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[SGL40-P13] 琉球弧中部与論島付近の活構造と地下構造
キーワード:四万十帯, 秩父帯, 活断層
琉球弧は九州から南へ琉球海溝沿いに発達する島弧である。琉球弧中部の地質は四万十帯,秩父帯をより若い石灰岩が覆い,点在する深成岩体に特徴付けられる。与論島は,琉球弧をなす南西諸島の中央部,沖縄島北端の辺戸岬の北東約23 kmに位置する島である。島には裾礁としてサンゴ礁が発達し,島の地質の大部分は第四紀の石灰岩(琉球層群)からなり,中南部および南東部に下位の堆積岩類および塩基性火山岩類(立長層)が露出する。琉球層群については多くの研究がなされ,小田原・井龍(1999)が層序を確立したが,立長層については未詳の部分が多い。立長層には石灰岩・粘板岩・珪岩・砂岩・凝灰岩・輝緑岩が含まれる(中川1967)。本層は,大庭(1955)が古生界と推定して以降特に年代についての議論はないが,奄美大島や沖縄島での層序を参考に,最近では中生界であると考えられているようである(小田原・井龍,1999など)。島の地形は複数の段丘面からなることが知られており,明瞭な断層崖を持つ二つの活断層が認められる。島の中央部を南北ないし北北西?南南東に走る辻宮断層が,東西走向の朝戸断層を切っていると解釈されている(太田・堀1980; 活断層研究会1980)。辻宮断層は島東部が上昇し若干の左横ずれ成分をもち,朝戸断層は南側が隆起する。両者とも高角正断層と考えられているが,断層面の露頭は報告されていない。北海岸では辻宮断層延長部を境に堡礁の高さが東側で約50 cm高いこと,石灰岩の海蝕地形であるノッチの高さや発達の差から,最近まで断層活動が続いていると考えられた(武永1965; 1968)。他方で,小田原・井龍(1999)は琉球層群の層序区分の再検討により,最上位のチチ崎層と供利層が沿岸低地に同高度で分布していることから,これらの層の形成以降の活動はほとんどないと考えた。ただし,これら2つの断層崖は現在も明瞭急峻で,活動度もそれぞれA級(辻宮断層),B級(朝戸断層)とされている(活断層研究会1980)。
本研究では,これら断層群を正確に評価しテクトニックな意義を検討するため,国土地理院の基盤地図情報数値標高モデルを利用して詳細な高度,傾斜,傾斜方向の分布図を作成した。また与論島周辺の重力異常データ(植田2005)を参照し,推定される地下構造を含めてテクトニックセッティングを検討した。
その結果,辻宮断層は南部において約70 mの標高差を生じているが,北部では20 m以下の標高差の二系統の断層に分かれている。この分岐点付近にほぼ直交する朝戸断層が接続する形になっている。高度分布も加味すると,辻宮断層と朝戸断層で境される島南東部のブロックが隆起する運動が起きたと推定される。重力異常データを見ると,ブーゲー異常は周辺地域と同様の弱い正の値を示すが,フリーエア異常は周辺海域から突出して80 mgal程度の正の異常を示す。これは地殻がアイソスタシーよりも浮いていることを示し,与論島直下に伏在する深成岩体の存在が推定される。この深成岩体ドームの上に位置するために与論島陸上部は引張応力場にあると考えられ,現在のプレート沈み込みに対応しない直交する二方向の正断層の存在も説明することができる。
引用文献
植田(2005) 日本列島とその周辺海域のブーゲー重力異常(2004年版). 海洋情報部研究報告, 41, 1-26.
大庭(1955) 与論島の地形及び地質(豫報). 鹿児島大理報, 4, 19-25.
太田・堀(1980) 琉球列島の第四紀後期の地殻変動に関する一考察. 第四紀研究, 18, 221-240.
小田原・井龍(1999) 鹿児島県与論島の第四系サンゴ礁堆積物(琉球層群). 地質学雑誌, 105, 273-288.
活断層研究会(1980) 日本の活断層?分布図と資料. 東京大学出版会, 東京, pp. 359.
武永(1965) Beach rockの成因について. 地理学評論, 38, 739-755.
武永(1968) Notchの形態と成因について. 地学雑誌, 77, 329-341.
中川(1967) 奄美群島徳之島・沖永良部島・与論島・喜界島の地質 (1). 東北大地質古生物研邦報, 63, 1-39.
本研究では,これら断層群を正確に評価しテクトニックな意義を検討するため,国土地理院の基盤地図情報数値標高モデルを利用して詳細な高度,傾斜,傾斜方向の分布図を作成した。また与論島周辺の重力異常データ(植田2005)を参照し,推定される地下構造を含めてテクトニックセッティングを検討した。
その結果,辻宮断層は南部において約70 mの標高差を生じているが,北部では20 m以下の標高差の二系統の断層に分かれている。この分岐点付近にほぼ直交する朝戸断層が接続する形になっている。高度分布も加味すると,辻宮断層と朝戸断層で境される島南東部のブロックが隆起する運動が起きたと推定される。重力異常データを見ると,ブーゲー異常は周辺地域と同様の弱い正の値を示すが,フリーエア異常は周辺海域から突出して80 mgal程度の正の異常を示す。これは地殻がアイソスタシーよりも浮いていることを示し,与論島直下に伏在する深成岩体の存在が推定される。この深成岩体ドームの上に位置するために与論島陸上部は引張応力場にあると考えられ,現在のプレート沈み込みに対応しない直交する二方向の正断層の存在も説明することができる。
引用文献
植田(2005) 日本列島とその周辺海域のブーゲー重力異常(2004年版). 海洋情報部研究報告, 41, 1-26.
大庭(1955) 与論島の地形及び地質(豫報). 鹿児島大理報, 4, 19-25.
太田・堀(1980) 琉球列島の第四紀後期の地殻変動に関する一考察. 第四紀研究, 18, 221-240.
小田原・井龍(1999) 鹿児島県与論島の第四系サンゴ礁堆積物(琉球層群). 地質学雑誌, 105, 273-288.
活断層研究会(1980) 日本の活断層?分布図と資料. 東京大学出版会, 東京, pp. 359.
武永(1965) Beach rockの成因について. 地理学評論, 38, 739-755.
武永(1968) Notchの形態と成因について. 地学雑誌, 77, 329-341.
中川(1967) 奄美群島徳之島・沖永良部島・与論島・喜界島の地質 (1). 東北大地質古生物研邦報, 63, 1-39.