日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC28] 雪氷学

2015年5月25日(月) 11:00 〜 12:45 201B (2F)

コンビーナ:*鈴木 啓助(信州大学理学部)、兒玉 裕二(国立極地研究所)、座長:鈴木 啓助(信州大学理学部)

11:00 〜 11:15

[ACC28-08] 富士山東斜面の雪代現象の特徴と雪崩発生の素因

*小森 次郎1 (1.帝京平成大学)

キーワード:スラッシュ雪崩, スラッシュフロー, 積雪断面観察, 氷板, 事例研究, 災害予測

富士山で発生する雪代については,1940年代の広瀬潔の報告やその後の雪氷研究者や登山家による多くの研究によって,発生時の地盤条件(素因)とトリガーとなる気象条件までが明らかになりつつある。しかし,特にスラッシュ雪崩が頻発する東斜面(御殿場側斜面)において,気象条件が整った場合での過去のスラッシュ雪崩の発生/非発生について注目してみると,その境界は単純ではない。
そこで筆者は同斜面において,気象条件が整うタイミングの前後を狙って現地調査を実施した。その結果以下のことが明らかになってきた。
- 凍結地盤の上に過去の発生時と同様の十分な積雪,および昇温と強雨があってもスラッシュ雪崩が発生しない場合がある(例えば,2014年2月の大雪後の場合)。
- 斜面で発生するスラッシュ雪崩よりも,広い谷状地形の底や溶岩流を基底にもつ渓床から発生するスラッシュフロー(雪泥流)の方が発生の頻度は高い。
- 東斜面においては積雪の下面に厚い氷板が広域に分布する。しかし年によってその発達に差異があり,2014年2月中旬には形成が確認できなかった。
以上から,スラッシュ雪崩の発生には、積雪深と積雪内に形成された氷板の有無が発生の重要な鍵を握っていると考えられる。