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[SSS33-10] 合成開口レーダを用いたタンザニアの群発地震における地殻変動の検出とその発生メカニズムについて
キーワード:干渉SAR, 地殻変動, 東アフリカ地溝帯, 群発地震, 大陸形成, タンザニア
東アフリカ地溝帯は,陸域で発散するプレート境界がある数少ない地域である.この地域は東西に年間数cm拡大し続け,数百万年後には大陸が分断するとされている.また,この地域では中規模の地震や火山活動が活発にみられ,至る所に断層や火山が存在する. 2007年7月にタンザニア北部で最大Mw5.9の地震を含む群発地震が発生し,およそ2ヶ月にわたって続いた.Global CMTの発表によると,この群発地震の間にM>5の地震は8回発生しており,それらはいずれも正断層型の地震である.また群発地震が始まって1週間後には,震源域に近いOldoinyo Lengaiが噴火を始め,群発地震が終息に近づいた頃に噴煙中を伴う噴火をした.Biggs et al.(2009,2013)では、主にCバンド衛星であるENVISAT/ASARのデータに基づいて時系列的な群発地震とOldoinyo Lengaiの噴火に伴う地殻変動を検出した.しかし位相アンラップが部分的にできていない領域もあり,データが欠落している領域もある.いずれもDescendingのみのデータであるため、地殻変動の詳細を検出できていない可能性がある.そこで本研究では,より位相アンラップが容易な長波長のマイクロ波を用いているLバンド衛星であるALOS/PALSARのAscendingとDescendingのデータを用いて地殻変動の検出を行った.本研究の目的は,群発地震に伴う地殻変動の検出を行い,その地殻変動をより詳細に説明するために断層モデルを推定することで,陸域のプレート境界における地殻変動のメカニズムを解明する手掛かりを得ることである. AscendingとDescendingのInSARによる解析結果は,北東-南西方向にのびる沈降した領域がみられ,この領域を境に北西-南東方向に拡大する地殻変動が明らかになった.この地殻変動の空間変動パターンは,東アフリカ地溝帯が拡大している方向とほぼ一致する.さらにAzimuth Offsetの結果は,沈降した領域がやや南に変動していることを示している.以上の3つの結果を用いて3次元変位を求めた.沈降した領域では,鉛直方向に最大62cmの沈降と南南東方向に最大33cmの水平移動がみられ,それを挟む東西の領域では,わずかな隆起と北西-南東方向へ50cm程度の水平移動がみられた.これらの変動を詳細に説明するために,半無限均一弾性体を仮定して断層モデルを推定した.断層形状の複雑性を考慮するために,三角形の食い違い要素を用いた非平面断層モデルを推定した.求められた3次元変位とこの地域が引張場であることを鑑みて,西落ちと東落ちの2枚の断層をおいた. InSARによって得られた変位量を説明する断層のすべり量をインバージョン解析によって求めた.いずれの断層も2~4kmの深さで同じ程度のすべり量を示し,Strike方向には最大75cm,Dip方向には最大1mのすべり分布を示した.そのすべり量から得られる変位量は,観測値を良く説明するものである.推定した断層モデルによるモーメントの解放量(Geodetic Moment: GM)は群発地震で解放されたモーメント解放量(Seismic Moment: SM)を上回り,その比(SM/GM)は37.2%となった.この値が小さいほど非地震性の地殻変動が多く発生したことを示している.群発地震の発生期間中にOldoinyo Lengaiが噴火し,InSARによっても,この噴火活動に伴う地殻変動も検出された.群発地震と噴火との関連性についても議論する予定である.