日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT38_30AM1] 地球構成物質のレオロジーと物質移動

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 511 (5F)

コンビーナ:*大内 智博(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、桑野 修(独立行政法人海洋研究開発機構)、清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

09:15 〜 09:30

[SIT38-02] 採掘空洞前方の岩盤中での大規模亀裂の形成を示唆する微小破壊の震源分布

*直井 誠1森谷 祐一2中谷 正生1村上 理3Thabang Kgarume4Thabang Masakale5Luiz Ribeiro6矢部 康男2川方 裕則3Anthony Ward6Ray Durrheim4小笠原 宏3 (1.東京大、2.東北大、3.立命大、4.CSIR、5.OHMS、6.SeismoGen)

キーワード:微小破壊, 誘発地震, 岩石破壊

採掘によって平板状空洞が形成され,それによる応力集中で誘発地震が多発する南アフリカCooke 4 鉱山(旧Ezulwini mine)の地表下1kmにおいてMw-4程度まで検知可能な微小破壊(Acoustic Emission; 以下AE)観測網を展開した.観測網は24台のAEセンサと6台の3軸加速度計からなる.Naoi et al. (2013; Pageoph)では,この観測により得られた約3ヶ月分のトリガー波形データを用いて約36万イベントからなる震源カタログを作成し,その90%以上が採掘前線から10m程度の領域内に密集していることを報告した. 本研究では,この観測網で得られた9ヶ月分のデータに対して,Naoi et al. (2013)と同様の手法で約100万イベントからなるAEカタログを作成し,さらにDouble Difference法による相対震源決定(Waldhauser and Ellsworth, 2000)を行い,採掘前線付近のAEの空間分布の詳細を調べた.震源決定には,Horiuchi et al (2011)の自動走時検測・震源決定プログラムを用いた.相対震源決定に用いる走時差もこの検測結果を使用している.また,大量のイベントを効率よく再決定するために,解析領域を互いに重複する小領域に分割し,各領域中のイベントに対して再決定を行ってから重複して計算された震源を平均化する手法(Hauksson and Shearer, 2005)を用いた.この処理により,上記100万個の震源の約96%が再決定された. 得られた震源分布から,採掘前線前方に密集しているAEは3次元的に広がった分布をしているのではなく,Dip,strike方向に数十mの広がりをもつ,複数の2次元的なAE集中域(以下tabular cluster)で構成されていることがわかった.各Tabular ClusterはAE密度が低い領域で隔たれており,それぞれのclusterを空間的にひとまとまりのgroupとして認識することができる.採掘域前方で起こるAEは空洞の存在による高差応力領域中でまんべんなく起こるのではなく,板状のZoneでのみ発生するようである.Tabular clusterは採掘前線に平行な走向を持ち,60-80度程度傾斜している.これは採掘前線周辺で視認される,最大剪断応力の方向にできる同程度に大規模な剪断亀裂 (Gay and Ortlepp, 1979; Adams and Jager, 1980; Adams et al. 1981)に類似している.解析期間中,40m程度採掘が進行した採掘パネル前方では,このようなTabular zoneが平均5m間隔で10個形成された. この観測では,地質調査によって断層の存在が確認された場所で,厚み数十cm程度の領域に強く密集した,非常に薄い面状分布を示すAE活動も確認されているが(直井・他;2013連合大会),Tabular clusterは,1-2m程度の厚みのなかに散らばったような分布を示しており,その密集度は既存断層面上の活動とは明らかに異なる.Tabular cluster内のAE活動は,採掘が近づくと共に徐々に増加し,採掘前線が通過すると活動がなくなるという時間発展を示しており,既存の弱面を利用して起こった破壊というよりは,採掘にともなって形成される大規模shear crackの形成過程で生じるAEと解釈できそうである.