日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30_28PM2] 海溝型巨大地震の新しい描像

2014年4月28日(月) 16:15 〜 18:00 メインホール (1F)

コンビーナ:*金川 久一(千葉大学大学院理学研究科)、古村 孝志(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター)、小平 秀一(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)、座長:井出 哲(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

17:45 〜 18:00

[SSS30-23] 台湾車籠埔断層における古応力状態の変化と半定量化

*橋本 善孝1戸部 航太1葉 恩肇2 (1.高知大学、2.国立台湾師範大学)

キーワード:応力, 小断層解析, 応力解放量, チェルンプー断層

地震にともなう応力の変化を理解することは、地震の規模や性質を理解する上で重要である。台湾チェルンプ断層では1999年に発生した集集地震の詳細な地震波記録がとられ、地震直後にTaiwan Chelung-pu Fault Drilling Project(TCDP)による掘削が行われている。世界でもこのような断層は稀である。本研究の目的は、チェルンプ断層から得られた構造データを用いて、小断層に記録されている過去の応力状態を推定し、地震と応力の関係を時空間的に検討することである。地震後の応力状態はTCDPによって得られているが、地震前あるいは地震時の応力状態は地質学的な情報に保存されていることが期待できる。TCDPによる掘削は40m間隔を空け2箇所で行われており本研究ではホールAのコアを対象としている。得られたコアの範囲は深度400mから2000mまでである。地震断層は深度およそ1120mで確認された。コアの観察から、ほぼ全域に渡って小断層やオープンクラック、断層岩等の変形構造が確認された。このうち小断層面上のスリッケンラインのレイクとスリッケンステップからスリップデータを得た。スリップデータの数は195個である。また、コアと比較するために地表の露頭から小断層のスリップデータを測定した。調査地点は2地点あり、TCDP掘削地点からおよそ2km程度傾斜方向西方に離れている。岩相は主として灰色の頁岩からなる。スリップデータの数は146個である。 小断層解析には多重逆解法MIM (Yamaji et al., 2000)とk-means clustering (Otsubo et al., 2006)を使用した。小断層解析の結果、コアと地表からそれぞれ4つの応力解が得られた。それぞれ、コアの応力をc1-c4、地表の応力をs1-s4とし、Φ=(σ1-σ3)/(σ1-σ3)で表される応力比の小さいものからナンバリングした。解析の結果得られた応力解がどのような応力状態を取るかを推定するためAndersonの断層運動論に従ってstress polygonを描き、解析の結果得られた応力解をSHmax、Shmin、SVの3成分に分解することでstress polygonに投影した。投影した結果c1とc3はSHmax、Shminがともに比較的小さい範囲にあり、c1が正断層型、c3は全ての断層運動タイプをとり得る範囲を示した。c2はc1とc3に比べてSHmax、Shminがともに大きい範囲にあり、逆断層型を示した。c4はstress polygonに投影することができなかった。c1とc3はLin et al. (2007)で示されている地震後の現在の応力状態と調和的な結果となり、c2は集集地震時にチェルンプ断層が逆断層成分の滑りをしていたことと調和的な結果となった。この応力状態の違いは地震サイクルに伴う応力状態の変化を表している可能性がある。地表の結果ではs1とs3はSHmax、Shminがともに比較的小さい範囲にあり、s1は正断層型、s3は正断層型と横ずれ断層型の応力状態をとった。s2はstress polygonに投影することができなかった。s4はs1, s3に比べて大きいSHmax、Shminの範囲にあり、逆断層型であった。地表でも同様に地震サイクルに伴う応力状態の変化と見られる結果が得られた。これらを地震前後の応力とし応力降下量を計算すると、コアでは最大13.71MPa、地表では0~0.08MPa程度となった。Ma et al. (2000)は地震波解析から集集地震北部大変位域の応力降下量を平均10MPaと報告しており、おおむね一致している。