10:30 〜 10:45
[SSS32-P05_PG] 伊豆-ボニン-マリアナ弧を構成する岩石の高温高圧摩擦特性
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:摩擦, 伊豆-ボニン-マリアナ弧, スロー地震, スティック・スリップ, 地震
関東平野の位置する北米プレートの下には,フィリピン海プレートと太平洋プレートが沈み込んでいる.特に東北日本弧や西南日本弧の沈み込み帯と違い,関東にはフィリピン海プレートに太平洋プレートが沈み込むことによって形成された伊豆・ボニン・マリアナ島弧(IBM)が衝突・沈み込んでいるのが大きな特徴である. これら3つのプレート境界およびプレート内部では,関東大震災を引き起こした巨大地震から房総半島沖でのスロー地震まで,多様な地震活動が確認されている. スロー地震は,巨大地震震源域の浅部及び深部の沈み込むプレート境界に沿った比較的幅の狭い領域で発生するが,関東周辺ではこのような地震性と非地震性のすべり挙動が比較的近い場所のほぼ同じ深度(等温等圧条件)で発生している可能性がある.地震の発生には,間隙水圧や断層面の形状などの様々な要因が寄与しているが,本研究では関東に沈み込むIBM弧を構成する様々な岩石の摩擦特性に着目し,その違いによって関東で発生する多様な地震発生機構を解明することを目指している.
そこで本研究では,ODP(Ocean Drilling Program)Leg125(Site784, 786)で採取されたIBM弧を構成する主要な5種類の岩石(marl, boninite, andesite, sheared serpentinite and serpentinized dunite)を10~50 μmの粒径になるように粉砕し,その摩擦特性を産業技術総合研究所に設置されている高温高圧ガス圧式三軸試験機をもちいて調べた.実験条件は,温度300℃,封圧156MPa,間隙水圧60MPa,軸変位速度0.1および1 μm/sである.摩擦実験の結果,sheared serpentiniteとserpentinized duniteは定常摩擦係数がそれぞれ0.55と0.35-0.41であり,摩擦の速度依存性は正であることがわかった.粉末X線回折とラマン分光分析によって同定した主含有鉱物が,sheared serpentiniteはantigorite,serpentinized duniteはchrysotileとiowaiteであることから,これらの摩擦特性はserpentiniteに関する既存の実験結果とよく一致することがわかった。一方,marl, boninite, andesiteは,すべり速度1 μm/sにおいてスティック・スリップが現れることがわかった.ただし,これらスティック・スリップは常温で見られる挙動とは異なり,平均ライズタイムがそれぞれ3.9, 9.3, 10.8 secと非常に長く,スロースティック・スリップとよぶことができるようなすべり挙動である.このようなスロースティック・スリップは,これまで岩塩や蛇紋岩の高温下における摩擦実験で確認されているが, 本研究のような堆積岩や火成岩で確認されたのははじめてである.実験条件が限られているため,本実験結果にのみ基づいて関東で発生する地震の多様性を議論するのは難しいが,今後このような特徴的なすべり挙動がどのような条件,特に温度条件によって現れるかを明らかにすることによって,関東で発生する地震の発生機構を物質学的に探っていきたい.
そこで本研究では,ODP(Ocean Drilling Program)Leg125(Site784, 786)で採取されたIBM弧を構成する主要な5種類の岩石(marl, boninite, andesite, sheared serpentinite and serpentinized dunite)を10~50 μmの粒径になるように粉砕し,その摩擦特性を産業技術総合研究所に設置されている高温高圧ガス圧式三軸試験機をもちいて調べた.実験条件は,温度300℃,封圧156MPa,間隙水圧60MPa,軸変位速度0.1および1 μm/sである.摩擦実験の結果,sheared serpentiniteとserpentinized duniteは定常摩擦係数がそれぞれ0.55と0.35-0.41であり,摩擦の速度依存性は正であることがわかった.粉末X線回折とラマン分光分析によって同定した主含有鉱物が,sheared serpentiniteはantigorite,serpentinized duniteはchrysotileとiowaiteであることから,これらの摩擦特性はserpentiniteに関する既存の実験結果とよく一致することがわかった。一方,marl, boninite, andesiteは,すべり速度1 μm/sにおいてスティック・スリップが現れることがわかった.ただし,これらスティック・スリップは常温で見られる挙動とは異なり,平均ライズタイムがそれぞれ3.9, 9.3, 10.8 secと非常に長く,スロースティック・スリップとよぶことができるようなすべり挙動である.このようなスロースティック・スリップは,これまで岩塩や蛇紋岩の高温下における摩擦実験で確認されているが, 本研究のような堆積岩や火成岩で確認されたのははじめてである.実験条件が限られているため,本実験結果にのみ基づいて関東で発生する地震の多様性を議論するのは難しいが,今後このような特徴的なすべり挙動がどのような条件,特に温度条件によって現れるかを明らかにすることによって,関東で発生する地震の発生機構を物質学的に探っていきたい.