日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS34] 古気候・古海洋変動

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*山田 和芳(静岡県 文化・観光部 文化学術局 ふじのくに地球環境史ミュージアム整備課)、池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、入野 智久(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、岡 顕(東京大学大気海洋研究所)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、北場 育子(立命館大学古気候学研究センター)、北村 晃寿(静岡大学理学部地球科学教室)、佐野 雅規(総合地球環境学研究所)、中川 毅(立命館大学)、林田 明(同志社大学理工学部環境システム学科)

18:15 〜 19:30

[MIS34-P11] 猪苗代湖湖底堆積物に記録されたハインリッヒイベントと冬季モンスーン活動

*井内 美郎1眞浦 幸聖2山田 和芳3 (1.早稲田大学人間科学学術院、2.早稲田大学人間科学部、3.静岡県 文化・観光部 文化学術局 ふじのくに地球環境史ミュージアム整備課)

キーワード:ハインリッヒイベント, 冬季モンスーン, 湖底堆積物, ボーリング, 気候変動

本州の日本海沿岸地域は太平洋岸地域に次ぐ多雨地帯である。この相対的に多い降水量は、冬季の降雪量が一般的な地方の降水量に付加するために生じており、日本海沿岸地域の多くは豪雪地帯対策特別措置法で豪雪地帯に指定されている。この冬季の降雪量が今後どう変化するのかを検討するために、冬季の降雪が春に雪解け水として流入する猪苗代湖をモニタリングステーションとして湖底堆積物の研究を実施した。猪苗代湖の湖心域(水深90m)で採取された約28m長のボーリング試料について、2.5cm間隔で粒度測定を実施し古環境変遷を検討した。
試料は厚さ数mmの明暗の互層からなる泥質層を主とし、15層のテフラ層と約30層準の厚さ数cmの明暗の対をなす堆積物を挟んでいる。テフラの年代及び炭素年代を基に年代モデルを作成し、コアの深度を年代値に変換した。その結果、約1万年以前の試料について7000年の周期性が確認された。さらに、粒度の極大値を示す年代はハインリッヒイベントの年代とよい一致を示した。また、日本海の流氷起源の砕屑物量の極大値の年代とも類似性を示した。厚さ数cmの明暗層について5mm間隔で粒度を測定した結果、逆級化に始まり正級化に終わる堆積様式を示した。また、下位の白色層には酸性水を好む付着性の珪藻が多く観察された。これらのことから猪苗代湖の堆積物には洪水起源の堆積物が多く含まれることが推定された。
粒度の極大値が地球規模の急激な寒冷期と一致すること、およびイベント堆積物が洪水堆積物と考えられることから、その原因は主として急激な寒冷期に冬季モンスーン活動が活発化し、風下の日本列島で降雪量が多くなり、春に大量の雪解け水を供給するために洪水が起こったと結論した。
気候変動に関する国際パネルの報告書では、当面は急激な寒冷化は想定されていない。それゆえ近未来に関しては地球温暖化の進行が想定されるが、その場合には冬季モンスーン活動が弱体化することが想定され、日本海沿岸地域の降雪量が減少することで雪解け水を利用する田植え期の代掻き用水の不足や水力発電のための水資源の減少が危惧される。