16:15 〜 17:30
[SSS35-P10] 高密度常時微動観測から推定される高知平野の表層地盤構造
キーワード:常時微動, H/Vスペクトル比, 表層地盤, 高知平野
高知平野は南海地震の震源域近傍に位置し,南海地震発生時には強震動や津波による複合災害が危惧されており,減災に向けた強震動予測を行うことは重要である.強震動予測の為には,「震源特性」,「伝播経路特性」,「サイト増幅特性」の3つの特性を評価する必要があり,これらのうちサイト増幅特性の把握が近年盛んに行われている.サイト増幅特性の評価に必要な地盤モデルは,ボーリングなどの既存地盤資料によって進められているが,本研究では,コストの低さや測定方法の簡便さの観点から,常時微動(以下,微動:地表の微小な揺れの総称)の観測を行い,得られる水平動と上下動のスペクトル比(H/Vスペクトル比)を用いた高密度のサイト増幅特性の評価や地盤モデルの作成を行うことを目的とする.
本研究では「狭義の高知平野」と隣接する「香長平野」「高岡・弘岡低地」において1272点の単点微動観測を行い,そのうち1254点におけるH/Vスペクトル比を求めた.狭義の高知平野では約200m間隔で,香長平野と高岡・弘岡低地では500~1000m間隔で1点当り11分から15分以上の微動3成分観測を行った.H/Vスペクトル比の解析には,TremorDataView [先名・藤原(2008)]を使用し,スペクトル比のピーク数とピークごとの周期・振幅を読み取った.H/Vスペクトル比の卓越周期は表層地盤の厚さを,また振幅は地盤増幅率を反映した物理量であることが示されている[例えば中村(2008)].
高知平野におけるH/Vスペクトル比の卓越周期(図参照)は,浦戸湾北部周辺で長くなる傾向があり,最大で1.6秒である.その他の地域では0.1~0.8秒程度である.スペクトル比の最大値には地域的な特徴はみられず,局所的に振幅が非常に大きい地域が数か所存在する.卓越周期とスペクトル比の最大値の分布は,過去の南海地震の被害報告[都司(2012); 間城(2011); 三神・辻野(2012); 山品ら(2013)]とよく対応しており,被害が大きかった地域は微動の卓越周期が長く堆積層の厚いと考えられる地域や,スペクトル比の最大値の大きい,すなわち地盤増幅率が大きいと考えられる地域とよく対応している.中村(2008)の提唱する地盤に対する壊れやすさの指数Kg値(=最大値2/卓越周波数)の分布を見ると,過去の被害分布とよく一致しているので,高知平野に点在するKg値の高い地点は過去の被害報告がなくとも周辺よりも大きな被害を受けると予測される.また,浦戸湾周辺ではH/Vスペクトル比に2つのピークが表れるという特徴がある.狭義の高知平野西部と香長平野では,2つのピークを示す観測点は少ない.
得られたH/Vスペクトル比の卓越周期および第2ピーク周期情報と大堀(2013)の地盤モデルとを比較検討したところ,卓越周期は基盤深度と,第2ピーク周期は沖積層基底深度と一次の線形関係があることが分かった.求めた実験式より推定した地盤構造は,概ね深度80mまでは良い一致を示す.ただし,一部の地域では差が明瞭であり,深度80m以深の深い構造では一致の度合が悪い.これは,大堀(2013)の地盤モデル作成に使用されているボーリング数が不十分であるからと考えられる.また,4分の1波長則(層厚=周期×VS/4)を用いて第2ピーク周期と地盤モデルの沖積層基底深度から沖積層のS波伝播速度VSを求めると,浦戸湾北部周辺を含む狭義の高知平野東部では158m/s程度となり,これは周辺(VS=200m/s程度)よりも小さい結果であり,沖積層と洪積層(VS=300m/s程度)のコントラストが大きいことが分かる.H/Vスペクトル比の第2ピークを示す観測点が少ない狭義の高知平野西部や香長平野では,沖積層と洪積層のVSコントラストが大きくないものと推定できる.
