日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC52_28AM2] 火山防災の基礎と応用

2014年4月28日(月) 11:00 〜 12:45 416 (4F)

コンビーナ:*萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、藤田 英輔(防災科学技術研究所観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:服部 康男((財)電力中央研究所)、常松 佳恵(名古屋大学大学院環境学研究科)

11:15 〜 11:30

[SVC52-05] G-EVER次世代型火山災害予測システム

*宝田 晋治1Bandibas Joel1 (1.産総研地質調査総合センター)

キーワード:火山, 災害, アジア太平洋, G-EVER, シミュレーション, データベース

アジア太平洋地域大規模地震・火山噴火リスクマネジメント(G-EVER)コンソーシアムでは,2012年に発足以来,アジア太平洋地域の研究機関とともに,情報共有,国際標準化,ワーキンググループ活動等,各種の地震火山ハザード・リスク対策活動を進めている(http://g-ever.org).次世代型火山災害予測システムWGでは,近未来の火山防災システムとして,火山噴火の進行のさまざま段階で,噴火予測,被害想定,避難等に利用可能な,リアルタイム火山災害予測システムの構築を目指している.現在,火山の噴火履歴,火山噴火データベース,数値シミュレーションを統合化した,次世代型火山災害予測システムの構築を進めている.日本及びアジア太平洋地域の主な活火山において,過去にどのような経緯をたどって大規模噴火に至ったか,主要な火山噴火の噴火履歴をとりまとめることが,今後の噴火予測やイベントツリーの作成を行う上で重要な基礎データとなる.より精度の高い分布図を作成し,個別の噴出量を,統一した手法で再計算する必要がある.各火山の主要噴火の噴出量と年代を精度よく求めることができれば,より精度の高い階段ダイヤグラムを作成でき,確率的噴火予測等に利用できる.各噴出物の噴火年代,噴出量,噴火形態をとりまとめた火山噴火データベースは次世代システムの基礎データとなるため,より精度の高いデータベースの構築が必要である.また,各火山噴出物の体積の推定方法の標準化は,噴火の規模の精度を高める上で必須である.過去の主要な大規模噴火については,火砕流,火砕サージ,岩屑なだれ,溶岩流,降下テフラ,弾道物,火山泥流について各種のシミュレーションを予め実施しておき,各地域のリスク評価を行っておくべきである.高精度なシミュレーションの実行には時間がかかるため,予め代表的な場合のシミュレーション結果を求めておくと,噴火時により迅速な対応ができる.活火山の過去の噴火履歴,火山噴火データベース,各種シミュレーションを統合化し,次世代型リアルタイム火山災害予測システムを構築中である.各噴出物の分布域,噴出量等を,検索の上,タイムライン等により容易に取り出し,表示・比較検討できるシステムを予定している.また,過去の火山噴火データベースから,類似した噴火履歴を検索し,今後の噴火推移予測に利用可能なシステムを計画している.次に,シミュレーション技術により,噴火地点,噴火形態,噴出量,噴出率,風向きを変動させて,何分後にどの範囲まで火砕流や降下テフラ等の噴出物の影響が及ぶかを図示できるシステムが必要となる.そのシステムは,GISを用いて,ある噴火現象に対して,既存の主要道路や家屋,避難所等の情報と重ね合わせて演算することにより,何分後にどの地点がどの程度の被害を受けるのか,現地で状況に応じて臨機応変にリスク評価ができることが望ましい.予め活火山周辺地域において,火山噴火現象ごとにシミュレーションをくり返し,確率的火山噴火予測図を作成することも必要である.2013年6月より試験公開を開始した次世代型火山災害予測システムでは,ASTER Global DEMを用いて,ほぼ全世界中の火山のエナジーコーンモデルによるシミュレーションが可能である.また,全世界の火山毎に,スミソニアンGVP火山DB,VOGRIPA,日本の火山DB,ASTER火山衛星画像DB等の主要火山DBへのリンク機能を持ち,過去の火山噴火履歴やデータベースへアクセスできる.現在,約3200以上の世界各地の第四紀火山を一覧表示リストや分布図から選択し,個別の火山情報を取り出すと共に,様々に条件を変えてシミュレーションを実施することができる.シミュレーション結果は,Google Maps (地形図,道路地図,衛星画像)やBing Maps,国内の25000分の1地形図,シームレス地質図などと重ね合わせることが可能であり,詳細な災害評価や影響範囲の推定に用いることができる.さらにShapeファイルやGoogle Earthへの出力も可能であるため,ダウンロードの上GISによる詳細な検討や,3Dでの災害評価ができる.現在,Titan2Dによる火砕流や岩屑なだれのシミュレーションシステム及び国内の10mメッシュ標高データの実装作業を進めているところである.今後,DOWNFLOW(溶岩流),Tephra2やAsh3D(降灰)等のシミュレーションの実装を計画している.さらに,イタリアINGVと連携し,火砕流や降灰に関する確率的火山災害予測システムの構築を進める計画である.アジア太平洋地域及び日本国内で,ハザードマップの作成・改訂,国レベルの防災プラン策定,自治体の地域防災計画等に利用されることを想定している.G-EVER次世代型火山災害予測システムのURL(http://volcano.g-ever1.org/vhazard/HazardAssessment/)