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[U04-06] 航空機観測を用いた台風中心付近を対象とした非静力大気海洋結合モデルの結果の評価
キーワード:航空機観測, 台風, 雲解像モデル, 大気海洋結合モデル, モデル検証
航空機観測は台風の内部領域(眼や壁雲)の力学的、熱力学的、雲物理的な構造を理解するために有効な手段である。数値シミュレーションも台風の構造を明らかにするためには有効な手段であるが、台風の内部領域の再現性を評価することは大変難しい。本研究では、非静力大気海洋結合モデルCReSS-NHOESを用いて台風の再現実験を行い、その中心付近の構造について航空機観測の結果を用いて再現性を評価した研究の結果を紹介する。対象とするのは2010年10月に熱帯西部太平洋で発達したの第13号台風(T1013, Megi)である。アメリカ合衆国と台湾の強化観測 Impact of Typhoons on the Ocean in the Pacific (ITOP) 期間中、200のドロップゾンデがおよそ高度2.5 kmからT1013の内部領域や周辺に投下された。ドロップゾンデは、落下しながら気圧(高度)、気温、湿度、風向、風速の鉛直プロファイルを観測することができる測器である。これらの鉛直プロファイルを用いて数値実験の結果の評価を行う。数値実験は緯度経度座標系で水平解像度0.02度(およそ2 kmに相当)、T1013が発生してから1日後の10月14日00時(世界時)から7日間にわたって実施した。数値実験では、台風の進路、中心気圧の変化傾向や最低値などを再現することができた。ドロップゾンデ観測と数値実験の結果を直接比較するために、中心気圧の値や変化傾向を考慮してドロップゾンデ観測が行われた時刻に相当する数値実験の時刻を決定した。ドロップゾンデ観測が実施された時刻における台風の中心位置は、気象庁より提供されるベストトラックデータを線形内挿することで得た。数値実験における対象時刻の中心位置は1時間毎の出力結果にBraunの手法を適用して得た。観測における台風中心に相対的なドロップゾンデ観測の位置を、そのまま数値実験における台風中心に相対的な観測プロファイルを適用した。本研究では壁雲域を高度2 km以下の全ての層で相対湿度が95%以上、かついずれかの層で風速が25 m s-1以上となる格子を含む領域とした。壁雲域の内側を眼の領域、外側を壁雲外域とした。数値実験による壁雲外域の温位、水蒸気混合比、風速の平均値は、ドロップゾンデ観測の平均値からの1σ(標準偏差)の範囲内に収まっており、統計的には再現されたこれらのパラメータの再現性は良いと考えられる。台風T1013が急発達した後、数値実験では眼の領域で弱風域、壁雲の領域で最大風速域が見られた。これらの点から、定性的には台風の特徴を数値実験で再現できたと考えられる。しかしながら、数値実験では観測結果に比べて、壁雲域での温位がおよそ3 K高く、風速はおよそ25 m s-1小さくなっていた。これらの定量的な相違は眼の構造の違いに起因するものであると推定できる。眼の構造についての問題点は航空機観測との比較により初めて明らかにすることができたものである。