日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21] 惑星科学

2015年5月25日(月) 11:00 〜 12:45 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:鎌田 俊一(北海道大学理学研究院)、東 真太郎(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

12:15 〜 12:30

[PPS21-38] 「惑星科学/太陽系科学 研究領域の目標・戦略・工程表」の概要

倉本 圭1荒井 朋子2小林 直樹3杉田 精司4橘 省吾1寺田 直樹5、*並木 則行6松本 晃治6渡邊 誠一郎7 (1.北海道大学大学院理学院宇宙理学専攻、2.千葉工業大学惑星探査研究センター、3.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所、4.東京大学大学院理学系研究科、5.東北大学大学院理学研究科、6.国立天文台・RISE月惑星探査検討室、7.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:工程表, 将来計画, 太陽系探査, 惑星探査

宇宙科学研究所の求めに応じて,日本惑星科学会会長およびその諮問委員会から2015年2月2日に「惑星科学/太陽系科学 研究領域の目標・戦略・工程表」(以下では太陽系探査RFIと呼ぶ)(*)が提出された.『研究領域の目標・戦略・工程表』とは,研究領域ごとの戦略的な宇宙科学・探査のロードマップであり,宇宙科学研究所(宇宙理学委員会・宇宙工学委員会・宇宙環境利用科学委員会)の作る宇宙科学・探査ロードマップの情報源として提供されるものである.同時に,戦略的中型計画および小規模プロジェクトの評価・選定の際の参考文献となり,今後20 年を見据えた宇宙科学・探査ロードマップの策定のための源泉資料として分析と評価がなされる.
太陽系探査RFIは将来月惑星探査の指針を示す重要な資料であるが,募集文書の発出(2014年11月27日)から提出までが短期間であったため,原案の作成状況について随時周知を行ってはいたものの,惑星科学/太陽系科学のコミュニティ内で十分に議論を尽くすことはできなかった.その前書きにも述べられている通り,太陽系探査RFIの検討の熟度はまだ低く,今後も恒常的にロードマップについての議論を重ね,随時改訂していく作業が不可欠である.太陽系探査RFIの策定に関わった諮問委員会メンバーはその必要性を重く受け止め,太陽系探査RFIとその策定過程についてコミュニティへ周知を図るために本講演を企画する.
太陽系探査RFIの策定はフェーズ1とフェーズ2に分けて行われた.フェーズ1では太陽系探査RFIの主題を提案し,フェーズ2ではこれを具体的な工程表に落としこむことを試みた.フェーズ1の諮問委員会では最初に太陽系探査RFIの策定にあたって,以下の点が特に重要な制約であると判断した.
1. 本筋の明確な戦略性
新宇宙計画基本法に明示されている太陽系探査の『プログラム化』という方針からは,今後20年の太陽系探査を貫徹する主題を明示することを求められている.
2. 開発体制
惑星科学分野は小型を中心に鍛錬を積みながら,ミッションを支える開発グループを形成していくことを期待されている.
3. 技術ロードマップ
太陽系探査は理学と工学の密接な連携のもとに進めるべきであり,理学研究のロードマップにおいても要素技術の開発計画は十分に考慮する.
4. 国際情勢
太陽系探査は日本の科学技術のためのみならず,世界人類の知的財産の獲得のためにも貢献するものでなければならない.そのためには,宇宙科学・宇宙探査の国際情勢を鑑みて太陽系探査の目標を設定する.
5. 既存のWGとの整合
日本惑星科学会では2010 年より,「月惑星探査の来る10 年」という活動を通じてフラグシップミッションの立案とコンセプトの作成を行ってきた.太陽系探査RFIにはその経験を踏まえ,広く意見を吸い上げる.
6. 政策的宇宙探査のとの協調
太陽系科学における政策的宇宙探査の役割は,非常に不確定性が大きく,且つ,甚大な影響がある.慎重な検討が求められる.
以上の観点から,フェーズ1では「太陽系における前生命環境進化 -生命圏の誕生・持続に至る条件の解明-」という主題を掲げるに至り,メーリングリストを通して中間報告を行った.次いでフェーズ2では第一に,この主題の下に(i) 物質科学,(ii) 内部構造探査,(iii)惑星大気の3分野について20年後のゴールを設定することから議論を開始した.第二回会合で,ゴールに向かって20年間でどのような機器開発が必要か,という作業項目について検討を行った.第三回会合では,ゴールと機器開発を組み合わせて,ミッション候補をあげて検討を行った.そして最後に,ミッション候補の規模と重要性を考察し,物質科学・大気科学の流れを汲む火星衛星からのサンプルリターン探査と,重力天体の地質学,内部構造科学の流れを汲む月KREEP 物質・年代探査の二案を将来の戦略的中規模ミッション候補として絞り込んだ.両ミッション計画の実施時期が重なる場合には場合には,コミュニティ主導で科学と実現性の評価を行い,2018年度までに優先順位を決めることを提言している.

謝辞 本RFIの策定にあたっては,多くの個人,団体に情報提供と現状分析を依頼した.頂いた情報は太陽系探査RFIに陽に現れずとも,議論の貴重な礎となった.深く感謝の意を表する.

(*)太陽系探査RFIの提出版は下記のURLからダウンロードできる.http://urx2.nu/hctx