18:15 〜 19:30
[SSS31-P07] 仙台平野愛島丘陵周辺における重力探査
キーワード:重力探査, 伏在活断層, 地下構造, 活断層の連続性
仙台平野南部では2013年1-2月において実施した反射法地震探査の結果および2013年6-7月に反射法地震探査測線を含むように実施した重力探査の結果から,伏在活断層が存在し,先第三系の基盤岩およびその上位に堆積する中新統から更新統の地質も変位させていることが明らかになった.また,1 m DEM, 2 m DEMを用いて地形解析を行った結果,平野の微地形発達にも活断層運動が影響していることが示唆された.この伏在断層は,2013年の反射法地震探査の結果および既存の反射法地震探査やブーゲー重力異常から、仙台平野南部から愛島丘陵東縁に連続すると考えられる.しかし,この伏在活断層と,長町-利府断層の前縁に伏在する苦竹断層との関係,鈎取-奥武士構造線との関係については,検討の余地を残していた.仙台平野に伏在する活断層を評価する上で,その連続性(活断層の長さ)を明らかにすることは,都市防災に対しても重要な基礎的情報となる.
そこで,本研究では,仙台平野南部から愛島丘陵に連続する伏在活断層の北部への連続性について明らかにするために,愛島丘陵から名取川右岸(南部)にかけての地域において,2014年6 月に重力測定を実施した.対象地域 (岩沼市・名取市周辺) は住宅密集地を含むため,ノイズや道路状況に制約の多い反射法地震探査よりも重力探査が有利である.本探査では,東西に6本の測線(測線同士の間隔は約1-1.5 km程度)を設定し,測定点間隔は標準200 mとして,合計232点の相対重力測定を実施した.測定機器には,LaCoste & Romberg D型重力計およびG型重力計の2台を用いた.測定点の位置座標および標高は,Trimble R8 GPSを用いて,サンプリング間隔1秒・標準15分の高速静止測量を重力測定と同時に行った.また干渉測位を行うために国土地理院の周辺の電子基準点データを用いるとともに,GPS臨時基準点も独自に設置した.位置座標は,複数の基線解析結果を用いての網平均処理を施した.
本重力探査で得たデータには,ブーゲー重力異常値を算出した.本探査の対象地域は,2011年東北地方太平洋沖地震による地殻変動により,東南東方向に3.5 m程度, 最大 0.3 m程度の沈降が生じている (国土地理院, 2014).重力測定値は,標高値に大きく依存するため,この地殻変動による標高の変化を無視できない.さらに,地形補正に利用しているDEMも,大地震発生前に出版されたもので差異がある.そこで,「大地震により測定対象地域直下での地質構造の変化・変形は生じていない」という仮定の下で,観測対象地域全体が単に平行移動したとして,上記の問題に対応した.既存の重力データとの整合性をとるため,本研究で測定した重力値は,2011年東北地方太平洋沖地震以前の位置座標および標高での重力値に換算することとした.具体的には,地質調査所重力補正標準手順SPECG1988 (地質調査所重力探査グループ, 1989) に従って,正規重力値および潮汐補正,フリーエア補正等については観測位置座標を用いた.ブーゲー重力異常を求めるための地形補正値の計算には,測定地点近傍には50 mDEMを,それ以外には250 mDEMを用いたが(村田ほか, 1996),位置座標には大地震前に換算した座標を使用した.
本探査の結果によると,愛島丘陵よりも北側の測線では,伏在断層の断層運動に起因する高重力異常が見られないことから,仙台平野南部から連続する伏在断層は,愛島丘陵北部が終端となっている可能性が示唆された.
謝辞
重力探査における測定点の位置座標および標高の解析作業には,産総研の高橋美江氏にご協力いただきました.また,同研究所 村田泰章博士には,周辺の既存重力データをご提供いただきました.ここに記し感謝します.
