日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP47_1PO1] 鉱物の物理化学

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*奥寺 浩樹(金沢大学理工学域自然システム学系)、興野 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球進化科学専攻)

18:15 〜 19:30

[SMP47-P04] チタンを含むマグマの高圧下での粘度

*鈴木 昭夫1 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

キーワード:マグマ, 粘度, 月, マントル

TiO2は一般に地球のマグマでは副成分だが、月のマグマでは主成分である。特に高チタンマグマでは10wt%を超える含有量であり、Apollo 14 black glassでは16wt%に達するものもある。マグマは惑星内部で岩石が熔けて生ずるため、噴出の過程を考える上で高圧高温下での物性を知ることは重要である。さて、マグマ中でのSiは、地表付近の圧力において一般に4配位となることが知られており、SiO4四面体がマグマ中ではネットワークを形成している。ネットワークを構成する陽イオン(Tイオン)にはAlなどがあり、このTO4ネットワークの構造が粘度に大きな影響を与えている。Tiはマグマの組成、温度、圧力に依存して配位数が変わるため、Tiを含むマグマ(珪酸塩メルト)の粘度は複雑な挙動を示す。
そこで我々は、Tiを含む珪酸塩メルトの高圧下での粘度の変化を知るため、放射光を用いたX線影像落球法で粘度測定を行っている。今回はK2TiSi4O11組成のメルトについて報告する。実験は高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光実験施設であるPF-ARのNE7Aステーションにおいて行った。試料容器中にK2TiSi4O11組成の粉末と白金球を入れておき、高圧高温下においてメルト中を落下する白金球の速度を調べた。その後、落下速度とストークスの式から粘度を求めた。実験の結果、3GPa付近で粘度が極小となることがわかった。3GPa以上での粘度の増加は、メルト中のTiの配位数やTiを含むネットワーク構造が変化していることを示唆している。ところで、高いTiO2含有量であるApollo 14 black glass組成メルトの密度はSakamaki et al. (2009)によって調べられ、地球のマグマと比べて圧縮率が大きいことが分かっている。このため、圧力の増加と共に急激に周囲のマントルとの密度差が小さくなり、やがて密度逆転を起こす。Apollo 14 black glassは本研究で用いたK2TiSi4O11と近いTiO2量であるので、同様に高圧下で粘度が増加することが期待される。さらに、マントルとマグマの密度差の減少および粘度の増加によって、月深部では高チタンマグマが移動しにくくなると予想される。月深部の月震波高減衰域は、マントルの部分熔融が原因となった可能性がある。