日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT60_30PM1] ハイパフォーマンスコンピューティングが拓く固体地球科学の未来

2014年4月30日(水) 14:15 〜 16:00 211 (2F)

コンビーナ:*日野 亮太(東北大学災害科学国際研究所)、本蔵 義守(東京工業大学火山流体研究センター)、金田 義行(海洋研究開発機構)、有川 太郎(独立行政法人港湾空港技術研究所)、市村 強(東京大学地震研究所)、等々力 賢(東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター / 地震研究所 巨大地震津波災害予測研究センター)、堀 高峰(独立行政法人海洋研究開発機構・地震津波防災研究プロジェクト)、座長:堀 高峰(独立行政法人海洋研究開発機構・地震津波防災研究プロジェクト)、市村 強(東京大学地震研究所)

14:24 〜 14:39

[STT60-02] 「京」コンピュータの成果とポスト「京」コンピュータへの期待

*平尾 公彦1 (1.計算科学研究機構 理研)

スーパーコンピュータ「京」は2012年9月末に共用を開始し、本格稼働している。すでに科学技術のさまざまな分野で優れた成果を創出している。昨年のノーベル化学賞にみられるとおり、スパコンは現代の科学技術の発展に必須のツールであり、産業の国際競争力強化や安全安心な社会の構築にも不可欠な国家存立の基盤技術である。「京」の出現で我が国の計算科学、シミュレーション分野は一気に開花した。「京」以前には見渡すことのできなかった眺望を「京」は与えてくれている。また、次に何をなすべきか、新たなチャレンジや可能性を「京」は示唆してくれている。さらに「京」の出現によって産業界のスパコン利用が加速している。「京」はStrong Science Machineとしてあと数年は世界の最先端に位置するであろうが、この分野の進展は目覚ましく、いずれ「京」を凌駕するスパコンが現れる。国際競争を勝ち抜くためにも、「京」の後継機、ポスト「京」の開発に今から取り組まねばならない。多くの研究者や産業界から「京」の後継機、ポスト「京」を開発すべきとの要望や期待は大きい。昨年暮れに来年度の予算(案)が閣議決定され、この4月より、「京」の100倍規模のエクサスケール・スーパーコンピュータ、ポスト「京」の開発プロジェクトがスタートすることになった。2020年ころの完成を目指している。プロジェクトの概要は• 2020年までにエクサスケールのスーパーコンピュータを開発し、実際のシミュレーションでも、「京」 の100倍の性能を実現• 世界一の成果を創出できるアプリケーションをシステムと一体的に開発(Co-design)し、社会的・科学的課題の解決に貢献• 自主開発によりIT技術の波及効果が得られ、海外展開に貢献するとともに、我が国に蓄積された高度なICT技術・人材を維持・強化• ポスト「京」を設置するために必要なインフラを備え、計算科学分野の優秀な研究者等を有している理化学研究所が主体となって開発• 総事業費 約1,400億円(うち国費分 約1,100億円)演算性能で「京」よりも100倍速いコンピュータである。ポスト「京」を必要とする課題が様々な分野で存在する。もっとも重要なことは「京」からエクサスケールに至る途中にシミュレーションに大きな質的変化が現れることである。従来の「経験に追随していたシミュレーション」から「実験に先行するシミュレーション(『予測の科学』)」へとパラダイム転換が起こる。「予測の科学」(Predictive Science)へのtipping pointに到達する。大いに楽しみである。われわれ理化学研究所・計算科学研究機構は「京」を利用して成果を挙げ、国民の期待に応えるとともに、ポスト「京」コンピュータの開発にも全力を挙げて取り組む。最新の「京」の成果を分かりやすく解説するとともに、ポスト「京」コンピュータへの期待についても講演したい。