18:15 〜 19:30
[SVC45-P08] 箱根大涌谷温泉水の化学組成について
キーワード:温泉水, 火山活動, 箱根
[背景]
箱根火山はカルデラ火山であり、カルデラは東西に約8km、南北に12km広がっている。外輪山は玄武岩から安山岩の成層火山群で形成されており、後期中央火口丘は安山岩からデイサイトの溶岩・溶岩ドームで形成されている(高橋・他,1991,2006;長井・高橋,2008)。主峰の神山の北側に、数千年前の火山性爆発により山体の一部が崩落することで、活発な噴気地帯である大涌谷が誕生した(荒牧・大木,1971)。大涌谷の自然湧出温泉水には、地表近くで火山ガス起源のH2Sの酸化により生成されたSO42-が主要な陰イオンであり、またCl-の含有量は少ない(大森ほか,1986)。箱根大涌谷の火山ガスを対象とした研究は長らく行われているが、自然湧出温泉における水の化学組成の時間変化を報告したものは、菊川(2001)が最新であり、それ以降は報告されていない。本研究では温泉水の化学成分と水素及び酸素の安定同位体比(δD、δ18O)の時間変化を用いて火山活動との関係を考察する。
[採取・分析]
箱根大涌谷で2013年5月から2014年12月にかけて、月ごとに採取を行った。2013年5月から2014月1月までの採取地点を地点1とした。地点1は湧出した温泉水が常に留まらずに流れ出している。また地点1は雨が少ない時期が続いた場合枯渇する。2014年4月から2014年12月までの採取地点を地点2とした。地点2は穴のような場所で一定水位を保つように湧出していて、穴の縁からは流出しない。また地点2の温泉水は常に循環していることが考えられる。水温は現地で測定を行った。採取した試料を持ち帰った後0.45μmフィルターでろ過し、pHを測定した。化学成分の分析には、ICP-MS(Fe2+、Ca2+、Si、Al3+、Mg2+、Mn2+)、原子吸光光度法(K+、Na+)、イオンクロマトグラフィー(F-, Cl-, NO3-, SO42-)を用いた。δD、δ18Oはキャビティリングダウン法で測定した。
[結果・考察]
測定結果から、地点1、2共に主要な金属がFe3+、Al2+であり、それぞれ62〜692mg/L、 19〜385 mg/Lであった。Fe3+、Al2+は1、2共に類似した時間変化を示した。Ca2+に関しては地点1が140〜473mg/Lであり、地点2が6~26mg/Lと地点1と比べて少ない傾向が見られた。陰イオンは、Cl-が3~83mg/Lであることに対し、SO42-が487〜730mg/Lであった。しかしながら、本研究の対象地域から100m以内で湧出していた温泉水のpH、水温、化学組成の報告例(菊川,2001)と本研究の分析値との間には多くの異なる点が見られた。この結果から、湧出場所が数十メートル変化することで、温泉水の化学的性質も変化することが明らかになった。また、群発地震の発生回数と火山ガス組成には関係性が見出されている(代田,2013)。観測期間中における周辺の群発地震の数(箱根温泉地学研究所ホームページを引用)の増加と共に、本研究試料中のCl-/SO42-比が増加する傾向にあった。このことから、箱根大涌谷の温泉水中のCl-/SO42-比は火山活動に関連している可能性が示唆される。温泉水の安定同位体比において地点1のδD、δ18Oは53.3〜-10.2‰、-7.3〜8.3‰と大きな変動が見られたが、地点ににおいては-34.2〜-27.9‰、-0.7~2.5‰となり、地点1のような幅広い変動を示さなかった。この要因として、両地点における温泉水の湧出形態の違いが挙げられる。温泉水中のδD、δ18Oと群発地震との間には、群発地震の発生に伴いにδD、δ18Oは減少する傾向が地点1、2共に見られたが、地点2の方がより明確であった。
箱根火山はカルデラ火山であり、カルデラは東西に約8km、南北に12km広がっている。外輪山は玄武岩から安山岩の成層火山群で形成されており、後期中央火口丘は安山岩からデイサイトの溶岩・溶岩ドームで形成されている(高橋・他,1991,2006;長井・高橋,2008)。主峰の神山の北側に、数千年前の火山性爆発により山体の一部が崩落することで、活発な噴気地帯である大涌谷が誕生した(荒牧・大木,1971)。大涌谷の自然湧出温泉水には、地表近くで火山ガス起源のH2Sの酸化により生成されたSO42-が主要な陰イオンであり、またCl-の含有量は少ない(大森ほか,1986)。箱根大涌谷の火山ガスを対象とした研究は長らく行われているが、自然湧出温泉における水の化学組成の時間変化を報告したものは、菊川(2001)が最新であり、それ以降は報告されていない。本研究では温泉水の化学成分と水素及び酸素の安定同位体比(δD、δ18O)の時間変化を用いて火山活動との関係を考察する。
[採取・分析]
箱根大涌谷で2013年5月から2014年12月にかけて、月ごとに採取を行った。2013年5月から2014月1月までの採取地点を地点1とした。地点1は湧出した温泉水が常に留まらずに流れ出している。また地点1は雨が少ない時期が続いた場合枯渇する。2014年4月から2014年12月までの採取地点を地点2とした。地点2は穴のような場所で一定水位を保つように湧出していて、穴の縁からは流出しない。また地点2の温泉水は常に循環していることが考えられる。水温は現地で測定を行った。採取した試料を持ち帰った後0.45μmフィルターでろ過し、pHを測定した。化学成分の分析には、ICP-MS(Fe2+、Ca2+、Si、Al3+、Mg2+、Mn2+)、原子吸光光度法(K+、Na+)、イオンクロマトグラフィー(F-, Cl-, NO3-, SO42-)を用いた。δD、δ18Oはキャビティリングダウン法で測定した。
[結果・考察]
測定結果から、地点1、2共に主要な金属がFe3+、Al2+であり、それぞれ62〜692mg/L、 19〜385 mg/Lであった。Fe3+、Al2+は1、2共に類似した時間変化を示した。Ca2+に関しては地点1が140〜473mg/Lであり、地点2が6~26mg/Lと地点1と比べて少ない傾向が見られた。陰イオンは、Cl-が3~83mg/Lであることに対し、SO42-が487〜730mg/Lであった。しかしながら、本研究の対象地域から100m以内で湧出していた温泉水のpH、水温、化学組成の報告例(菊川,2001)と本研究の分析値との間には多くの異なる点が見られた。この結果から、湧出場所が数十メートル変化することで、温泉水の化学的性質も変化することが明らかになった。また、群発地震の発生回数と火山ガス組成には関係性が見出されている(代田,2013)。観測期間中における周辺の群発地震の数(箱根温泉地学研究所ホームページを引用)の増加と共に、本研究試料中のCl-/SO42-比が増加する傾向にあった。このことから、箱根大涌谷の温泉水中のCl-/SO42-比は火山活動に関連している可能性が示唆される。温泉水の安定同位体比において地点1のδD、δ18Oは53.3〜-10.2‰、-7.3〜8.3‰と大きな変動が見られたが、地点ににおいては-34.2〜-27.9‰、-0.7~2.5‰となり、地点1のような幅広い変動を示さなかった。この要因として、両地点における温泉水の湧出形態の違いが挙げられる。温泉水中のδD、δ18Oと群発地震との間には、群発地震の発生に伴いにδD、δ18Oは減少する傾向が地点1、2共に見られたが、地点2の方がより明確であった。