日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30_29PM1] 海溝型巨大地震の新しい描像

2014年4月29日(火) 14:15 〜 16:00 メインホール (1F)

コンビーナ:*金川 久一(千葉大学大学院理学研究科)、古村 孝志(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター)、小平 秀一(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)、座長:金川 久一(千葉大学大学院理学研究科)

14:30 〜 14:45

[SSS30-25] 南海トラフ付加体浅部堆積物の力学的特性

*金川 久一1高橋 美紀2東 修平1伊東 英紀1井上 厚行1 (1.千葉大学大学院理学研究科、2.産業技術総合研究所活断層・地震研究センター)

キーワード:南海トラフ, 付加堆積物, 破壊特性, 摩擦特性

IODP掘削地点C0002およびC0009において南海トラフ付加体浅部(海底下約1000-1500 m)から採取された、砂岩、凝灰岩、シルト質泥岩および粘土質泥岩5試料について、室温および試料原位置相当の圧力・間隙水圧条件で、三軸圧縮・摩擦実験を行った。上記の条件で、軸方向変位速度10 μm/sで三軸圧縮実験を行った結果、破壊強度は砂岩試料が約300 MPaと非常に大きく、凝灰岩試料が48 MPa程度、シルト質泥岩1試料が20 MPa程度、粘土質泥岩試料が14 MPa程度であった。砂岩、凝灰岩、シルト質泥岩試料の破壊時間は20秒以内と比較的短く、一方粘土質泥岩試料は約40秒かかってゆっくりと破壊した。シルト質泥岩のもう1試料は破壊せず、15 MPa程度の強度で延性的に変形した。砂岩試料は方解石でセメントされていて非常に硬く固結しているため、破壊強度が非常に大きかったと考えられる。一方、延性的に変形したシルト質泥岩試料は十分に固結していなかったと考えられる。粘土質泥岩試料は粘土鉱物に富む(約42 wt%)ため強度が小さかったことに加えて、孔隙率が小さく(約11%)透水性も低かった(約10-19 m2)ため、圧縮により間隙水圧が上昇して強度がさらに低下し、またゆっくり破壊したと考えられる。このような粘土質泥岩の破壊は、南海トラフ付加体浅部で観測されているスロースリップの発生源となっている可能性がある。さらに、上記の条件で軸方向変位速度を0.1, 1, 10 μm/sの間でステップ状に変化させながら三軸摩擦実験を行った結果、これらの試料の摩擦特性が、粘土鉱物の含有量によって系統的に変化することが明らかとなった。5試料の粘土鉱物の含有量は、砂岩試料が約6 wt%、凝灰岩試料が約17 wt%、シルト質泥岩試料が29-34 wt%、粘土質泥岩試料が約42 wt%である。変位速度1 μm/sにおける定常摩擦係数は、粘土鉱物の含有量の増加に伴って低下し、砂岩試料が0.87、凝灰岩試料が0.71、シルト質泥岩試料が0.53-56、粘土質泥岩試料が0.25であった。変位量に依存した摩擦挙動も粘土鉱物含有量の増加に伴って系統的に変化し、粘土鉱物含有量が少ない砂岩試料がすべり硬化を示すのに対し、粘土鉱物含有量の増加に伴ってすべり軟化に転じ、それが明瞭になる傾向が認められた。全試料とも、変位速度の増加に伴って摩擦強度が増加する速度強化の挙動を示すが、定常摩擦強度の変位速度依存性に対する (a - b) 値の割合は、粘土鉱物含有量の増加に伴って減少する。これは、粘土鉱物含有量の増加に伴って摩擦成分が低下し、流動成分が増加することを意味している。このように、南海トラフ付加体浅部の断層運動は堆積物中の粘土鉱物含有量によって支配されていると考えられる。