18:15 〜 19:30
[SSS23-P17] 三次元 Qs 構造を考慮した統計的グリーン関数による強震動の評価-2011年東北地方太平洋沖地震の広域的地震動予測への適用-
キーワード:三次元減衰構造, 統計的グリーン関数, Qs, 2011年東北地方太平洋沖地震, 深さ依存性, 強震動予測
広域の地震動評価を目的に、三次元減衰構造考慮した統計的グリーン関数法による検討を進めてきた。今回は2011年東北地方太平洋沖地震への適用を試み、三次元減衰構造を考慮した場合(3-DQs値モデル)と、Q値を一様とした場合(一様Qs値モデル)で広域的な波形合成の比較を行った。
ここで用いた三次元減衰構造考慮の統計的グリーン関数法は、Boore(1983)に基づき、各要素の震源スペクトルから伝播経路において三次元減衰構造を考慮して基盤スペクトルを求め、サイト増幅率を乗算して得られた地表等の振幅スペクトルに適合する要素波をBoore(1983)の包絡形を用いて作成した後、震源破壊等を考慮して足し合わせるものである。今回、3-DQs値モデルとしてのQs 構造は中村(2009) による1Hz~10Hzの周波数範囲で求められているものを用いた。S波速度構造は気象庁のJMA2001を用いた。一様Qsは、Qs=100f1.00を与えた。地震動は、各K-NET及びKiK-net観測点の地表で評価し、サイト増幅率は中村(2009)が地盤分類毎に求めたものを用いた。
まず、三次元減衰構造の効果を見るために、震源は滑りが一様なモデルを用いて、三次元減衰構造を考慮した場合(3-DQs値モデル)と、Q値を一様とした場合(一様Qs値モデル)を比較検討した。断層面は長さ・幅・滑り方向にそれぞれ10×10×10に分割し、各要素の地震モーメントはMw9相当の1000分の1を一様に与えた。また、応力降下量についても一様に25MPaを与えた。断層長・幅は400km×200kmとし、走向及び傾斜角は200°及び15°を与え、破壊伝播速度は2.5km/s とした。まず、3D-Qs値モデルと一様Qs値モデルによる計算結果を観測記録に対する最大加速度の対数残差log10(O/C)の標準偏差で比較する。観測記録が100Gal以上の地点を見ると前者が0.224に対して後者は0.231であり、3D-Qs値モデルがやや小さい程度であるが、1Gal程度以上の地点でみると前者が0.253に対し後者は0.360となり、3D-Qs値モデルの方が合致度がよい。広域の応答スペクトルの分布を見ると、北海道や近畿などの遠距離においては、一様Qs値モデルを用いた場合には1Hz程度では過小評価となるのに対して、3-DQs値モデルの場合には観測記録をよく再現する。三次元減衰構造(中村,2009)の、たとえば西南日本のQ値をみると、深さ0-30kmがQs=88f0.93であるのに対し、深さ30-60kmではQs=155f0.66であり、深い方で周波数依存性が弱く1HzのQ値が大きく、10Hzでは小さめである。遠距離では、波線は深くQ値が大きい場所を長く伝播するため、1Hz程度の地震波は、より減衰しにくいと解釈できる。
断層面上の短周期地震動を発生する領域は一般に狭い領域に限られ、2011年東北地方太平洋沖地震の強震動については、SMGAモデル(Kurahashi and Irikura, 2011など)やSPGAモデル(野津, 2012)によって説明されている。そこで、Kurahashi and Irikura(2011)によるSMGAモデルを用いて検討を行ってみた。これは、5つのSMGAからなるものである。なお、計算では、すべてのSMGA で走向及び傾斜は193°及び10°とした。計算結果の波形は、一様震源モデルでは全体的に紡錘形であるが、SMGA震源モデルでは震源に近い観測点では個々のSMGA に対応して波形が複数の波群に分かれ、SMGAモデルの方が観測記録形状をよく説明する。しかし、遠方の観測記録では紡錘形となっている場合があるのに対して、計算結果は複数の波群に分かれたままのものが多くみられる。これは、震源距離にかかわらず同じ包絡形状の要素地震を用い、伝播経路の散乱などの影響で継続時間が延びる効果が含まれていないことが、波形が途切れる一因と考えられる。一方、応答スペクトルをみると、今回の計算では一様断層モデルとSMGA モデルで顕著な違いが見られなかった。
