14:30 〜 14:45
[AAS21-21] 大気中ガス状亜硝酸(HONO)の三酸素同位体異常の定量化
キーワード:HONO, ガス状亜硝酸, 三酸素同位体組成, 発生源, 冬季, 札幌
大気中のガス状亜硝酸(HONO)は、日中の光分解反応により、OHラジカルを生成する。OHラジカルは大気中の主要酸化剤であり、還元性気体(メタンや炭化水素類)の大気寿命を決めたり、オゾンやアルデヒド等の有害成分や有機エアロゾルの生成や分解にも関与する重要な極微量成分である。HONOの発生源には、各種発生源からの「直接排出」と大気中の窒素化合物からの「二次生成」の二種類が想定される。しかし、未知の発生源が存在する可能性を含めて、HONOの発生源に関する知見は乏しいのが現状である。
そこで本研究では、HONOの三酸素同位体異常(∆17O値)を指標に用いることで、「直接排出」由来のHONOと「二次生成」由来のHONOとの混合比を定量することを目的として、HONOの∆17O値定量法の開発を行った。「二次生成」由来のものは、その生成過程にO3が関与するため、生成されるHONOの∆17O値は対流圏O3(∆17O = +30 ± 10‰程度)に匹敵する大きな値を持つと予想される。一方、「直接排出」由来のものは、H2OやO2を起源とした一般の化学反応を経由して生成されるため、∆17O値が0‰と考えられる。従って、大気中のHONOの∆17O値を定量することで、全HONOに占める「二次生成」由来の寄与率を見積もることができると考えられる。
HONOの∆17O値は、大気中のHONOを炭酸カリウム含浸フィルターに捕集した上でNO2-として抽出し、それをN2OやO2に変換して定量した。しかし、この方法では捕集期間が長くなると、フィルター上でNO2-とH2Oとの間で酸素交換が進み、∆17O値が低下する可能性がある。そこで本研究では、HONO捕集条件の検討を行うための集中観測を2014年12月15日〜26日の期間に、札幌市内にある北海道立総合研究機構の環境科学研究センターの屋上で行った。HONOの捕集期間は半日, 1日, 2日, 3日, 4日, 1週間, 2週間と変えて観測を行い、捕集期間が長くなるにつれ∆17O値が低くならないかを確認した。捕集期間が半日から3日までの試料のついては10 L/min、4日〜2週間の試料については4 L/minの流量で吸引した。抽出したNO2-はアジ化水素と反応させてN2Oに変換し、さらに熱分解によってO2に変換した上で、質量分析計に導入して∆17O値を定量した。また、フィルター上のNO2-の一部がとO3反応してNO3-になることによってNO2-の回収率が下がることが考えられることから、NO2-とNO3-の濃度はイオンクロマトグラフ法で定量し、フィルター上のNO2-の回収率(NO2-とNO3-の濃度の和に対するNO2-濃度の比率)を評価した。
捕集フィルター上のNO2-の回収率は、4 L/minで吸引した場合は平均78%程度であり、同じ条件で捕集した先行研究の結果(76%程度, 大山 他, 2012)と同程度であった。これに対し、流量が10 L/minで吸引した場合は、NO2-回収率が平均で95%以上であった。このことから、流速を上げることによって、NO2-がO3と反応する時間が短くなり、NO3-の生成量をおさえることができることがわかった。
大気中のHONOの∆17O値は、捕集期間が長くなるにつれて0に近づいていく傾向は見られなかったことから、少なくとも2週間程度までの捕集期間では、捕集中のフィルター上のNO2-とH2Oとの間で酸素交換はほとんど起こっていないことが確認できた。観測期間を通じてHONOの∆17O は+6〜9‰程度であったことから、冬季の都市域でも「二次生成」由来のHONOが相当量を占めることがわかった。「二次生成」由来のHONOの∆17O値として最大である+35‰を仮定すると、今回の観測期間における大気中のHONOの「二次生成」由来の寄与率は少なくとも20%以上と見積もられた。
そこで本研究では、HONOの三酸素同位体異常(∆17O値)を指標に用いることで、「直接排出」由来のHONOと「二次生成」由来のHONOとの混合比を定量することを目的として、HONOの∆17O値定量法の開発を行った。「二次生成」由来のものは、その生成過程にO3が関与するため、生成されるHONOの∆17O値は対流圏O3(∆17O = +30 ± 10‰程度)に匹敵する大きな値を持つと予想される。一方、「直接排出」由来のものは、H2OやO2を起源とした一般の化学反応を経由して生成されるため、∆17O値が0‰と考えられる。従って、大気中のHONOの∆17O値を定量することで、全HONOに占める「二次生成」由来の寄与率を見積もることができると考えられる。
HONOの∆17O値は、大気中のHONOを炭酸カリウム含浸フィルターに捕集した上でNO2-として抽出し、それをN2OやO2に変換して定量した。しかし、この方法では捕集期間が長くなると、フィルター上でNO2-とH2Oとの間で酸素交換が進み、∆17O値が低下する可能性がある。そこで本研究では、HONO捕集条件の検討を行うための集中観測を2014年12月15日〜26日の期間に、札幌市内にある北海道立総合研究機構の環境科学研究センターの屋上で行った。HONOの捕集期間は半日, 1日, 2日, 3日, 4日, 1週間, 2週間と変えて観測を行い、捕集期間が長くなるにつれ∆17O値が低くならないかを確認した。捕集期間が半日から3日までの試料のついては10 L/min、4日〜2週間の試料については4 L/minの流量で吸引した。抽出したNO2-はアジ化水素と反応させてN2Oに変換し、さらに熱分解によってO2に変換した上で、質量分析計に導入して∆17O値を定量した。また、フィルター上のNO2-の一部がとO3反応してNO3-になることによってNO2-の回収率が下がることが考えられることから、NO2-とNO3-の濃度はイオンクロマトグラフ法で定量し、フィルター上のNO2-の回収率(NO2-とNO3-の濃度の和に対するNO2-濃度の比率)を評価した。
捕集フィルター上のNO2-の回収率は、4 L/minで吸引した場合は平均78%程度であり、同じ条件で捕集した先行研究の結果(76%程度, 大山 他, 2012)と同程度であった。これに対し、流量が10 L/minで吸引した場合は、NO2-回収率が平均で95%以上であった。このことから、流速を上げることによって、NO2-がO3と反応する時間が短くなり、NO3-の生成量をおさえることができることがわかった。
大気中のHONOの∆17O値は、捕集期間が長くなるにつれて0に近づいていく傾向は見られなかったことから、少なくとも2週間程度までの捕集期間では、捕集中のフィルター上のNO2-とH2Oとの間で酸素交換はほとんど起こっていないことが確認できた。観測期間を通じてHONOの∆17O は+6〜9‰程度であったことから、冬季の都市域でも「二次生成」由来のHONOが相当量を占めることがわかった。「二次生成」由来のHONOの∆17O値として最大である+35‰を仮定すると、今回の観測期間における大気中のHONOの「二次生成」由来の寄与率は少なくとも20%以上と見積もられた。