日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS32] 地球掘削科学

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*斎藤 実篤(独立行政法人海洋研究開発機構)、道林 克禎(静岡大学理学研究科地球科学専攻)、廣野 哲朗(大阪大学 大学院 理学研究科 宇宙地球科学専攻)、梅津 慶太(独立行政法人海洋研究開発機構)

18:15 〜 19:30

[MIS32-P10] 統合国際深海掘削計画第337次研究航海の非弾性ひずみ回復(ASR)測定結果

*林 為人1谷川 亘1山本 裕二2森田 澄人3山田 泰広4稲垣 史生1 (1.海洋研究開発機構 高知コア研究所、2.高知大学、3.産業技術総合研究所、4.海洋研究開発機構 掘削科学センター)

キーワード:応力, 非弾性ひずみ回復法, IODP, Exp 337

IODP (Integrated Ocean Drilling Program)による下北八戸沖石炭層生命圏掘削(第337次研究航海、Exp337)は、青森県八戸市の沖合約80km、水深1,180mの地点(C0020)において「ちきゅう」によるライザー掘削を行い、当時の海洋科学掘削史上の最深記録となる海底下深度2,466mまで到達した。海底下深度1,276.5m~2,466mの範囲において、コア試料の採取を行った。本研究は、当該掘削のコア試料を用いて、地層の三次元応力情報を得る目的で、コア試料の非弾性ひずみ回復(Anelastic strain recovery、ASRと略称)を「ちきゅう」船上で測定した。
 コア試料が地下で負荷していた応力が掘削により解放された場合、岩石の弾性ひずみは瞬間的に解放され、その解放のプロセスは測定することができない。しかし、非弾性ひずみは徐々に回復するので、コア試料が船上に上がってからでも、その一部を測定することが可能である。このコア試料の非弾性ひずみテンソルと解放された応力テンソルとの関連性を利用した応力測定法は、非弾性ひずみ回復法(ASR法)といい、IODP Exp315とExp316においては海洋科学掘削の分野において初めて成功に適用された(Byrne et al., 2009; GRL, Vol.36, L23310)。
 Exp337においては、海底下深度1,370~2,448mの範囲から計7つのコア試料を採取して、6つのコア試料について良質な非弾性ひずみ回復の時間連続変化データを得ることができた。海底下深度2,448mから採取されたコア試料のASR測定は、海洋科学掘削計画では最深の適用例である。本研究ではASRの測定方法として、Byrne et al. (2009)と同様な方法・装置・実験手順で行った。また、非弾性ひずみ回復測定後のコア試料を用いて、古地磁気測定によるコアの定方位を行なった。その結果、浅部の5試料で測定した応力状態は、基本的に正断層型、すなわち、最大主応力の方向はほぼ鉛直方向であった。最深(2,448 mbsf)のコア試料の非弾性ひずみ回復から得られた最大主応力は、約30°の傾斜ではあるが、概ね逆断層型の応力状態を呈した。一方、水平面内の二次応力状態でみれば、すべての深度の最大水平主応力の方向は、東南東-西北西から東北東-西南西までの範囲に分布しており、平均的に東西方向であった。
謝辞:本研究で使用したコア試料はIODPの提供によるものである。また、船上での実施についてはExp337 Scientists, 「ちきゅう」の掘削オペレーションチーム、ラボのテクニシャーンの協力を得たので、ここに深謝の意を申し上げる。