日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT40_1PO1] 地殻流体:その分布と変動現象への役割

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*中村 美千彦(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、佐久間 博(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、高橋 努(独立行政法人海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)

18:15 〜 19:30

[SIT40-P02] 九州地方の三次元P波減衰構造

*才田 悠人1中島 淳一1 (1.東北大学)

キーワード:地震波減衰構造, フィリピン海プレート, 九州

1.はじめに
 九州地方では, フィリピン海プレートの沈み込みによる活発な島弧火山活動がみられる. さらに, 阿蘇と霧島との間におよそ110㎞の火山空白域があるなど火山分布に興味深い特徴もある. 島弧マグマの生成・上昇過程に関しては, 多くの沈み込み帯において, 地震波速度構造などに基づいたモデルが提唱されている(たとえば, Hasegawa and Nakajima, 2004). 一方, 地震波減衰は, 温度異常や流体分布に対して, 地震波速度とは異なる影響をうけることが知られている. そのため, 地震波減衰構造を詳細に推定することは, プレート沈み込みに起因するマントルウェッジの物理プロセスを理解するうえで重要である. 本研究は, 九州地方の詳細な3次元減衰構造を推定し, 九州地方のマグマ生成・上昇のメカニズムの理解を深めることを目的とする.

2.データ・解析手法
 本研究では, Nakajima et al. (2013) の手法を, 2003年4月から2013年12月までに九州地方とその周辺で発生した5195個の地震の速度変位スペクトルに適用した. まず, Sコーダ波のスペクトル比法によって震源パラメータを求め, その震源パラメータを用いて観測されたP波速度振幅スペクトルを補正した. 次いで, 補正したスペクトルをデータとして, 観測点毎に観測方程式を立て, インバージョンにより波線に沿った減衰(t*), サイト増幅特性とスペクトルレベルとを同時に推定した. 結果として75207本のt*が得らた. 最後に, 得られたt*をインバージョンすることで3次元P波減衰構造を推定した.

3.結果と議論
 得られた結果の特徴を以下に示す.
1) 深さ10kmでは活火山直下が高減衰異常を示す.
2) 下部地殻では九州全域が比較的高減衰を示す.この結果は,火山直下のみで高減衰を示す東北地方の結果とはやや異なっている.
3) 沈み込むフィリピン海プレートは非常に減衰が小さい.
4) 背弧側のマントル上昇流に対応すると考えられる領域が高減衰を示す. しかし, 阿蘇, 霧島の間に存在する火山空白域にはマントル上昇流に対応する高減衰域は見られな.
 今後は, 解の分解能の評価を行うとともに, 得られた3次元減衰構造と速度構造など他の結果と比較し, 九州地方のマグマ上昇モデルを提案する予定である.