は,従来いわれていた層準より上位のTNTT付近に位置する可能性が高いことが明らかとなった.