日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-07_1AM2] Future Earth - 持続可能な地球へ向けた統合的研究

2014年5月1日(木) 11:00 〜 12:40 501 (5F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、中島 映至(東京大学大気海洋研究所)、安成 哲三(総合地球環境学研究所)、植松 光夫(東京大学大気海洋研究所)、座長:山形 俊男(海洋研究開発機構 アプリケーションラボ)

11:50 〜 12:15

[U07-07] Future Earthの議論のプラットフォームとしてのDigital Earth

*福井 弘道1 (1.中部大学中部高等学術研究所国際GISセンター)

キーワード:デジタルアース, 地理情報システム, 市民科学, データジャーナリズム, 持続可能な開発のための教育(ESD), Future Earth

情報化社会の本質は、サイバースペースにおける意志決定が、リアルワールドに先導的な役割を果たすことにある。 従って実物世界のメタファーとして、いかに情報が欠落することなくサイバースペースを構築して利用するかは重要な課題である。サイバースペースを、デジタル化された地理空間情報に基づいて構築することによって、実空間から仮想空間への正確な写像が可能になり、様々な自然現象や社会経済活動などを仮想空間上に可視化できる。また同時に、この仮想空間を共有している人間とコミュニケーションを行い、相互理解・協調作業の場を提供できることになる。地理空間情報を多解像度や多次元で高度に活用することによって、再構築されるサイバースペースのことを、「デジタルアース」と呼んでいる。デジタルアースは、地球上の様々な問題複合体の全体像に漸近することを可能とするツールである。本発表ではデジタルアースを、多様なステークフォルダーが参加して進められるFuture Earth計画のプラットフォームとして開発・利用することを提案したい。インターネットを利用して誰もが地球上の任意の場所を宇宙から眺め、地表の様々な情報を探索することを可能にする技術が三次元デジタルアース・ジオブラウザである。これをプラットフォームに、モデル解析やシミュレーションを行い、その結果を可視化して議論を行い、また専門家の利用だけでなく市民が参加して市民科学者としてコミュニティマッピングを行い、意思決定支援ツールとして利用するなど、多様な展開が試みられている。社会を構成している様々な人が多様なセンサによる観測データ、統計、SNSなどのテキストデータ、ビッグデータを提供し合い、位置情報利用の利用が促進されるメカニズムが動き出し、社会の基盤的な道具としてGISやデジタルアースの利用が始まっている。 科学は本来、単一の真理を探究するものであるが、現実はその発展段階にあるので、異なる見解に至る科学的知識やその実証データが存在しているのが実態である。従って、現に存在する認識の相違が、いったい何に起因するのか、問題複合体の全体像を学術を統合して多次元の視点からエビデンスベースに確認する過程は重要である。さらに今日のように時代(社会・地球)が大きく変化している時に、人類社会の将来に向けた行動を決定するためには、多数決や代議制によるデモクラシーではなく、公開された科学的根拠や実証データ・情報の下で意見が変化することも前提にした「熟議(デリバレーション)によるデモクラシー(討議型民主主義)」が求められている。本稿ではデジタルアースを基に、社会と科学の双方向のコミュニケーションを活性化し、エビデンスベースドデリバレーション研究を推進することを検討する。具体的にデジタルアースは、統計や地図、衛星画像、環境モニタリングデータなどから構成される空間情報基盤を双方向サービスするクラウド、SNSやニュースなどをクロールし集積、事象データ(イベント)を双方向サービスするクラウド、それらから提供される多様な情報をその精度や不確実性など品質に応じて可視化して表示する「多次元情報表示装置」を備えたインタラクティブなゲーミングシュミレーションルームなどで構成される。これを活用する、環境コミュニケーション・リスクコミュニケーション、防災・危機管理演習、地球環境変動とFuture Earthの検討など多様な研究者のユースケースを公募し、それらの利用結果に基づく知見を蓄積、解析することで、システム・制度の標準化を行い社会に還元する共同研究の推進を提案したい。デジタルアースは、1)マルチユーザーが想定できる(広い情報アクセス・情報提供/投稿の機会の提供と多様な表現と可視化が可能)、2)マルチスケールである(汎地球な課題からローカルな課題まで、過去からリアルタイムそして将来まで、シームレスに移動が可能)、3)マルチテーマである(データ統合が可能で、現実社会の仮想空間での再現が可能である)、といった特色を有する。デジタルアースは、自然科学、社会・人文科学等の多数の研究領域を統合するだけでなく、専門家と市民、市民間の相互作用を促す、科学コミュニケーション・プラットフォームとして認識されている。その利用に伴い、知的財産権やプライバシーなどの倫理的な課題といった、新しく挑戦的な課題も表面化してきた。さらに、デジタル・ネイティブとなる次世代の教育のための、デジタルアース教育課程も議論されなくてはならない。また、具体的なデジタルアースの整備構築と利用の推進にあたり、産官学が共同参加するテストベットの構築も求められる。