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[SMP47-12] LegranditeとParadamiteの構造精密化 : 結晶化学と水素結合の詳細
キーワード:構造精密化, レグランダイト, パラダマイト, 結晶化学, 水素結合
Legranditeとparadamiteは淡黄色から黄褐色の亜鉛ヒ酸塩鉱物で、adamiteに代表される亜鉛ヒ酸塩鉱物やヒ素と化学的性質の近いリンを含んだリン酸塩鉱物など、関連鉱物は多数にわたるが、それぞれ構造は大きく異なっている。McLean et al. (1971) によってlegranditeの構造解析が行われており、paradamiteはBennett T J. (1980) により構造解析が行われているが、水素結合や配位席の歪量、関連鉱物との共通性等不明であった。今回、Oujela Mine, Mapimi, Durango, Mexico産legrandite(化学組成Zn2AsO4(OH)・H2O)及び、同産地のparadamite(化学組成Zn2AsO4(OH))の結晶構造精密化をリガク社製単結晶構造解析システム(RAPID)により行った。これまで不明であった水素位置を差フーリエ法により確定し、座標位置を決定するとともにBond-valence法によって電荷バランスと水素結合関係を明らかにした。構造の詳細、水素結合と結晶構造の関係性を議論する。Legranditeの構造は、2種類のAsO4四面体と1種類のZnφ6八面体(Zn1席)、3種類の大きく歪んだZnφ5複三角錐面体(Zn2~Zn4席)(φ=O, OH, H2O)によって構成されている。Zn多面体は頂点と陵を共有した独特の構造単位を形成し、AsO4四面体がこの構造単位を繋げる形でフレームワークを構成している。5配位席はイオン半径から予測される距離を有しているが、Zn(3)-O(1)の原子間距離は異常な値を示している。6席の水素原子は、強弱様々な13の水素結合を形成しており、これにより過剰の原子価を供給される酸素原子には配位数の低下が見られる。Zn(3)-O(1)の原子間距離の異常性も、水素結合による原子価の供給が原因であると推測する。また水素席は、c軸にのみ平行なトンネル構造を有している。この方向にプロトン導電の経路があり、伝導性に大きな一次元異方性があると推測する。Paradamiteの構造は、AsO4四面体とZnO3(OH)2複三角錐面体(Zn1席)、ZnO4(OH) 複三角錐面体(Zn2席)により構成されている。ZnO3(OH)2複三角錐面体は、O(3)-O(3)とO(5)-O(5)の陵共有によってa軸上に波状の鎖を形成し、AsO4四面体とZn2席のZnO4(OH) 複三角錐面体がZnO3(OH)2複三角錐面体と頂点を共有することで、paradamiteのフレームワークは構成されている。水素原子は、過剰配位型水素結合を形成しており、a軸にのみ平行に連続なトンネル構造を有している。Legranditeと同様に、アクセプター原子の配位数の低下、及びa軸方向にプロトン導電の経路があり、伝導性に大きな1次元異方性があることが推測される。