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[SMP46-10] 東南極リュツォ・ホルム岩体オングル島に産するコロナの形成反応
キーワード:コロナ, 東南極, リュツォ・ホルム岩体
【はじめに】 コロナとは、ある鉱物の周囲を1種類あるいは複数種の鉱物の集合体が環状に取り囲む構造のことである。これは中心の鉱物とマトリクスの鉱物の反応によって形成されたと考えられている(Passchier and Trouw 1996)。この反応を特定することによって、コロナ形成時に岩石にどのような成分が出入りしたか、どのように温度圧力が変化したかを知ることができる。そこで本研究では、東南極リュツォ・ホルム岩体に産するコロナを対象とし、微細組織、構成鉱物の化学組成からコロナの形成反応を推定した。【地質概説】この岩体では、北東から南西に向かって、変成相が角閃岩相からグラニュライト相へと移り変わっている(Hiroi et al,. 2006)。その中の東オングル島にはグラニュライト相の変成岩類が広く分布する。主要な岩石はザクロ石片麻岩と角閃石片麻岩である(Ishikawa et al,. 1994)。ザクロ石片麻岩の中には、ザクロ石斑状変晶を含む角閃石主体の超塩基性岩が薄層として産する。このザクロ石斑状変晶の周囲にコロナが形成されている。【微細構造】この超塩基性岩の薄層には角閃石の多い領域と斜長石の多い領域が存在し、どちらの領域も角閃石、斜長石、褐色の黒雲母、斜方輝石から成る。ザクロ石の周囲には幅8-15mmのコロナが発達し、主に斜長石、緑色の黒雲母から成る。マトリクスとコロナの斜長石は双晶、組成累帯構造を持つ。ザクロ石は直径約15mmのほぼ円形で、0.5mm程度の凹凸が発達する。ザクロ石の凹部には、界面に直交する長軸を持つ黒雲母が産する傾向がみられる。【化学組成】ザクロ石;コアと比べてリムでFeが減少し、Mgが増加する。Fe+Mg,Ca値はほぼ一定である。斜長石;斜長石の多い領域、角閃石の多い領域、コロナ内部の順にCa/(Ca+Na)が増加する。どの領域もコアからリムにかけてCa/(Ca+Na)が増加する。黒雲母;角閃石の多い領域、斜長石の多い領域、コロナ内部の順にMg/(Fe+Mg)が減少し、どの領域もリムでコアよりもAlに乏しい傾向がある。角閃石;角閃石の多い領域の方が斜長石の多い領域に比べてAl、Mg/(Fe+Mg)が高く、どちらの領域もリムでコアよりもAlに富む傾向がある。斜方輝石;領域、コア、リムによらず、組成は一定である。【議論】 マトリクスの各鉱物のコア、リムでの組成差は成長累帯構造であるとして、それぞれの領域ごとに、リムの組成の平均値を反応式に用いた。ザクロ石とコロナ中の斜長石、黒雲母は全分析値の平均を用いた。角閃石の多い領域の平均値から求められるコロナ形成反応は、K以外の成分を閉鎖系とする次の式で書くことができる。 Grt + 1.10Bt + 3.25Pl + 0.76K + 0.81H2O = 1.91Bt + 3.62Pl 一方、斜長石の多い領域の平均値を用いて反応式を求めると、ザクロ石が生成物となってしまい、これは組織と矛盾する。よって、コロナ形成には角閃石の多い領域の黒雲母と斜長石がザクロ石と反応し、その際Kの供給が必要なことがわかった。また、この反応式の左辺の鉱物のモル比を体積比に直すと Grt : Bt : Pl = 1 : 1.4 : 2.8となり、ザクロ石の反応量が最も少ない。それにもかかわらずザクロ石の周囲にコロナが形成されていることから、ザクロ石からの成分の拡散が律速していたことがわかった。