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[U04-10] 陸域生態系研究についての航空機観測の展開
キーワード:森林生態系, LiDAR, 生態系機能, 生物多様性
航空機は、衛星のように同一地域を何年にもわたり繰り返して観測することは一般的ではなく、また、広域を観測することもできない。しかし、陸域生態系を対象とした場合、航空機観測は衛星観測には無い多くの利点を持っている。一つは、当然であるが、航空機は衛星よりも低高度を飛行することから、画像の水平解像度をずっと高くできることである。一般に入手できるWorldView-2やGeoEye-1といった衛星の高解像度画像であっても、森林のような樹木の集団の中の個々の木を判読することは実際にはかなり難しい。しかし、航空機からであれば、一本一本の樹冠の構造や、林床の状態を判読することがきる。2000年に東シベリアのヤクーツク付近で春から夏にかけて行われた航空機観測では、100~150m上空から森林をビデオ撮影し、樹冠の緑葉の有無、林床の積雪の有無を判読することによって、同時に測定した分光反射率が樹冠や林床によってどのように影響を受けるかを明らかにした。その結果、疎な亜寒帯林では、衛星観測から導出されたNDVIなどの植生指数には林床の影響が大きいことが分かった。さらに低空の数10mを飛行した場合、樹木の個葉や昆虫まで見分けられるようになり、生物の個体ベースにまで踏み込んだ生物多様性の研究も可能になるだろう。最近では、可視から近赤外域の波長帯に100以上のバンドを持つハイパースペクトル・カメラやLiDARを航空機に搭載する例もある。植物種の同定や、葉の化学的形質や植生構造の推定が可能となり、植生の生態学的機能や生物多様性を把握する際の強力な手法として、今後も発展していくだろう。航空機観測のもう一つの利点として、地表面に対するセンサーの観測角と太陽光の入射角をある程度自由に選ぶことが可能であることが挙げられる。双方向性反射率分布関数(BRDF)を元にした植生の綿密な光伝達モデルを設計することができるようになり、衛星データによる葉面積指数などの推定の高精度化に寄与できる。