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[SSS30-08] JFAST 航海で得られた日本海溝プレート境界試料の古地磁気分析
IODP第343次航海 (Japan Trench Fast Drilling Project, JFAST) では,平成23年 (2011年) 東北地方太平洋沖地震で大きな滑りが生じたと考えられる日本海溝浅部でプレート境界断層を貫く掘削が行われた.プレート境界断層内部での cm スケールの変形を復元するため,コア試料の古地磁気分析を行った.プレート境界断層コア試料は鱗片状面構造が発達し,赤茶色・黒茶色の遠洋性粘土がシャープな境界面で接する構造をもつ.この境界面を含むように切り出された 3x3x5 cm3 の薄片用スラブを用いた.高知大学海洋コア総合研究センターの 2G755 パススルー型超伝導岩石磁力計を利用し,80 mT までの段階交流消磁と 0.5-1 cm 間隔での磁化測定を組み合わせた.段階交流消磁測定により,2つの古地磁気成分を取り出すことができた.そのうち一方 (低保磁力成分) は 20-30 mT で消磁される成分であり,もう一方 (高保磁力成分) は 80 mT での交流消磁でも消磁されなかった.高保磁力成分の方位は,同一のホールラウンド試料から切り出された複数のスラブではほぼ同一であった.一方,低保磁力成分は隣接するスラブ間や,同一スラブ内でも測定位置によって,異なる方位を示した.低保磁力成分の磁化方位の不一致は,プレート境界断層スラブ試料中の cm スケールの変形・回転を反映していることが考えられる.一方,高保磁力成分の磁化方位の整合性は,変形中または変形後に獲得されたためとすれば説明でき,変形時に磁性鉱物が生成されたとすればそれが高保磁力成分を担った可能性がある.