日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

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[U-05_30PM2] 生命-水-鉱物-大気相互作用

2014年4月30日(水) 16:15 〜 17:45 419 (4F)

コンビーナ:*大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、白石 史人(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、高井 研(海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター)、上野 雄一郎(東京工業大学大学院地球惑星科学専攻)、長沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科)、掛川 武(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、横山 正(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、中村 謙太郎(独立行政法人海洋研究開発機構 (JAMSTEC) システム地球ラボ プレカンブリアンエコシステムラボユニット)、座長:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、長沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科)

16:15 〜 16:45

[U05-17] 石炭層と珪藻岩層における地下微生物によるメタン生成研究と応用展望

*清水 了1 (1.NOASTEC財団 幌延地圏環境研究所)

キーワード:天然ガス, 石炭, 珪藻岩, 地下微生物, メタン生成, ジオバイオリアクター

1.はじめに 様々な地下環境において微生物によるメタン生成が行われている。例えば、本講演の中心的話題の一つである石炭層においては世界各地で微生物起源のメタンが検出されており、既出の総説で紹介されている1)。しかし、それら地下環境におけるメタン生成プロセスについては殆どわかっていない。これらを明らかにすることは、人類が地球規模の炭素循環メカニズムを理解しメタンをエネルギー資源としてより有効に活用するために必要である。本講演では、日本のほぼ北端に位置する幌延地域において著者らが行っている石炭層や珪藻岩層のメタン生成プロセスの解明を目指した研究とその応用方法の検討について概説する。2.石炭層と珪藻岩層のメタン生成微生物(1)石炭層の地下微生物 著者らが行った研究のうち主に石狩炭田(瀝青炭)2)および天北炭田(褐炭)について概説する。調査の結果、石狩炭田夕張地域の亜瀝青炭層(深度843-907m)から得られた地層水にはメタン生成に関わる微生物の遺伝子が高比率で検出された。遺伝子解析および培養法によって水素と二酸化炭素、酢酸、メタノールなどのメチル化合物からメタンを作る微生物が存在することが明らかになっている。一方、天北炭田からは水素と二酸化炭素、酢酸およびエタノールからメタンを生成する微生物群の培養に成功している。(2)珪藻岩層の地下微生物 幌延地域の珪藻岩層の地層水には微生物起源のメタンが溶存限界まで含まれている。この地域の珪藻岩層(地下約300m-600m)の地層水について、どのような微生物が生息しているのか調査を行った結果、メタン菌が非常に高い割合で存在することが明らかになっている3)。その内訳は、CO2基質型のメタン菌が卓越していた。著者らは、遺伝子解析により明らかになった優占種のメタン菌の単離4, 5)にも成功している。これらの幌延の優占種であるメタン菌の生化学的な機能を詳細に研究することにより、地下のメタン生成プロセスの一端を明らかにすることができると考えられる。3.地下でメタンを生成するときのボトルネック解消と石炭層と珪藻岩層のメタン生成ポテンシャル 地下でメタンを生成してエネルギー資源として回収すること(以下、メタン生成ジオバイオリアクターとする)は、石炭層を例にとると、炭鉱建設をせずに地下から直接ガスを採取できる点で経済性に優れる。しかし、メタン生成プロセスを加速させエネルギー資源として回収するためには、根源物質からメタン生成微生物が利用可能な物質までの分解プロセスが速度論的にボトルネックとなる。この反応プロセスはいくつかの仮説が提唱されているが、実験的に証明されていない。 我々は、このボトルネック解消に対し、いくつかのアプローチを行っているが、最も有望視しているのが過酸化水素を利用した方法である。過酸化水素と低ランクの石炭を反応させると短時間で石炭質量の数10%(最大で約80%)がメタン生成微生物群の利用可能な有機物に変換される6)。我々はこの既存技術を応用したメタン生成ジオバイオリアクターの検討を進めており、この反応溶液に対してメタン生成微生物群集の添加によるメタン生成に成功している。同様の結果は珪藻岩でも生じるが、有機物含有量が少ないため岩石重量あたりの生成される有機物量は石炭に比べて少ない。しかし、石炭層の層厚数mに比べて珪藻岩の最大層厚1km以上を考慮すると、資源としての密度は低いが絶対量としては無視できないポテンシャルを有していると考えられる。References)1) Strapoc et al. (2011) Annu. Rev. Earth Planet Sci. 39, 617-656.2) Shimizu et al. (2007) Geobiology 5, 423-433.3) Shimizu et al. (2006) Geobiology 4, 203-213.4) Shimizu et al. (2011) Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 61, 2503?2507.5) Shimizu et al. (2013) Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 63, 4320?4323.6) Miura et al. (1996) Energy & Fuels 10, 1196-1201