日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM33] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2015年5月26日(火) 09:00 〜 10:45 102A (1F)

コンビーナ:*神田 径(東京工業大学火山流体研究センター)、市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、座長:松野 哲男(東京大学地震研究所)

09:00 〜 09:15

[SEM33-01] 地殻活動に伴って励起された電磁波の地中から地上への放射

*筒井 稔1 (1.京都産業大学)

キーワード:電磁波パルス観測, 偏波計測, 大地からの放射

京都産業大学では以前から地中で電磁波が励起されるかどうかを確かめるための観測研究を行ってきたが、地中励起の電磁波を全く見つける事が出来なかった。これは、たとえ地中で電磁波が励起されても、地中媒質の電気伝導度が高いために、距離と共に急激に減衰してしまい、地中電磁波センサーの位置においてはセンサーの検出感度以下となっていたと考えられた。そこで2011年の12月からそのモニターする周波数範囲を5kHzからその1/200の25 Hz以下にしたところ、電磁波を検出する事が出来るようになった。この電磁波は地震波の振動により、地中岩盤内での圧電効果により励起されていると考えられ、電磁波観測点において震度が1以下であっても、電磁波が検出される事が判った。これは地震波の波頭に電磁波放射源が載っていて、電磁波を放射しながら地震波の速度で移動している形態を採っていると考えられる。しかし地震波により励起された電磁波は容易に地上にも放射されている事が確実となった。これがMT法での測定でもco-seismic 信号として検出される理由である[1]。
この地中励起の電磁波が地上方向に伝搬している事を示す方法として、一般的には地中と地上の両方での電磁波検出の時間差を測る事を考えるが、適当ではない。即ち、地中媒質と地上の空気という誘電率の異なる二つの媒質の境界面を横切って伝搬してきた結果の波形を見る事であり、その両者の波形を比較しても正しい結果は得られない。ただしく検証するには地中と地上の両方での電磁波の偏波解析をする事である。過去におこなった地上での雷放電が地中に侵入した時の電磁波の波形の同時測定から、その偏波解析を行った時、地上での雷放電は直線偏波をしていたのに対して地中での電磁波の偏波は楕円偏波をしていた[2]。この方法を採用して、電磁波観測点の直下で発生した地震時の地中と地上で検出した電磁波の波形から、その特定の時間での偏波特性を図に示している。図から、地中では直線偏波を示しているが、地上では楕円偏波を示している。これは直線偏波をしていた電磁波が二つの媒質の境界面(地表面)を通過する事により楕円と変化したことを示しており、地中から地上への放射を示唆している。
衛星観測において、地震発生前に電離層状況に変化が現れる点について、それを引き起こす物理現象についても、地表面を境とした地中から地上へ放射をしている何らかのエネルギーを見つける事が急務であると感じている。

[1] Minoru Tsutsui, Behaviors of Electromagnetic Waves Directly Excited by Earthquakes, IEEE Geoscience and Remote Sensing Letters, Vol. 11, No. 11, pp 1961-1965, 2014.
[2] M. Tsutsui, T. Nakatani, M. Kamitani and T. Nagao, Polarization and propagation property of electromagnetic pulses in the earth, in Proc. IGARSS, 2011, pp. 838-841.