17:27 〜 17:30
[SSS25-P07] 地盤の経験的伝達関数に基づく線形時と非線形時の計測震度の関係式
ポスター講演3分口頭発表枠
1923年関東地震や南海トラフ沿いの巨大地震などの歴史地震の震度分布に合う広帯域震源モデルの推定や強震動予測では、地盤の非線形性を考慮して震度を推定する必要がある。しかし、経験的地盤増幅率を用いた統計的グリーン関数法や、経験的グリーン関数法での計算波は、地盤が線形時のものである。また、地盤の非線形性を考慮した解析手法を用いる場合には、地盤モデルと動的変形特性等を設定する必要があるが、強震観測点でもS波検層やボーリング調査がなされているとは限らず、動的変形特性試験はほとんどされない。さらに、動的変形特性の設定方法は様々であり、地盤応答解析手法の違いでも結果は異なる。そこで、本研究では、多数のKiK-net記録に基づき、地盤が線形時と非線形時の経験的伝達関数を求め、線形時と非線形時の計測震度の関係式を作成した。
はじめに、以下のようにして、地盤の線形解析と等価線形解析で用いる理論伝達関数の代わりに、経験的伝達関数を用いて、地盤の非線形性の影響を受けている地表の観測波から、地盤が線形時の波形を推定する。用いたデータは、全国のKiK-net観測点の強震動と、その観測点での弱震動である。強震動は、68地震のPGAが300 cm/s2 以上の記録、弱震動は520 地震のPGAが20~100cm/s2の記録を選択した。この124観測点における記録から、さらに、観測波形に、ロッキング振動や浮き上がり振動の影響のあるデータを除いた。最も影響が大きかった記録は、東北地方太平洋沖地震で震度7相当となったKiK-net芳賀(TCGH16)であった。水平成分の経験的伝達関数は、強震動の地中の上下成分に対する地表の水平成分のスペクトル比に対する、弱震動の地中の上下成分に対する地表の水平成分のスペクトル比の比で定義した。上下成分の経験的伝達関数は、地表の水平成分の代わりに、地表の上下成分を用いることにより、同様に定義した。そして、複素フーリエスペクトルである経験的伝達関数を強震記録の地表のスペクトルに乗じ、フーリエ逆変換して、線形時の地表での波形を推定した。地中の上下成分には、地盤の非線形性の影響がほとんどないと考えられるため、地表の記録から非線形地盤応答で地中の上下成分のスペクトルを推定し、これに線形地盤応答を考慮して地表でのスペクトルを算出することに相当する。この手法では、地盤の非線形性を考慮した解析手法で必要となる地下構造モデルや動的変形特性の設定が必要ない。
そして、地盤が線形時の計算波形から算出した計測震度ILINと等価卓越周波数(fe)をパラメータとした地盤が非線形時の計測震度INONの経験式を、ILIN≧INONの条件付き最小二乗法により作成した。得られた式は、
INON-ILIN =6.155-1.669 ILIN + 0.110 ILIN2 -0.688log10fe
である。ここで、feは、計算波の最大加速度PGALINと最大速度PGVLINからfe= PGALIN /(2πPGVLIN)で定義した。feの代わりにVs30を用いた検討も行ったが、feの方がデータの再現性が良かった。これは、feには、サイト特性のみではなく、震源特性と伝播特性の影響も含まれているためと考えられる。図には、INONとILINの関係と、得られた経験式を示す。最大の観測計測震度INONは、2000年鳥取県西部地震のKiK-net日野(TTRH02)での6.6である。ILINの範囲は4.5~7.0であり、用いた経験的伝達関数は192個である。得られた経験式は、震度5強以上で、INONとILINに差が生じはじめる。ひずみが10-3程度以上に大きくなると動的変形特性の変化率が小さくなることを考慮するため、ILIN2項を導入して、差にはゆるやかな頭打ちを持たせている。feが大きいほどILINとINONの差が大きくなる特徴があるが、これは、高周波数ほど、地盤の非線形性の影響により地盤増幅率が低下するためと考えられる。作成した経験式では、ILINが7.0の場合、fe =5HzではINONは約6.4、fe=2HzではINONは約6.7となる。