本研究では,高知平野における強震動予測に必要となる地盤特性と地盤構造を,単点微動観測により推定できた.より精度良く各層のVS求めるには,層厚とVSの双方を同時に拘束できるアレイ観測などが求められる.また,狭義の高知平野で求めた線形関係が他の地域で利用できるかについては,地盤構造が異なるとその地域特有の新たな関係が存在する可能性があり,既に地盤構造が明らかな複数箇所で単点微動観測を行い,その関係を検討する必要がある.
本研究では「狭義の高知平野」と隣接する「香長平野」「高岡・弘岡低地」において1272点の単点微動観測を行い,そのうち1254点におけるH/Vスペクトル比を求めた.狭義の高知平野では約200m間隔で,香長平野と高岡・弘岡低地では500~1000m間隔で1点当り11分から15分以上の微動3成分観測を行った.H/Vスペクトル比の解析には,TremorDataView [先名・藤原(2008)]を使用し,スペクトル比のピーク数とピークごとの周期・振幅を読み取った.H/Vスペクトル比の卓越周期は表層地盤の厚さを,また振幅は地盤増幅率を反映した物理量であることが示されている[例えば中村(2008)].
高知平野におけるH/Vスペクトル比の卓越周期(図参照)は,浦戸湾北部周辺で長くなる傾向があり,最大で1.6秒である.その他の地域では0.1~0.8秒程度である.スペクトル比の最大値には地域的な特徴はみられず,局所的に振幅が非常に大きい地域が数か所存在する.卓越周期とスペクトル比の最大値の分布は,過去の南海地震の被害報告[都司(2012); 間城(2011); 三神・辻野(2012); 山品ら(2013)]とよく対応しており,被害が大きかった地域は微動の卓越周期が長く堆積層の厚いと考えられる地域や,スペクトル比の最大値の大きい,すなわち地盤増幅率が大きいと考えられる地域とよく対応している.中村(2008)の提唱する地盤に対する壊れやすさの指数Kg値(=最大値2/卓越周波数)の分布を見ると,過去の被害分布とよく一致しているので,高知平野に点在するKg値の高い地点は過去の被害報告がなくとも周辺よりも大きな被害を受けると予測される.また,浦戸湾周辺ではH/Vスペクトル比に2つのピークが表れるという特徴がある.狭義の高知平野西部と香長平野では,2つのピークを示す観測点は少ない.
得られたH/Vスペクトル比の卓越周期および第2ピーク周期情報と大堀(2013)の地盤モデルとを比較検討したところ,卓越周期は基盤深度と,第2ピーク周期は沖積層基底深度と一次の線形関係があることが分かった.求めた実験式より推定した地盤構造は,概ね深度80mまでは良い一致を示す.ただし,一部の地域では差が明瞭であり,深度80m以深の深い構造では一致の度合が悪い.これは,大堀(2013)の地盤モデル作成に使用されているボーリング数が不十分であるからと考えられる.また,4分の1波長則(層厚=周期×VS/4)を用いて第2ピーク周期と地盤モデルの沖積層基底深度から沖積層のS波伝播速度VSを求めると,浦戸湾北部周辺を含む狭義の高知平野東部では158m/s程度となり,これは周辺(VS=200m/s程度)よりも小さい結果であり,沖積層と洪積層(VS=300m/s程度)のコントラストが大きいことが分かる.H/Vスペクトル比の第2ピークを示す観測点が少ない狭義の高知平野西部や香長平野では,沖積層と洪積層のVSコントラストが大きくないものと推定できる.
本研究では,高知平野における強震動予測に必要となる地盤特性と地盤構造を,単点微動観測により推定できた.より精度良く各層のVS求めるには,層厚とVSの双方を同時に拘束できるアレイ観測などが求められる.また,狭義の高知平野で求めた線形関係が他の地域で利用できるかについては,地盤構造が異なるとその地域特有の新たな関係が存在する可能性があり,既に地盤構造が明らかな複数箇所で単点微動観測を行い,その関係を検討する必要がある.