日本地球惑星科学連合2014年大会

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[U-08_2AM2] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2014年5月2日(金) 11:00 〜 12:45 メインホール (1F)

コンビーナ:*松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、石原 正仁(京都大学学際融合教育研究推進センター極端気象適応社会教育ユニット)、小荒井 衛(国土地理院地理地殻活動研究センター地理情報解析研究室)、座長:石原 正仁(京都大学学際融合教育研究推進センター極端気象適応社会教育ユニット)

12:15 〜 12:30

[U08-13] 土壌からの放射性セシウム除染を目的としたゼオライト-マグネタイト複合材料の開発

*青野 宏通1 (1.愛媛大学)

キーワード:放射性Cs除染, Na-P1型ゼオライト, マグネタイト, 複合材料

1. 緒言 福島第一原子力発電所の事故により排出された放射性Csによる土壌の汚染が深刻な問題となっている。この除染方法としてゼオライトを用いる方法が検討されており、我々は石炭火力発電所から排出される石炭灰を原料としてアルカリ処理により合成したNa-P1 型人工ゼオライト(Na6Al6Si10O32?12H2O)が安価かつ高い陽イオン交換容量(CEC)をもつことに注目し検討を進めてきている。除染方法として、溶液中の放射性Csは比較的容易に回収でき、例えば汚染された水をゼオライト充填したカラムに通すことにより除染することが可能である。しかし、土壌の除染については、ゼオライトを水田などに散布してCs吸着させてもそれを回収する方法がない。 一方、マグネタイト(Fe3O4)のナノ微粒子も鉄の塩化物のアルカリ処理により合成することができ、この合成法はNa-P1ゼオライトと酷似している。そこで、同じ容器内に原料を入れ同時にアルカリ処理することによりゼオライト-マグネタイト複合材料(以下、磁化ゼオライトとする)が合成できることを見いだした。これにより水田などに散布し、Cs吸着後の磁場回収が可能となる。 本研究では、磁化Na-P1型ゼオライトの合成方法、その複合材料の材料組織と陽イオン交換容量について検討を行った。さらに、福島県で土壌(川俣町1,000~2,000Bq/kg、飯館村10,000Bq/kg以上、南相馬市1,000~2,000Bq/kg)から放射性Csを取り除く実証試験を実施した結果について述べる。2. 実験 実験室でのゼオライト及び磁化ゼオライト作製は、四国電力JIS-II種の石炭焼却灰を原料として主に100℃で加熱還流を24h行った。福島での土壌除染に用いる磁化ゼオライト作製は、中部電力の石炭焼却灰を原料として、永井機械鋳造製造会社に委託して大量合成を行なった。この場合、先にマグネタイトナノ微粒子を100℃で作製し、ゼオライトの原料である石炭焼却灰と混合した後、これをアルカリ処理(密閉して140℃で3h加熱)することにより作製した。本試験では、マグネタイトを16wt%含むように合成した磁化ゼオライトを用いた。磁選については、土壌と水(シュウ酸アンモニウムや塩化カリウムを含む溶出助剤)を1:1の割合で10分間ミキシングした後、直ちにネオジム磁石(8000ガウス)を用いた磁選機にかけて磁化ゼオライトと土壌の分離を行った。初回のみ磁化Na-P1型ゼオライトと溶出助剤を添加し、ミキシング及び磁選操作を行ない、分離された土壌を再度磁選し2段目の操作、再々度3段目の操作を行なった。3. 結果 3-1. Na-P1型人工ゼオライトによる農作物への放射性セシウム移行制御 ゼオライトを水田に散布することにより、農作物への放射性セシウム汚染がどれだけ抑制されるかを調べるため、福島の2,000Bq/kgの土壌にNa-P1型ゼオライトを含む紙シート(リンテック株式会社製造)を敷き、田植えを行なったところ、玄米中への移行がかなり抑制されることがわかった。 3-2. 磁化Na-P1型ゼオライトの作製とその性能  ゼオライト粒子のサイズは数μm程度であり、その粒内にマグネタイトのナノ微粒子が点在していること観察できた。また、ゼオライトの粒界に凝集したマグネタイトが存在していることがわかる。これにより、ゼオライトとマグネタイトナノ微粒子との一体型複合材料が得られ、土壌との混合によっても磁選回収が可能であることを示している。 3-3. 磁化Na-P1型ゼオライトによる汚染土壌からの放射性セシウム除去効果 福島の土壌には多くのバーミキュライトなどの粘土成分を含んでおり、これが強く放射性セシウムを固定していているため除染を困難にさせている。これに溶出助剤として、K+やNH4+イオンを含む溶液を加えることによりイオン置換が起こり、放射性セシウムが遊離する。混合した磁化ゼオライト粉末は、陽イオン交換容量が大きく、土壌近傍に混合されているためかなりの割合で移行する。最後に、磁選操作により磁化ゼオライトを回収することにより除染を行なう。 飯館村の汚染土壌に10%の磁化Na-P1型ゼオライトを添加し、様々な溶出助剤を用いて除染を行なった。初回に磁化Na-P1型ゼオライトと溶出助剤を添加し、ミキシング及び磁選操作を行ない、分離された土壌を再度磁選し2段目の操作、再々度3段目の操作を行なった。3回の磁選操作により平均80%の放射性セシウムが除染された。各種土壌を用いて磁選操作を行なった結果、磁化Na-P1型ゼオライトの混合量は土壌に対して5%または10%とし、溶出助剤は4%シュウ酸アンモニウム+0.1%KClに統一した。放射能の減衰率が大きいのは川俣、飯館、南相馬の順であった。これは層内にCs+を取り込み易いバーミキュライトの含有率が多い程除染が困難であるということを示している。