18:15 〜 19:30
[PEM27-P16] 電離圏観測ロケットのウェイク周辺においてプラズマ波動を励起する電子の速度分布の検討
キーワード:ウェイク, プラズマ波動, 観測ロケット, 電離圏
プラズマ中を超音速で運動する物体の後方にはウェイクと呼ばれるプラズマの希薄な領域が形成される。ウェイクは観測ロケットや人工衛星など飛翔体の後方に生じる他、太陽風プラズマと天体の相互作用によっても作られることが知られている。
人工衛星や月のウェイク近傍ではプラズマ波動の観測例があるが、ロケットのウェイク近傍でもプラズマ波動の励起を示唆する結果が近年のロケット観測により得られている。2012年1月12日の明け方に鹿児島で行われたS-520-26ロケット実験(最高到達高度:298 km)では、3種類のプラズマ波動が確認されている(それぞれGroup A, B, Cと呼ぶ)。観測された波動は、その周波数から、静電的電子サイクロトロン高調波(ESCH)及びUHRモード波動(Group-A)、ホイッスラーモード波動(Group-B、C)であると結論され、それぞれある特徴的なスピン位相角依存性をもっていた。2007年9月2日の夕刻に鹿児島で行われたS-520-23ロケット実験(最高到達高度:279 km)でも、Group-Aの波動は観測されており、そのスピン位相角依存性はS-520-26ロケット実験の結果と矛盾しないものであることが分かっている。
電離圏の電子の速度分布にビーム成分や温度異方性を与えた分布を仮定し波動の分散関係を数値的に求めたところ、UHRモード波動、ESCH波動の他、静電的ホイッスラーモード波動の波数、周波数領域で波が成長する解が得られている。この計算結果とロケット観測の結果から、仮定した速度分布と等価的な速度分布がウェイク近傍に存在していたと考えられるが、実際にどのような速度分布関数がどのような空間分布で存在しうるかは今後検証するべき課題である。
Singh et al. (1987)は、ブラソフ-ポアソンコードを用いて一次元の真空中に両側からプラズマが流れ込む現象を模擬することで、物体のごく近傍のウェイクでは二流体不安定型の速度分布関数が得られることを示した。しかし、同論文で議論に取り上げられているのはウェイク軸上の速度分布関数のみであり、それ以外の領域での分布関数については特に言及されていない。また、速度空間の次元については拡散方向一次元のみの議論にとどめられており、電子の異方性に関しては指摘されていない。
そこで我々は、ウェイク近傍における速度分布関数の空間分布について考察するため、Singh et al. (1987)の方法を僅かに改変した、空間一次元(磁場方向)、速度空間二次元(磁場方向とそれに垂直な方向)の静電ブラソフシミュレーションを検討している。具体的には、一次元空間に設けた真空領域に電子、イオンが拡散していく状況を考え、シミュレーションの時間発展はウェイクの軸方向の空間変化として解釈する。電子・イオンが拡散する磁力線の方向に長さ10 mの1次元空間をとり1024 gridに分割して計算を行う
本発表では、S-520-26及びS-520-23ロケット実験の観測結果をもとに、ウェイク近傍のプラズマ波動の周波数帯域および空間分布を明らかにし、励起に寄与しうる電子の速度分布に関して議論を行う。併せて、プラズマ波動を励起しうる速度分布をもつ電子がウェイク近傍にどのように空間分布するかを明らかにするために開発を進めているシミュレーションコードについて紹介し、その計算結果について報告する。
人工衛星や月のウェイク近傍ではプラズマ波動の観測例があるが、ロケットのウェイク近傍でもプラズマ波動の励起を示唆する結果が近年のロケット観測により得られている。2012年1月12日の明け方に鹿児島で行われたS-520-26ロケット実験(最高到達高度:298 km)では、3種類のプラズマ波動が確認されている(それぞれGroup A, B, Cと呼ぶ)。観測された波動は、その周波数から、静電的電子サイクロトロン高調波(ESCH)及びUHRモード波動(Group-A)、ホイッスラーモード波動(Group-B、C)であると結論され、それぞれある特徴的なスピン位相角依存性をもっていた。2007年9月2日の夕刻に鹿児島で行われたS-520-23ロケット実験(最高到達高度:279 km)でも、Group-Aの波動は観測されており、そのスピン位相角依存性はS-520-26ロケット実験の結果と矛盾しないものであることが分かっている。
電離圏の電子の速度分布にビーム成分や温度異方性を与えた分布を仮定し波動の分散関係を数値的に求めたところ、UHRモード波動、ESCH波動の他、静電的ホイッスラーモード波動の波数、周波数領域で波が成長する解が得られている。この計算結果とロケット観測の結果から、仮定した速度分布と等価的な速度分布がウェイク近傍に存在していたと考えられるが、実際にどのような速度分布関数がどのような空間分布で存在しうるかは今後検証するべき課題である。
Singh et al. (1987)は、ブラソフ-ポアソンコードを用いて一次元の真空中に両側からプラズマが流れ込む現象を模擬することで、物体のごく近傍のウェイクでは二流体不安定型の速度分布関数が得られることを示した。しかし、同論文で議論に取り上げられているのはウェイク軸上の速度分布関数のみであり、それ以外の領域での分布関数については特に言及されていない。また、速度空間の次元については拡散方向一次元のみの議論にとどめられており、電子の異方性に関しては指摘されていない。
そこで我々は、ウェイク近傍における速度分布関数の空間分布について考察するため、Singh et al. (1987)の方法を僅かに改変した、空間一次元(磁場方向)、速度空間二次元(磁場方向とそれに垂直な方向)の静電ブラソフシミュレーションを検討している。具体的には、一次元空間に設けた真空領域に電子、イオンが拡散していく状況を考え、シミュレーションの時間発展はウェイクの軸方向の空間変化として解釈する。電子・イオンが拡散する磁力線の方向に長さ10 mの1次元空間をとり1024 gridに分割して計算を行う
本発表では、S-520-26及びS-520-23ロケット実験の観測結果をもとに、ウェイク近傍のプラズマ波動の周波数帯域および空間分布を明らかにし、励起に寄与しうる電子の速度分布に関して議論を行う。併せて、プラズマ波動を励起しうる速度分布をもつ電子がウェイク近傍にどのように空間分布するかを明らかにするために開発を進めているシミュレーションコードについて紹介し、その計算結果について報告する。