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[MIS34-P21] 氷期の海洋深層炭素貯蔵庫の探索
キーワード:氷期, 炭素レザバー
氷床コア中の大気分析により氷期の大気中二酸化炭素濃度が間氷期に比べて約80 ppm低かったことが明らかにされている。氷期に大気中二酸化炭素濃度低下分を説明する炭素がどこに貯えられていたか (レザバー) という問題は、古気候。古海洋研究の中心的な課題として長年にわたり研究されてきたが未だ解明されていない。炭素貯蔵量が大気や陸上生物圏と比べてはるかに大きな海洋深層は、氷期炭素レザバーとして最重要視されてきた。特に、氷期海洋深層水が低温、高塩分の高密度水であったことが間隙水分析により示唆されると、氷期の高密度深層水塊に大気中二酸化炭素濃度低下分が貯えられていたのではないか、という仮説を検証するための研究が行われてきた。その代表的な検証方法が、海底堆積物コア試料の同じ層準から拾い出した浮遊性有孔虫と底生有孔虫の放射性炭素年代差(B-P年代差)から見かけ上の海洋循環速度(ベンチレーション速度)を見積もる方法である。もし、海洋深層が氷期炭素レザバーであったなら、氷期にB-P年代差は大きく拡大するはずである。なぜなら海洋深層水に数万年二酸化炭素を貯えた場合、海洋深層水の放射性炭素濃度は極めて少なくからである。しかしこの方法を用いた検証の結果は、氷期のB-P年代差があまり変化しなかったとするものと、大きく拡大したとするものに大きく分かれている。元データまで戻ってその理由を調べたところ、B-P年代差が大きく拡大したとするものは、放射性炭素年代が逆転するなど堆積速度曲線に大きな変化が見られる、もしくはベンチレーション速度を見積もる際に、海洋レザバー効果のチューニングを行っていたことがわかった。これらのことから、氷期の海洋深層炭素レザバーは、海洋深層の高密度水塊に極めて古い水塊として存在していた可能性は小さいことが示唆された。