[文献]
国土地理院, 2014, 特集・平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震から3年, http://mekira.gsi.go.jp/JAPANESE/h23touhoku_3years.html (2014.03.11掲載, 2015.02.01アクセス).
地質調査所重力探査グループ, 1989, 地質調査所重力補正標準手順SPECG1988について.地質調査所月報, 40, 11, 601-611.
村田泰章・牧野雅彦・遠藤秀典・渡辺和明・渡辺史郎・卜部厚志, 1996, 神戸市・芦屋市・西宮市における精密重力探査(1)-重力異常と伏在断層-, 地質調査所月報, 47, 109-132.
そこで,本研究では,仙台平野南部から愛島丘陵に連続する伏在活断層の北部への連続性について明らかにするために,愛島丘陵から名取川右岸(南部)にかけての地域において,2014年6 月に重力測定を実施した.対象地域 (岩沼市・名取市周辺) は住宅密集地を含むため,ノイズや道路状況に制約の多い反射法地震探査よりも重力探査が有利である.本探査では,東西に6本の測線(測線同士の間隔は約1-1.5 km程度)を設定し,測定点間隔は標準200 mとして,合計232点の相対重力測定を実施した.測定機器には,LaCoste & Romberg D型重力計およびG型重力計の2台を用いた.測定点の位置座標および標高は,Trimble R8 GPSを用いて,サンプリング間隔1秒・標準15分の高速静止測量を重力測定と同時に行った.また干渉測位を行うために国土地理院の周辺の電子基準点データを用いるとともに,GPS臨時基準点も独自に設置した.位置座標は,複数の基線解析結果を用いての網平均処理を施した.
本重力探査で得たデータには,ブーゲー重力異常値を算出した.本探査の対象地域は,2011年東北地方太平洋沖地震による地殻変動により,東南東方向に3.5 m程度, 最大 0.3 m程度の沈降が生じている (国土地理院, 2014).重力測定値は,標高値に大きく依存するため,この地殻変動による標高の変化を無視できない.さらに,地形補正に利用しているDEMも,大地震発生前に出版されたもので差異がある.そこで,「大地震により測定対象地域直下での地質構造の変化・変形は生じていない」という仮定の下で,観測対象地域全体が単に平行移動したとして,上記の問題に対応した.既存の重力データとの整合性をとるため,本研究で測定した重力値は,2011年東北地方太平洋沖地震以前の位置座標および標高での重力値に換算することとした.具体的には,地質調査所重力補正標準手順SPECG1988 (地質調査所重力探査グループ, 1989) に従って,正規重力値および潮汐補正,フリーエア補正等については観測位置座標を用いた.ブーゲー重力異常を求めるための地形補正値の計算には,測定地点近傍には50 mDEMを,それ以外には250 mDEMを用いたが(村田ほか, 1996),位置座標には大地震前に換算した座標を使用した.
本探査の結果によると,愛島丘陵よりも北側の測線では,伏在断層の断層運動に起因する高重力異常が見られないことから,仙台平野南部から連続する伏在断層は,愛島丘陵北部が終端となっている可能性が示唆された.
謝辞
重力探査における測定点の位置座標および標高の解析作業には,産総研の高橋美江氏にご協力いただきました.また,同研究所 村田泰章博士には,周辺の既存重力データをご提供いただきました.ここに記し感謝します.
[文献]
国土地理院, 2014, 特集・平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震から3年, http://mekira.gsi.go.jp/JAPANESE/h23touhoku_3years.html (2014.03.11掲載, 2015.02.01アクセス).
地質調査所重力探査グループ, 1989, 地質調査所重力補正標準手順SPECG1988について.地質調査所月報, 40, 11, 601-611.
村田泰章・牧野雅彦・遠藤秀典・渡辺和明・渡辺史郎・卜部厚志, 1996, 神戸市・芦屋市・西宮市における精密重力探査(1)-重力異常と伏在断層-, 地質調査所月報, 47, 109-132.