11:45 〜 12:00
[SVC54-09] 小笠原・硫黄島の旧噴火口で2012-2013年に発生した爆発現象に伴う噴出物の岩石学的特徴
キーワード:硫黄島, 旧噴火口, 泥, 火山ガラス, 水蒸気爆発
小笠原硫黄島は東京都区部の南1250kmに位置する北東-南西方向8.5km、幅4.5kmの火山島である.硫黄島の西部に位置する旧噴火口(通称:ミリオンダラーホール)では, 2012年2月上旬以降, 泥や噴石を火口周辺に噴出する小規模な爆発現象が繰り返し発生している(気象庁, 2013). 2012年2月,2012年3月,2013年2月,2013年4月に爆発現象を伴い,火口周辺に放出された泥を採取し,その試料の粒径250μm-500μm水洗残渣粒子を, 実体顕微鏡とSEMを使用して観察した. 泥試料はいずれも灰色で, その構成物は, 遊離鉱物片(斜長石,単斜輝石,かんらん石,鉄チタン酸化鉱物), 比較的新鮮な火山ガラス片, 変質火山ガラス片, 岩片, 変質岩片, 黄鉄鉱集合体からなる(池端・田村, 2013). 泥試料中の変質岩片の比率は2012年2月の噴出物では高いが, 比較的新鮮な火山ガラス片や他の構成物の比率は各爆発間で変化がなかった. SEM像観察の結果, 比較的新鮮な火山ガラス片の表面には, 変質によって生じたと思われる小孔が確認された. またBSE像観察により,火山ガラスの最外部は水和の影響を受けていることがわかった.火山ガラスの内部へ水和が進行する速さは,主に火山ガラスの化学組成, 地下水の化学組成, 堆積時の温度などに依存するため, 硫黄島のような地熱活動が活発な場所では火山ガラスの水和の程度が粒子同士で異なることが予想される.そこで,泥試料に含まれる比較的新鮮な火山ガラス片を400℃-12時間加熱し、水和の影響を除去した後にEPMAで分析し, 化学組成を決定した.その結果, いずれの比較的新鮮な火山ガラス片もLe Bas et al.(1986)のTotal Alkali-Silica図において, 硫黄島に広く分布する粗面岩の領域にプロットされた. また, EPMAで得られた値を主成分元素および微量元素のハーカー図にプロットすると, 組成はいずれもEPMAの分析誤差の範囲で一つの領域に収まった.したがって, 全試料に含まれる比較的新鮮な火山ガラス片は, 旧噴火口の周辺に存在していた火山砕屑物に含まれる比較的均質な化学組成をもつ火山ガラス起源であることが明らかになった. 以上の結果, 今回の一連の爆発により放出された泥には新鮮なマグマに直接由来する粒子は確認されず,すべて旧噴火口周辺の既存の火山岩, 火山砕屑物やそれらの変質物が水蒸気爆発により放出されたものと考えられる.海上自衛隊硫黄島航空基地隊硫黄島気象班には試料の採取と現地の情報提供をしていただいた.防衛省,気象庁ならびに防災科学技術研究所には多方面で便宜を図っていただいた.