16:15 〜 16:30
[SVC55-P16_PG] 阿蘇火山火口近傍の重力変動と降水の重力寄与
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:阿蘇火山, 重力, 水質量移動, 降水, 地下水, 超伝導重力計
阿蘇火山の活動的火口近傍における連続重力測定から火口近傍の重力変動を調査した。火山活動の静穏な時期において火口近傍の重力変動は、雨水の降下浸透と地下約100mに位置する透水層からの地下水流出による水質量移動が占有的であることがわかった。
解析には阿蘇火山第1火口から南西に約1000m離れた地点の地下30mにある本堂観測坑道に設置された超伝導重力計CT-200の時系列データを使用した。解析期間は1998年2月から2001年1月の3年間である。この期間の阿蘇火山は非常に火山活動の静穏な時期であり、活動指標となる中岳第1火口の湯だまりは常に全面湯だまりの状態を維持していて、干上がりや火山灰噴出は観測されなかった。重力測定値から潮汐と気圧応答を除いた重力変動は、毎年梅雨後の7~8月に20~40 micro Gal上昇し、その後緩やかに減少する季節変化が占有していた。また秋の多雨の後に10 micro Gal程度の重力上昇を示すなど月々の降水に応じた複雑な変化も持ち合わせていた。
降水が重力変動に影響することは知られているが、阿蘇火山火口近傍でその詳細を調べた例はない。そこで本研究では、貯留関数型の物理モデルであるタンクモデルを用いて、地下への雨水の降下浸透と地下透水層による地下水流出を計算した。モデルへの入力は、気象庁阿蘇山測候所の降水量を使用した。ただしソーンスウエイト法を用いて簡易的に得た蒸発量の長期間月別平均を考慮して土壌浸透量を減らしている。タンクモデルの流入・流出差から地下の水体積変化を得て、超伝導重力計を中心とした南北1400m、東西1400m, 地下200mまでの地下領域の水体積変化に対応する密度変化から水質量移動の重力寄与を求めた。解析期間中は火山活動による重力変化はないと仮定して、重力寄与が出来るかぎり測定された重力変動と一致するように透水層の深度とタンクのパラメータである流出抵抗を経験的に決めた。
プレリミナリーな結果であるが、モデル計算から得られた水質量移動による重力寄与は、地下100mまで雨水が鉛直方向に降下浸透し、100~110mに位置する地下水層から水平方向に流出する条件の場合に、測定された重力変動と良く一致した。この場合のモデル計算値と重力変動値は相関係数0.9の高い相関を示した。またモデル計算値と重力変動値のRMSは、各々10.5 micro Gal, 11.4 micro Gal、そして両者の差分のRMSは4.8 microGalであった。モデル計算値はやや過剰評価となった。この差異は、モデル計算が線形であるのに対し、実際の降水の土壌浸透や地下水流動は非線形であることが大きいと考えられる。しかし重力変動の特徴は十分に再現しており、差分のRMSの3 sigmaまで考慮して14.4 micro Galの精度で重力変動値を説明できる。従って火山活動による重力変化がない場合は、地表から地下110mの間の比較的表層の水質量移動が、火口近傍における重力変動の主成分であると推測される。
計算モデルの入力は実質的に降水量だけなので任意の期間の水質量移動を計算することができる。今回の計算では地下30mにおける重力寄与を求めたが、これを地表に換算することで、長期間実施されている繰り返し重力測定で得られた火口近傍の重力測定値に対する降水影響の補正に用いることができる。また、重力寄与を求めた領域の東端は中岳第1~4火口の西縁であるので、透水層の東端から流失する水の一部は湯だまりへの地下水流入と考えることができる。降水のピークは梅雨期6~7月の約1ヶ月間であるが、地下水流動は梅雨の後、その年に応じて数ヶ月間続く緩やかなピークを形成していた。これは湯だまり水位の季節変動と一致する。湯だまりへの地下水流入可能量の時間変動を見積ることが可能になるかもしれない。
解析には阿蘇火山第1火口から南西に約1000m離れた地点の地下30mにある本堂観測坑道に設置された超伝導重力計CT-200の時系列データを使用した。解析期間は1998年2月から2001年1月の3年間である。この期間の阿蘇火山は非常に火山活動の静穏な時期であり、活動指標となる中岳第1火口の湯だまりは常に全面湯だまりの状態を維持していて、干上がりや火山灰噴出は観測されなかった。重力測定値から潮汐と気圧応答を除いた重力変動は、毎年梅雨後の7~8月に20~40 micro Gal上昇し、その後緩やかに減少する季節変化が占有していた。また秋の多雨の後に10 micro Gal程度の重力上昇を示すなど月々の降水に応じた複雑な変化も持ち合わせていた。
降水が重力変動に影響することは知られているが、阿蘇火山火口近傍でその詳細を調べた例はない。そこで本研究では、貯留関数型の物理モデルであるタンクモデルを用いて、地下への雨水の降下浸透と地下透水層による地下水流出を計算した。モデルへの入力は、気象庁阿蘇山測候所の降水量を使用した。ただしソーンスウエイト法を用いて簡易的に得た蒸発量の長期間月別平均を考慮して土壌浸透量を減らしている。タンクモデルの流入・流出差から地下の水体積変化を得て、超伝導重力計を中心とした南北1400m、東西1400m, 地下200mまでの地下領域の水体積変化に対応する密度変化から水質量移動の重力寄与を求めた。解析期間中は火山活動による重力変化はないと仮定して、重力寄与が出来るかぎり測定された重力変動と一致するように透水層の深度とタンクのパラメータである流出抵抗を経験的に決めた。
プレリミナリーな結果であるが、モデル計算から得られた水質量移動による重力寄与は、地下100mまで雨水が鉛直方向に降下浸透し、100~110mに位置する地下水層から水平方向に流出する条件の場合に、測定された重力変動と良く一致した。この場合のモデル計算値と重力変動値は相関係数0.9の高い相関を示した。またモデル計算値と重力変動値のRMSは、各々10.5 micro Gal, 11.4 micro Gal、そして両者の差分のRMSは4.8 microGalであった。モデル計算値はやや過剰評価となった。この差異は、モデル計算が線形であるのに対し、実際の降水の土壌浸透や地下水流動は非線形であることが大きいと考えられる。しかし重力変動の特徴は十分に再現しており、差分のRMSの3 sigmaまで考慮して14.4 micro Galの精度で重力変動値を説明できる。従って火山活動による重力変化がない場合は、地表から地下110mの間の比較的表層の水質量移動が、火口近傍における重力変動の主成分であると推測される。
計算モデルの入力は実質的に降水量だけなので任意の期間の水質量移動を計算することができる。今回の計算では地下30mにおける重力寄与を求めたが、これを地表に換算することで、長期間実施されている繰り返し重力測定で得られた火口近傍の重力測定値に対する降水影響の補正に用いることができる。また、重力寄与を求めた領域の東端は中岳第1~4火口の西縁であるので、透水層の東端から流失する水の一部は湯だまりへの地下水流入と考えることができる。降水のピークは梅雨期6~7月の約1ヶ月間であるが、地下水流動は梅雨の後、その年に応じて数ヶ月間続く緩やかなピークを形成していた。これは湯だまり水位の季節変動と一致する。湯だまりへの地下水流入可能量の時間変動を見積ることが可能になるかもしれない。