日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS21] 惑星科学

2015年5月25日(月) 11:00 〜 12:45 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*黒澤 耕介(千葉工業大学 惑星探査研究センター)、濱野 景子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、座長:鎌田 俊一(北海道大学理学研究院)、東 真太郎(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

12:00 〜 12:15

[PPS21-37] LIBSによるその場K-Ar年代測定法の基礎実験

*芝崎 和夫1奥村 裕1長 勇一郎1亀田 真吾1三部 賢治2三浦 弥生2杉田 精司2 (1.立教大学、2.東京大学)

キーワード:LIBS, その場年代計測, K-Ar法

背景:惑星表面の形成年代を知ることは重要である。近年ではサンプルリターンを行わずにその場で年代測定をする方法が模索されている。しかし、これまでに地球外で行われたその場年代測定は、NASAのローバCuriosityが火星で行った1例のみである。CuriosityはKをα粒子X線分光計(APXS)、Arを四重極質量分析計(QMS)で測定し、K-Ar年代測定を行った。これらの装置は大型であり、運用には大型のローバが不可欠である。そこで、本研究ではLIBS (Laser Induced Breakdown Spectroscopy:レーザー誘起絶縁破壊分光装置)でKとAr両方を検出するその場K-Ar年代測定を検討している。本手法はNASAの手法と比較し検出機器が1つで済むため、大幅な小型軽量化が期待できる上、LIBSの特性上遠隔性があり、迅速な測定が可能になる。しかし、これまでLIBSを用いた岩石中のArの検出例はなかった。
目的:そこで本研究では、LIBSによる岩石中のAr検出の可能性を検証するための実験を行った。
Ar検出実験:大気圧下で生成されるレーザー生成プラズマの典型的な温度と電子密度はそれぞれ1 eV (11600 K)、?10?^17 cm^(-3)である。これらの値を使いSahaの式を用いて輝線強度を計算すると、104.8 nmと106.7 nmの中性原子が発する輝線強度が卓越する。そこで本研究では真空紫外領域で分光測定を行った。試料にはAISTの玄武岩標準試料JB-1aと、この標準試料にArを加えた試料(Ar含有量0.1 cc/g)を使用した。レーザーにはNd:YAGレーザー(波長1064 nm, パルス幅5-7 ns, パルスエネルギー50 mJ)を用いた。レーザー照射によって生成されたプラズマは凹面回折格子で分光される。検出器には蛍光面付MCPを使用し、蛍光面に映ったスペクトル像をCCDカメラで撮像してスペクトルを得た。
結果と議論:純粋なSiを試料として予備実験を行ったところ、106.7 nmに当初想定していなかったSi^(3+)輝線を検出した。高い励起エネルギーを必要とする輝線を検出したことから、プラズマの温度が予想よりも高温であると考えられる。高温を考慮すると、Arは電離していると考えられるので、中性原子の輝線より検出可能性が高いと考えられる83.5 nmにあるAr4+の輝線検出実験も行ったが、O^(2+)輝線(83.4 nm)の存在によりAr輝線を検出することはできなかった。本研究では、真空紫外領域でOやSiの多価イオンの輝線を多数検出し、106.7 nmのSi^(3+)輝線と83.4 nmのO^(2+)がAr輝線と重なることが明らかになった。プラズマの温度は時間とともに急速に減少していくので、岩石のLIBS分析には高速時間ゲートをかけて多価イオン輝線を取り除くことが有効だと考えられる。