日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS25] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)

18:15 〜 19:30

[HDS25-P03] 長野県青木村の地すべり地:分布と地形・地質の特徴

*小宮山 翔子1苅谷 愛彦2岩田 修二3 (1.専修大学・学部生、2.専修大学、3.都立大学)

キーワード:新第三系, テフロクロノロジー, 大町APmテフラ群, キャップロック, 岩石制約, 流れ盤地すべり

長野県青木村は新第三紀堆積岩類(別所層,青木層,小川層)および貫入岩類からなる急峻な山地が多く,村域各所に地すべり地が発達する.従来,これらの地すべりに関する地形学・地質学的研究はほとんどなかった.本研究では,同村の地すべり地について,空中写真判読や踏査,テフラ分析にもとづき地形・地質的な特徴を明らかにした.
合計109地点の地すべり移動体が確認された.それらの総面積は12.3km2で,村域の21.5%を占める.また6地点では,複数の地すべり移動体が密集した地すべり集合体を確認できた:すなわち,1)子檀嶺岳北西麓地すべり地(KNW),2)子檀嶺岳北東麓地すべり地(KNE),3)原池地すべり地(HIK),4)夫神岳北西麓地すべり地(OKM),5)深山地すべり地(HKY)および6)入奈良本地すべり地(INM)である.これらの地すべり集合体では,地すべり移動体の面積が大きいほど地すべり移動体の斜面傾斜角が小さくなる傾向が認められた(ここでの傾斜角とは移動体の下端と上端とを結んだ見とおし角である).この要因として,二次地すべりの発生による移動体の細分化や,流水侵食による移動体の開析に伴う減傾斜化が考えられる.
地質ごとの地すべり地分布面積率は,別所層(40 %),貫入岩(24 %),青木層(15 %),第四系未固結堆積物(11 %),小川層(2 %)である.地質ごとに地すべり地の分布頻度が異なり,古い地層ほど地すべりを多く発生させている.青木村の地すべりは岩石制約を受けているといえる.特に,別所層(頁岩)は劈開性が強く,岩盤の滑動をもたらしやすいとみられる.またこれとは別に,貫入岩や塊状砂岩がキャップロックをなす地点では,地すべりの滑落崖がキャップロックとその下位の軟弱な堆積岩との境界におおむね位置する(KNE,KNW,INM).これらの地点ではキャップロック型地すべりが発生したと考えられる.さらに,多くの地すべり地では地層と斜面の傾斜角及び傾斜方向が揃う.流れ盤地すべりも発生しているとみられる.
INMにおいて移動体を覆うテフラ層(Loc.1)を発見した.テフラ層の層序や層相,組成鉱物から,このテフラ層は大町APmテフラ群に同定された.同テフラ群は長野県大町市大町スキー場を模式地とする300-350 ka の広域テフラである.Loc.1のAPmテフラ群は断層変位や褶曲変形を受けており,それらが地すべりによるとすると,INMでは更新世中期以降に初生地すべりまたは二次地すべりが発生したことになる.なお,先行研究によりOKMでは地すべり移動体を覆う立山D(99 ka)以降のテフラが確認されているが,地すべりの活動時期は不明である.