16:45 〜 17:00
[SVC46-03] 富士火山宝永噴火末期におけるマグマ上昇過程の変化;斜長石マイクロライトからの制約
キーワード:富士火山, 斜長石, マイクロライト, 火道上昇速度, スコリア, 噴火様式
1707年におきた宝永噴火は,富士火山で最も新しい噴火である.富士火山の噴火はほとんどが玄武岩質のストロンボリ式噴火,或いは,溶岩流噴火であるのに対し,宝永噴火は富士火山では珍しいプリニー・準プリニー式噴火をおこし,玄武岩だけでなくデイサイトと安山岩を噴出した.噴火はおよそ15日間続き,3日目以降,玄武岩質マグマのプリニー・準プリニー式噴火を継続したことが知られるが,宝永第一火口中の火砕丘の存在は,噴火の最終段階でプリニー式からストロンボリ式へと噴火様式を変えたことを示している.しかし,この様式変化の要因は明らかにされていない.そこで本研究では,宝永噴火末期の玄武岩質スコリアの鉱物化学組成と岩石組織からマグマの上昇プロセスを推定し,噴火様式が変化した要因を検証した.
プリニー式噴火の降下スコリア堆積物は,宝永火口から東へ8㎞の地点で採取した.粒子の特徴に基づいてHo-Ⅰ~Ⅳに4区分し,更に細かく17のユニットに分けて採取した.本研究では宝永噴火後期を対象としているため,採取したスコリアのうちHo-Ⅳの6ユニットを対象とした.これに,宝永第一火口中の火砕丘で採取したスコリアを加えた計7ステージの試料について,斜長石マイクロライトの化学組成・サイズ・数密度の分析を行った.マイクロライトの化学組成は,東京大学地震研究所のEPMA(JEOL-8800R)によって測定した.マイクロライトのサイズと数密度の測定は,静岡大学道林研究室のSEMによって撮影したBSE画像の解析によって行った.
プリニー式噴火とストロンボリ式噴火のスコリアは共にほぼ無斑晶質で,構成鉱物の組み合わせも同じであった.斜長石マイクロライトの最大An値[=Ca/(Ca+Na)],最大サイズと結晶数密度は,プリニ―式噴火のスコリアでそれぞれ約74.4,約191μm,約1240 /mm2,ストロンボリ式噴火のスコリアでそれぞれ約78.3,約293μm,約881/mm2と,両者の間で明瞭な差が見られた.プリニ―式噴火に比べてストロンボリ式噴火のスコリアの方が,An値と結晶サイズは大きく,数密度は小さい値を示した.
わずかに含まれるオリビン・斜長石斑晶とメルトの相関係から,宝永噴火のマグマの温度を約1135℃と見積もった.そして,マグマがこの温度で等温上昇したと考え,Putirka (2008)の斜長石-メルト含水量計によってマイクロライトの晶出開始圧力を見積もった.その結果,プリニ―式噴火ではおよそ21MPaであったのに対し,ストロンボリ式噴火ではおよそ24MPaとやや高圧であることが分かった.それぞれの圧力は,深さ840-870mおよび940mに相当する.さらに,Toramaru et al. (2008)のマイクロライト数密度減圧速度計を用いて,マイクロライト晶出深度におけるマグマの上昇速度を見積もったところ,プリニ―式噴火でおよそ54㎞/h,ストロンボリ式噴火でおよそ36㎞/hの値が得られ,プリニ―式噴火の方が約1.5倍速かったことがわかった.この結果から,宝永噴火最末期のプリニ―式-ストロンボリ式噴火様式変化は,火道上昇速度の減少によって引き起こされたと考えられる.また,この火道上昇速度減少の原因は,およそ700mよりも深部での火道条件の変化(火道径の減少や過剰圧の減少)にあると考えられる.
プリニー式噴火の降下スコリア堆積物は,宝永火口から東へ8㎞の地点で採取した.粒子の特徴に基づいてHo-Ⅰ~Ⅳに4区分し,更に細かく17のユニットに分けて採取した.本研究では宝永噴火後期を対象としているため,採取したスコリアのうちHo-Ⅳの6ユニットを対象とした.これに,宝永第一火口中の火砕丘で採取したスコリアを加えた計7ステージの試料について,斜長石マイクロライトの化学組成・サイズ・数密度の分析を行った.マイクロライトの化学組成は,東京大学地震研究所のEPMA(JEOL-8800R)によって測定した.マイクロライトのサイズと数密度の測定は,静岡大学道林研究室のSEMによって撮影したBSE画像の解析によって行った.
プリニー式噴火とストロンボリ式噴火のスコリアは共にほぼ無斑晶質で,構成鉱物の組み合わせも同じであった.斜長石マイクロライトの最大An値[=Ca/(Ca+Na)],最大サイズと結晶数密度は,プリニ―式噴火のスコリアでそれぞれ約74.4,約191μm,約1240 /mm2,ストロンボリ式噴火のスコリアでそれぞれ約78.3,約293μm,約881/mm2と,両者の間で明瞭な差が見られた.プリニ―式噴火に比べてストロンボリ式噴火のスコリアの方が,An値と結晶サイズは大きく,数密度は小さい値を示した.
わずかに含まれるオリビン・斜長石斑晶とメルトの相関係から,宝永噴火のマグマの温度を約1135℃と見積もった.そして,マグマがこの温度で等温上昇したと考え,Putirka (2008)の斜長石-メルト含水量計によってマイクロライトの晶出開始圧力を見積もった.その結果,プリニ―式噴火ではおよそ21MPaであったのに対し,ストロンボリ式噴火ではおよそ24MPaとやや高圧であることが分かった.それぞれの圧力は,深さ840-870mおよび940mに相当する.さらに,Toramaru et al. (2008)のマイクロライト数密度減圧速度計を用いて,マイクロライト晶出深度におけるマグマの上昇速度を見積もったところ,プリニ―式噴火でおよそ54㎞/h,ストロンボリ式噴火でおよそ36㎞/hの値が得られ,プリニ―式噴火の方が約1.5倍速かったことがわかった.この結果から,宝永噴火最末期のプリニ―式-ストロンボリ式噴火様式変化は,火道上昇速度の減少によって引き起こされたと考えられる.また,この火道上昇速度減少の原因は,およそ700mよりも深部での火道条件の変化(火道径の減少や過剰圧の減少)にあると考えられる.