日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS26_30PM1] 地殻構造

2014年4月30日(水) 14:15 〜 16:00 315 (3F)

コンビーナ:*仲西 理子(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、座長:仲西 理子(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)

15:15 〜 15:30

[SSS26-P02_PG] 地理院地図を活用した重力測定値の補正と上町断層南部測線データの再検討

ポスター講演3分口頭発表枠

*領木 邦浩1 (1.兵庫職業能力開発促進センター電気・電子系)

キーワード:重力構造, 数値地理情報, 上町断層, 測量, 野外調査, 測定効率

1.概要
重力による地下構造解析などの野外調査を伴う地球科学研究では測定点などの地理位置情報の取得が不可欠である。特に重力測定においては各種の補正に際し測定点の緯経度のみならず標高を知ることが大きな負担となっている。これらの情報取得は現地での測地測量やGNSS測量(GPS測量やGLONASS測量など)で行われており、その補助的手段として大縮尺の地形図が併用されてきた。一方、近年数値化された地理情報の取得がWeb上で可能となりつつあり、例えば従来試験公開として試供されてきた国土地理院のWeb地図閲覧サービスは、2013年10月30日に正式公開に移行し、その名称も“電子国土Web.NEXT”から“地理院地図”へと変更 (国土地理院,2013a)になるなど、整備が進んできている。地理院タイル利用規約(国土地理院,2013b)に沿う学術研究ではこのサービスを活用できることとされており、地球科学を始めとするフィールドワークへの支援が期待される。そこで、地理院タイル(国土地理院,2013c)を用いて測定位置の情報を得られるJavaScriptアプリケーションを作成した。このアプリケーションによってモバイルディジタル機器と併用することによって野外でも容易に地理位置情報が入手できることとなる。
一方、筆者らはこれまで上町断層系南部で該当地域の地方自治体が発行した大縮尺地形図を基図として重力測定を行ってきたが、これらの図は現行の日本測地系2000に基づくものと旧日本測地系によるものが混在していた。今回、前述のアプリケーションによってこれらを統合再検討したので、そのアプリケーションを紹介すると共に再検討した結果について報告する。
2.対象地域
統合した測線は領木(2011),領木・西谷(2013)の測定結果に今回測定したものを延長させたものである。この測線は和泉市いぶき野から泉大津市夕凪町に至る約9,7Kmで、上町断層系のいくつかの断層に交差している。
3.地理情報の取得
測定点の緯経度および標高は国土地理院が提供する数値情報を使用した。これらの取得に際し、地理院タイルを用いた構築サンプルに加筆修正して作成したJavaScriptを主とするHTMLアプリケーションを構築して使用した。一般にWWWブラウザではシステム保護の目的で文字列をクリップボードに直接転写させないが、一部のブラウザにはJavaScriptを通じて転写する機能があり、その他のブラウザでもZeroClipBoard library (zeroclipboard.org, 2014)を用いることによって転写が可能となる。クリップボードに転写した数値情報はエディタソフトウェアまたは表計算アプリケーションで編集して使用した。今回は野外計測後に室内で一括処理するためのアプリケーションを作成したが、タブレット端末で運用すれば野帳代わりに測定現場で容易に数値情報を入手できる。これらの数値位置情報は重力測定点の図示および各種補正に使用された。
4.結果
測定点に関する数値情報を得るために従前は地形図からデジタイザで緯度経度を得ると共に標高を読図していたが、今回のアプリケーションを用いることによってこれらの作業にかかる時間が大幅に短縮できた。特に標高の読み取り誤差の精度が不安定であったものが地理院地図の精度に依存した一定のものとなり、データの等質性が確保できた。
5.今後の課題
今回作成したアプリケーションは地球科学を始めとする各種野外調査において測定効率の向上およびデータの等質性確保に有用であることが明らかになった。今後はタブレット端末での運用に向けたシステム開発を行うと共に地形補正への適用を検討することが課題となる。
参考文献
国土地理院(2013):地理院地図の公開について,地理院地図,http://www.gsi.go.jp/johofukyu/johofukyu40032.html.
国土地理院(2013):地理院タイル規約,地理院地図,http://portal.cyberjapan.jp/help/termsofuse.html.
国土地理院(2013):地理院タイルを用いた開発,地理院地図,http://portal.cyberjapan.jp/help/development.html.
領木邦浩(2011):和泉市西北部-中央部での都市地盤構造解析のための重力測定,近畿職業能力開発大学校紀要, vol.   19, p. 18 - 19.
領木邦浩・西谷忠師(2013);大阪湾岸中南部での重力測定,日本地球惑星科学連合2013年大会予稿集,SSS32 - P23.
zeroclipboard.org (2014): ZeroClipboard, http://zeroclipboard.org/index.html.