16:45 〜 17:00
[SGC50-10] 阿蘇火山火砕流堆積物中のアパタイトの揮発性元素組成
キーワード:アパタイト, 揮発性元素, 水
地球の水は,表層や内部において生命活動やマントルダイナミクスなどに大きな影響を及ぼしている.そのような水の起源の解明のためには,初期地球内部の水の量や,地球の材料物質と考えられている隕石中の揮発性成分量を明らかにすることが重要である.この手がかりの1つに,地球最古のジルコンが包有する初生的なアパタイトがある(山本 他, 2013).アパタイトは結晶中に揮発性成分(F, Cl, OH)を持つため,このアパタイトから初期地球内部の水,さらにはF, Clについての情報を得ることが期待される.また,隕石中のアパタイトから地球の材料物質の水やF, Clについて推測することも可能であると考えられる.
しかしながら,アパタイト-メルト間の揮発性成分量の関係についての知識は不十分であり,特にアパタイト中の水についての先行研究は多くない.Mathez and Webster (2002)やWebster et al. (2009)では,高温高圧実験によってアパタイト-メルト-フルイド間のF, Clの分配について明らかにしようとしているが,アパタイト中のOHや揮発性元素サイト(Xサイト)中でのOH-F-Clの交換関係については議論されていない.また,Pan and Fleet (2002)では,アパタイト中の揮発性元素の組成は揮発性元素以外の元素の影響を受けると述べられている.よって本研究では,阿蘇火山火砕流堆積物中のアパタイトと,斜長石中のメルトインクルージョンの揮発性成分を分析し,水も考慮に入れたXサイトでの交換関係や,揮発性元素組成について影響を与え得るその他の元素について調べることで,アパタイト-メルト間で揮発性成分がどのように分配されるかを明らかにすることを目的とする.
本研究では,Aso-3とAso-4それぞれの安山岩質軽石と流紋岩質軽石の計4試料を用いた.岩石試料からアパタイトを取り出し,EPMA(京大理学研究科)で主成分元素とF, Cl量を、nano-SIMS(東大大気海洋研)ではOH量を組成分析した.斜長石中のメルトインクルージョンは小豆畑(2009)の試料を用い,EPMAで主成分元素とF, Cl量を組成分析した.分析の結果,1試料中のアパタイトのCl量はほぼ一定である一方,F量に幅があった.これはFとOHが交換関係にあることを示す.また,F, Clは流紋岩質試料の方に,OHは安山岩質試料の方により多いことがわかった.メルトインクルージョンとアパタイトの間にF, Clの相関性は見られなかったが,温度・圧力・斜長石組成等から見積もられたホストマグマ中のH2O量(Kaneko et al., 2007)とアパタイト中のOH量との間には正の相関がみられた.
また,アパタイト中のOH濃度とCaO, P2O5, MgO各濃度に正の相関が見られたことから,FまたはOHの挙動に影響を与える要因としてCa, P, Mgの存在が考えられる.例えば,アパタイト中のCaがその他の元素(Na, K, REEなど)や空孔に置換されることに伴ってXサイトでOHがFに置換される可能性がある.さらに,アパタイト族はM5(ZO4)3Xで表されるが,アパタイトのMサイトに入る陽イオン量は酸素13に対し5と期待されるところ,本試料では4.66-4.88と少なかった.そのため,希土類元素などMサイトに入る可能性のある元素についてさらなる分析が必要である.
しかしながら,アパタイト-メルト間の揮発性成分量の関係についての知識は不十分であり,特にアパタイト中の水についての先行研究は多くない.Mathez and Webster (2002)やWebster et al. (2009)では,高温高圧実験によってアパタイト-メルト-フルイド間のF, Clの分配について明らかにしようとしているが,アパタイト中のOHや揮発性元素サイト(Xサイト)中でのOH-F-Clの交換関係については議論されていない.また,Pan and Fleet (2002)では,アパタイト中の揮発性元素の組成は揮発性元素以外の元素の影響を受けると述べられている.よって本研究では,阿蘇火山火砕流堆積物中のアパタイトと,斜長石中のメルトインクルージョンの揮発性成分を分析し,水も考慮に入れたXサイトでの交換関係や,揮発性元素組成について影響を与え得るその他の元素について調べることで,アパタイト-メルト間で揮発性成分がどのように分配されるかを明らかにすることを目的とする.
本研究では,Aso-3とAso-4それぞれの安山岩質軽石と流紋岩質軽石の計4試料を用いた.岩石試料からアパタイトを取り出し,EPMA(京大理学研究科)で主成分元素とF, Cl量を、nano-SIMS(東大大気海洋研)ではOH量を組成分析した.斜長石中のメルトインクルージョンは小豆畑(2009)の試料を用い,EPMAで主成分元素とF, Cl量を組成分析した.分析の結果,1試料中のアパタイトのCl量はほぼ一定である一方,F量に幅があった.これはFとOHが交換関係にあることを示す.また,F, Clは流紋岩質試料の方に,OHは安山岩質試料の方により多いことがわかった.メルトインクルージョンとアパタイトの間にF, Clの相関性は見られなかったが,温度・圧力・斜長石組成等から見積もられたホストマグマ中のH2O量(Kaneko et al., 2007)とアパタイト中のOH量との間には正の相関がみられた.
また,アパタイト中のOH濃度とCaO, P2O5, MgO各濃度に正の相関が見られたことから,FまたはOHの挙動に影響を与える要因としてCa, P, Mgの存在が考えられる.例えば,アパタイト中のCaがその他の元素(Na, K, REEなど)や空孔に置換されることに伴ってXサイトでOHがFに置換される可能性がある.さらに,アパタイト族はM5(ZO4)3Xで表されるが,アパタイトのMサイトに入る陽イオン量は酸素13に対し5と期待されるところ,本試料では4.66-4.88と少なかった.そのため,希土類元素などMサイトに入る可能性のある元素についてさらなる分析が必要である.