ここで用いた三次元減衰構造考慮の統計的グリーン関数法は、Boore(1983)に基づき、各要素の震源スペクトルから伝播経路において三次元減衰構造を考慮して基盤スペクトルを求め、サイト増幅率を乗算して得られた地表等の振幅スペクトルに適合する要素波をBoore(1983)の包絡形を用いて作成した後、震源破壊等を考慮して足し合わせるものである。今回、3-DQs値モデルとしてのQs 構造は中村(2009) による1Hz~10Hzの周波数範囲で求められているものを用いた。S波速度構造は気象庁のJMA2001を用いた。一様Qsは、Qs=100f1.00を与えた。地震動は、各K-NET及びKiK-net観測点の地表で評価し、サイト増幅率は中村(2009)が地盤分類毎に求めたものを用いた。
まず、三次元減衰構造の効果を見るために、震源は滑りが一様なモデルを用いて、三次元減衰構造を考慮した場合(3-DQs値モデル)と、Q値を一様とした場合(一様Qs値モデル)を比較検討した。断層面は長さ・幅・滑り方向にそれぞれ10×10×10に分割し、各要素の地震モーメントはMw9相当の1000分の1を一様に与えた。また、応力降下量についても一様に25MPaを与えた。断層長・幅は400km×200kmとし、走向及び傾斜角は200°及び15°を与え、破壊伝播速度は2.5km/s とした。まず、3D-Qs値モデルと一様Qs値モデルによる計算結果を観測記録に対する最大加速度の対数残差log10(O/C)の標準偏差で比較する。観測記録が100Gal以上の地点を見ると前者が0.224に対して後者は0.231であり、3D-Qs値モデルがやや小さい程度であるが、1Gal程度以上の地点でみると前者が0.253に対し後者は0.360となり、3D-Qs値モデルの方が合致度がよい。広域の応答スペクトルの分布を見ると、北海道や近畿などの遠距離においては、一様Qs値モデルを用いた場合には1Hz程度では過小評価となるのに対して、3-DQs値モデルの場合には観測記録をよく再現する。三次元減衰構造(中村,2009)の、たとえば西南日本のQ値をみると、深さ0-30kmがQs=88f0.93であるのに対し、深さ30-60kmではQs=155f0.66であり、深い方で周波数依存性が弱く1HzのQ値が大きく、10Hzでは小さめである。遠距離では、波線は深くQ値が大きい場所を長く伝播するため、1Hz程度の地震波は、より減衰しにくいと解釈できる。
断層面上の短周期地震動を発生する領域は一般に狭い領域に限られ、2011年東北地方太平洋沖地震の強震動については、SMGAモデル(Kurahashi and Irikura, 2011など)やSPGAモデル(野津, 2012)によって説明されている。そこで、Kurahashi and Irikura(2011)によるSMGAモデルを用いて検討を行ってみた。これは、5つのSMGAからなるものである。なお、計算では、すべてのSMGA で走向及び傾斜は193°及び10°とした。計算結果の波形は、一様震源モデルでは全体的に紡錘形であるが、SMGA震源モデルでは震源に近い観測点では個々のSMGA に対応して波形が複数の波群に分かれ、SMGAモデルの方が観測記録形状をよく説明する。しかし、遠方の観測記録では紡錘形となっている場合があるのに対して、計算結果は複数の波群に分かれたままのものが多くみられる。これは、震源距離にかかわらず同じ包絡形状の要素地震を用い、伝播経路の散乱などの影響で継続時間が延びる効果が含まれていないことが、波形が途切れる一因と考えられる。一方、応答スペクトルをみると、今回の計算では一様断層モデルとSMGA モデルで顕著な違いが見られなかった。