日本地球惑星科学連合2014年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30_29PO1] 海溝型巨大地震の新しい描像

2014年4月29日(火) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*金川 久一(千葉大学大学院理学研究科)、古村 孝志(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター)、小平 秀一(海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、宍倉 正展(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)

18:15 〜 19:30

[SSS30-P02] アウターライズ地震の多様性:2013年10月26日福島沖地震を例にして

*蓬田 清1 (1.北海道大学大学院理学研究院)

キーワード:アウターライズ地震, プレート内地震, 高周波数成分, 断層破壊, 海洋リソスフェアの不均質性

アウターライズ地震は、沈み込むプレートが折れ曲がる、あるいは自重によってプレート内部で起こる断層運動によって発生すると考えられている。約50kmより深いプレート下部での沈み込む方向に圧縮軸を持つ逆断層の地震もあるが、M7を超える大地震を含む多くは浅い部分での正断層の地震であり、その発生様式は沈み込むプレート年代や近傍のプレート境界での大地震の発生パターンと深く関係すると、考えられてきた。プレート内地震であることが震源過程の本質的な特徴であり、既存の断層面(弱面)がない領域での地震なので、通常の沈み込むに伴う地震に比べて高周波成分が卓越することが常識と考えられてきた。

2013 年 10 月 26 日に、2011 年東北沖地震の影響によると思われるアウターライズの大地震の一つとして、福島沖で JMA で M7.1 の地震が発生した。この地震では緊急地震速報が正常に機能しなかった。その判定に使われる 1Hz あたりの地震動がはるか沖の遠方という要素を考慮しても、小さかった可能性を示唆する。本研究では、F-net などの広帯域地震観測記録(とりわけ上下成分でのP波初動部分)を用いて、この地震の高周波数成分も含めた地震波の励起の周波数特性・波形の特徴を検証した。

日本海溝の外側の他のアウターライズ地震の波形記録を、沈み込み境界の地震のそれと同じ観測点で比較すれば、途中の伝搬のパス特性やサイト特性はほとんど影響しない。1Hz 以上の高周波成分はアウターライズ地震の方が明らかに卓越している。しかし上述の福島沖地震では、高周波数成分は太平洋沿岸のどの観測点でも目立たず、むしろ周期数秒程度のパルスが5回程度、明確に認められる観測点がいくつか存在した。この地震の直後にほぼ同じ震源位置で発生し、余震と思われる小さな複数の地震では、どの観測点でも高周波数成分だけが卓越しており、この福島沖地震の震源過程だけが異なることが確認された。つまり、この地震はアウターライズのプレート内地震ではあるが、破壊された断層面には10キロ程度の強度の大きな不均質性が複数あり、この地震の断層運動でそれらが最終的に破壊がつながった極めて特異な震源過程が示唆される。リソスフェアの微細不均質性のサイズ分布はフラクタル的なvon Karman型などでよく表現できることがわかっているが、この断層面近傍は上述のスケールの複数の不均質性が際立っていたはずである。

 福島沖に沈み込む太平洋プレートには海山列がいくつか認められており、今回のアウターライズ地震の特徴的な地震波励起を生じた不均質性の原因かもしれない。いずれにしても、アウターライズ地震は高周波成分によって早期判定ができるというこうこれまでの概念は再考する必要があり、多様な発生様式がありうることを提案する。日本近海で発生したいくつかのアウターライズ地震の波形記録を調べると、2012年3月14日に千島・日本海溝のコーナーで発生したM7.0の地震だけは、高周波数成分にやや富んでいるが、周期数秒のパルス状の波形も重なっており、福島沖地震と似た特性を持っている。沈み込むプレートの不均質や折れ曲がってかかる応力状態などで、多様な破壊過程が生じる可能性があることも考えられる。