日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC53_28PM1] 火山とテクトニクス

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 413 (4F)

コンビーナ:*下司 信夫(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)、西村 卓也(京都大学防災研究所)、古川 竜太(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、三浦 大助(財団法人電力中央研究所 地球工学研究所 地圏科学領域)、長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、土志田 潔(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地圏科学領域)、座長:鈴木 由希(東京大学地震研究所)

14:30 〜 14:45

[SVC53-02] 新燃岳2011年噴火最盛期における本質物の見かけ密度変化

*鈴木 由希1市原 美恵1前野 深1長井 雅史2中田 節也1 (1.東大・地震研、2.防災科研)

キーワード:新燃岳, 準プリニー式噴火, 見かけ密度, 脱ガス, 空振, 噴煙高度

新燃岳2011年噴火の最盛期は,1月26日から27日にかけての準プリニー式噴火と,その後,1月末にかけての火口での溶岩蓄積である (Nakada et al., 2013, EPS). 準プリニー式噴火は,約12時間おきに3回起きた(1/26PM,1/27AM, 1/27PM). この研究では,上記最盛期における火道でのマグマ上昇過程を, 噴出物の石基組織から明らかにする.最終的には,1)間欠的な準プリニー式噴火の発生機構の特定,2)マグマ上昇において,噴火強度や様式が決定された段階と,その際の上昇条件(e.g.速度)の特定,を目指す. 準プリニー式噴火については灰・茶色の軽石,火口溶岩については2月1日噴火の噴石を,主な分析対象とした.全て,噴火に際したマグマ混合の産物であるが,2端成分の混合比が互いに類似している.そこで上昇の出発条件,すなわち,噴出直前のマグマ溜まりにおける,バルク組成,斑晶量,温度,含水量にも相違はない(SiO2=57-58wt.%, 30vol.%, 960-980C, 4wt. % ; Suzuki et al., 2013a, JVGR).軽石と同時に噴出した石質岩片についても,全岩組成や実体鏡下での観察により,2011年のマグマ由来と判断されるものは分析対象とした. 報告する"見かけ密度"は,火道でのマグマ上昇時の気相の分離(脱ガス)程度を反映している値であり,上昇速度が遅いほど分離が促進される傾向がある.これにより,1)最盛期を通じた,上昇速度変化の概要が把握され,合わせて,2)2度目の準プリニー式噴火開始相当層準も初めて特定された. Nakada et al.(2013)とMaeno et al. (revised)に基づき,1月26日から27日にかけての堆積物を,火口南東2-3kmの分布軸付近にて採取した.以下ユニット名はNakada et al.(2013)のものである.1/27PM相当層は,そのイベントの際現地調査が行われていたため,以前から特定出来ていた(Layer5).1/26PMから1/27AMの堆積物は,軽石を主体とするLayer2からLayer4に対応する.Layer2からLayer3にかけて逆級化,Layer3からLayer4にかけて正級化する特徴がある.しかし,この連続的な粒子サイズ変化のため,2つのイベントの境界を特定出来ていなかった.なおLayer2からLayer4は,最初と次の準プリニー式噴火の間の噴火の低調期(1/26,19:00 から 1/27, 2:00)の噴出物を含まない(飛来しているとすれば,火山灰層となるであろう).サンプル採取時に,各ユニットは,lowerとupperのサブユニットに2分割した.Layer2とLayer4では,サブユニットによる粒子サイズの変化はない.Layer3では,upperがlowerに比べ粗い. 特にLayer2-4における見かけ密度変化に着目する.Layer2-lowからLayer3-lowで1.0-1.7 g/cm3,Layer3-upで1.0-2.0 g/cm3,Layer4-lowからupで0.8-1.4 g/cm3である.つまりLayer3-upにかけて最小値不変で最大値のみが増加し,Layer3-upと比べその上位では最大値・最小値の両方が減少している.平均値はLayer2-lowから順に,1.25 g/cm3,1.28 g/cm3,1.27 g/cm3,1.44 g/cm3,1.14 g/cm3,1.17 g/cm3である. 見かけ密度の高い軽石に富むことを根拠とし,Layer3-upが2度目の準プリニー式噴火の開始に対応すると提案する.先ず,見かけ密度の高い軽石が,1回目の準プリニー式噴火の期間に噴出したとは考えにくい.新堀・福井(2012)を参照すると,1回目の準プリニー式噴火の期間に噴煙高度が低下する(=噴出率が低下,火道径一定であればマグマ上昇の速度低下に等しい)ステージを認めないためである.一方,1回目の準プリニー式噴火後の噴火低調期(1/26,19:00 から 1/27, 2:00)には,噴出率低下のため,脱ガスの進んだ低発泡度のマグマが火道の頂部や縁などに存在したものと考えられる(e.g. Hammer et al., 1999, BV).この低発泡度のマグマは,2回目の準プリニー式噴火が開始した際,後続の脱ガスの進んでいないマグマを伴いながら噴出し,Layer3-upとして堆積した.Ichihara et al. (submitted )の空振と地震のデータによれば,噴火低調期(1/26,19:00 から 1/27, 2:00)には爆発はなく,準定常的な火道流システムが続いていた.そこで,この時期火道を埋めた低発泡度のマグマは,火道閉塞は起こさなかったのであろう.  Layer4の噴出時期は特定できない.しかしLayer3upからLayer4にかけての見かけ密度の低下は,2度目の準プリニー式噴火の間に噴煙高度が上昇することと(e.g. 1/27 2:00の約5km < 1/27 4:00の約7km),そして実際マグマ溜まりの収縮率も加速している(Ueda et al., 2013)ことと調和的である.しかしLayer3upからLayer4にかけて軽石サイズが減少することは,噴出率の上昇と調和的ではないので,この点を説明する必要がある.