謝辞:本研究は、科学研究費補助金基盤研究(A) 26242034及び(A) 23241054による成果である。本研究では、防災科学技術研究所のKiK-net強震記録、PS検層結果、気象庁の震源情報を用いました。
はじめに、以下のようにして、地盤の線形解析と等価線形解析で用いる理論伝達関数の代わりに、経験的伝達関数を用いて、地盤の非線形性の影響を受けている地表の観測波から、地盤が線形時の波形を推定する。用いたデータは、全国のKiK-net観測点の強震動と、その観測点での弱震動である。強震動は、68地震のPGAが300 cm/s2 以上の記録、弱震動は520 地震のPGAが20~100cm/s2の記録を選択した。この124観測点における記録から、さらに、観測波形に、ロッキング振動や浮き上がり振動の影響のあるデータを除いた。最も影響が大きかった記録は、東北地方太平洋沖地震で震度7相当となったKiK-net芳賀(TCGH16)であった。水平成分の経験的伝達関数は、強震動の地中の上下成分に対する地表の水平成分のスペクトル比に対する、弱震動の地中の上下成分に対する地表の水平成分のスペクトル比の比で定義した。上下成分の経験的伝達関数は、地表の水平成分の代わりに、地表の上下成分を用いることにより、同様に定義した。そして、複素フーリエスペクトルである経験的伝達関数を強震記録の地表のスペクトルに乗じ、フーリエ逆変換して、線形時の地表での波形を推定した。地中の上下成分には、地盤の非線形性の影響がほとんどないと考えられるため、地表の記録から非線形地盤応答で地中の上下成分のスペクトルを推定し、これに線形地盤応答を考慮して地表でのスペクトルを算出することに相当する。この手法では、地盤の非線形性を考慮した解析手法で必要となる地下構造モデルや動的変形特性の設定が必要ない。
そして、地盤が線形時の計算波形から算出した計測震度ILINと等価卓越周波数(fe)をパラメータとした地盤が非線形時の計測震度INONの経験式を、ILIN≧INONの条件付き最小二乗法により作成した。得られた式は、
INON-ILIN =6.155-1.669 ILIN + 0.110 ILIN2 -0.688log10fe
である。ここで、feは、計算波の最大加速度PGALINと最大速度PGVLINからfe= PGALIN /(2πPGVLIN)で定義した。feの代わりにVs30を用いた検討も行ったが、feの方がデータの再現性が良かった。これは、feには、サイト特性のみではなく、震源特性と伝播特性の影響も含まれているためと考えられる。図には、INONとILINの関係と、得られた経験式を示す。最大の観測計測震度INONは、2000年鳥取県西部地震のKiK-net日野(TTRH02)での6.6である。ILINの範囲は4.5~7.0であり、用いた経験的伝達関数は192個である。得られた経験式は、震度5強以上で、INONとILINに差が生じはじめる。ひずみが10-3程度以上に大きくなると動的変形特性の変化率が小さくなることを考慮するため、ILIN2項を導入して、差にはゆるやかな頭打ちを持たせている。feが大きいほどILINとINONの差が大きくなる特徴があるが、これは、高周波数ほど、地盤の非線形性の影響により地盤増幅率が低下するためと考えられる。作成した経験式では、ILINが7.0の場合、fe =5HzではINONは約6.4、fe=2HzではINONは約6.7となる。
謝辞:本研究は、科学研究費補助金基盤研究(A) 26242034及び(A) 23241054による成果である。本研究では、防災科学技術研究所のKiK-net強震記録、PS検層結果、気象庁の震源情報を用いました。