日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM26] 宇宙プラズマ理論・シミュレーション

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 302 (3F)

コンビーナ:*梅田 隆行(名古屋大学 太陽地球環境研究所)、天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、成行 泰裕(富山大学人間発達科学部)、杉山 徹(独立行政法人海洋研究開発機構 地球情報基盤センター)、中村 匡(福井県立大学)、座長:天野 孝伸(東京大学 地球惑星科学専攻)、簑島 敬(海洋研究開発機構 数理科学・先端技術研究分野)

10:00 〜 10:15

[PEM26-05] 動的ぺチェック過程による磁気リコネクションの新たな高速化機構

*柴山 拓也1草野 完也1三好 隆博2中坊 孝司1Grigory Vekstein3 (1.名古屋大学 太陽地球環境研究所、2.広島大学、3.University of Mancheter)

キーワード:磁気リコネクション, 太陽フレア

磁気リコネクションは磁力線のつなぎかえにより磁気エネルギーを運動エネルギーや熱エネルギーに変換する過程であり、太陽フレアや磁気圏サブストーム、トーラスプラズマの緩和現象の原因と考えられている。しかし、フレアが起こる太陽コロナ中は電気抵抗が非常に小さく、Sweet-Parker 理論によると効率的にリコネクションを起こすのは難しい。Petschek 理論では非常に小さい磁気拡散領域を仮定することで太陽コロナのパラメータでも効率的にリコネクションを起こすことができるとされたが、これまでの数値計算によると Petschek リコネクションは一様抵抗では安定に存在せず、これを実現するには異常抵抗モデルなどで磁気拡散領域を局所的に維持するためのメカニズムが必要であることが示唆されている。このため、Petschek リコネクションが自発的に発生し得るかという問題は未だに解決していない。

我々は今までよりも大きなシステムサイズで精密な数値計算を行うことで、一様抵抗モデルであっても非線形発展段階でPetschek 理論で予想されるスローショック構造が自発的に形成することを発見した。この過程では非線形発展により形成した大きなプラズモイドが電流シート内を速い速度で運動することが重要な役割を担っており、スローショック構造は運動するプラズモイドの前面に形成される。ただし、Petschek理論とは異なりスローショックはXポイントから1方向にのみ現れる(図1)。プラズモイドは電流シートからの排出と新たなプラズモイドの形成を繰り返すため、この過程は非定常的に繰り返し起こり磁気リコネクションを進行させる。これによりリコネクションの高速化が起こり、太陽フレアを説明するのに必要とされる 0.01 程度のリコネクション率が高Lundquist数領域で得られることを明らかにした。(図2)
我々はこの高速リコネクションレジームを「動的ペチェックリコネクション (Dynamical Petschek Reconnection)」と名付けた。このレジームではリコネクションを高速化させるためにミクロスケールの物理過程や異常抵抗モデルなどは必要なく、一様抵抗のみでリコネクションの高速化が実現する。プラズモイドの運動が周囲のプラズマの流れに影響を与えることで電流を局在化させる働きをする。これによりPetschek理論で予想されるスローショックが自発的に形成し、効率的にエネルギー変換を行うことができる。