09:30 〜 09:45
[SSS26-03] Hi-net高密度地震観測と地震波伝播シミュレーションから見た,日本列島の地殻・マントル不均質性と近地地震波動伝播の地域性
1.はじめに
日本列島に展開されたHi-net高感度地震観測網の地震波形データと,高分解能トモグラフィ等から推定された地震波速度・減衰モデルを用いた地震波伝播シミュレーションから,日本の近地地震波動場の地域性と不均質な地下構造との対応を詳しく評価した。
近地地震波場は,伝播経路に沿った地殻・マントルの不均質構造の影響を強く受けるが,中でも,屈折波(PnとSn相)は地殻/マントル境界(モホ面)近傍の速度構造に敏感である。また,短周期表面波(Rg波)は地表付近の低速度層の影響を受け,強い分散と減衰を起こす。そして,地殻内を広角反射して伝わるLg波は,地表・モホ面形状,地殻/マントルの速度コントラスト,地殻内の不均質構造・減衰構造など,地殻全体の影響を受ける。伝播特性の異なる地震波を使い分けることにより,地殻・マントルの不均質性を総合的かつ詳細な推定が期待できる。
2.データ・解析手法
日本周辺で発生した,M4-5程度の浅い(H<40km)地震におけるHi-net観測データを用いて,各地の地震波伝播特性を評価し,特に地殻・マントル構造が大きく異なると期待される西南日本と東北日本の地震波伝播特性の違いを調べた。次に,高分解能速度構造トモグラフィ(例えば,Matsubara et al., 2008)や減衰構造トモグラフィ(関根,2001;中村,2008)の結果を用いて,高周波数(f<6 Hz)地震波伝播の2次元・3次元差分法シミュレーションを行なった。1-2 Hzを超える高周波数地震動は,地殻・マントルの短波長(<数km)不均質構造により強い散乱を起こして波形の伸びや減衰を起こす。そこで,既往の研究(Furumura and Kennett, 2005; Furumura et al., 2014等)を参考にして,相関距離Ax,y/Az=10km/0.5km,標準偏差e=2%のvonKarman型の分布関数を持つ短波長速度揺らぎをトモグラフィモデルに付加した「ハイブリッド型不均質モデル」を用いて波動伝播計算を行った。
3.結論
Hi-net地震観測データ解析と地震波伝播シミュレーションに基づき,近地地震波伝播の地域とその原因に関して,以下の結論を得た:
(1)西南日本ではSnの振幅が大きい(東北日本に比べて)。その原因は,1)西南日本のモホ面直下の最上部マントル(サブモホ)に速度勾配があり,最上部マントルを伝播するS波が地殻内に戻り大きなSnを作ること,2)マントルのQsが大きく(>800)Snの距離減衰が小さいことが原因と考えられる。
(2)東北日本でLg波の距離減衰が大きい(西南日本に比べて)。その原因は,1)東北地方(特に火山地帯)の低速度の表層地盤において強いLg?P波変換が発生してS波エネルギーが弱まること,2)東北地方の背弧側(日本海側)では地殻内のQs値が小さくLgの距離減衰が大きいこと,3)東北地方ではモホ面の速度コントラストが小さい(Vs:3.5/6.0km/s)く,マントルへのS波エネルギーの散逸が起きやすいことが考えられる。
(3)東北日本でPg波の振幅が大きい。その原因は,東北地方の低速度の表層の存在により,地表でのP->S変換が抑制され,P波が地殻(上部地殻)内を広角反射しながらPg波として伝播するためと考えられる。
(4)東北日本で短周期表面波(Rg波)の減衰が大きい。その原因は,1)東北地方の低速度の表層で表面波が強い分散を起こし,波群の伸びとともに振幅が小さくなること,2)低Qsの地殻(特に表層)による短周期地震動の距離減衰が大きいことが考えられる。
日本列島に展開されたHi-net高感度地震観測網の地震波形データと,高分解能トモグラフィ等から推定された地震波速度・減衰モデルを用いた地震波伝播シミュレーションから,日本の近地地震波動場の地域性と不均質な地下構造との対応を詳しく評価した。
近地地震波場は,伝播経路に沿った地殻・マントルの不均質構造の影響を強く受けるが,中でも,屈折波(PnとSn相)は地殻/マントル境界(モホ面)近傍の速度構造に敏感である。また,短周期表面波(Rg波)は地表付近の低速度層の影響を受け,強い分散と減衰を起こす。そして,地殻内を広角反射して伝わるLg波は,地表・モホ面形状,地殻/マントルの速度コントラスト,地殻内の不均質構造・減衰構造など,地殻全体の影響を受ける。伝播特性の異なる地震波を使い分けることにより,地殻・マントルの不均質性を総合的かつ詳細な推定が期待できる。
2.データ・解析手法
日本周辺で発生した,M4-5程度の浅い(H<40km)地震におけるHi-net観測データを用いて,各地の地震波伝播特性を評価し,特に地殻・マントル構造が大きく異なると期待される西南日本と東北日本の地震波伝播特性の違いを調べた。次に,高分解能速度構造トモグラフィ(例えば,Matsubara et al., 2008)や減衰構造トモグラフィ(関根,2001;中村,2008)の結果を用いて,高周波数(f<6 Hz)地震波伝播の2次元・3次元差分法シミュレーションを行なった。1-2 Hzを超える高周波数地震動は,地殻・マントルの短波長(<数km)不均質構造により強い散乱を起こして波形の伸びや減衰を起こす。そこで,既往の研究(Furumura and Kennett, 2005; Furumura et al., 2014等)を参考にして,相関距離Ax,y/Az=10km/0.5km,標準偏差e=2%のvonKarman型の分布関数を持つ短波長速度揺らぎをトモグラフィモデルに付加した「ハイブリッド型不均質モデル」を用いて波動伝播計算を行った。
3.結論
Hi-net地震観測データ解析と地震波伝播シミュレーションに基づき,近地地震波伝播の地域とその原因に関して,以下の結論を得た:
(1)西南日本ではSnの振幅が大きい(東北日本に比べて)。その原因は,1)西南日本のモホ面直下の最上部マントル(サブモホ)に速度勾配があり,最上部マントルを伝播するS波が地殻内に戻り大きなSnを作ること,2)マントルのQsが大きく(>800)Snの距離減衰が小さいことが原因と考えられる。
(2)東北日本でLg波の距離減衰が大きい(西南日本に比べて)。その原因は,1)東北地方(特に火山地帯)の低速度の表層地盤において強いLg?P波変換が発生してS波エネルギーが弱まること,2)東北地方の背弧側(日本海側)では地殻内のQs値が小さくLgの距離減衰が大きいこと,3)東北地方ではモホ面の速度コントラストが小さい(Vs:3.5/6.0km/s)く,マントルへのS波エネルギーの散逸が起きやすいことが考えられる。
(3)東北日本でPg波の振幅が大きい。その原因は,東北地方の低速度の表層の存在により,地表でのP->S変換が抑制され,P波が地殻(上部地殻)内を広角反射しながらPg波として伝播するためと考えられる。
(4)東北日本で短周期表面波(Rg波)の減衰が大きい。その原因は,1)東北地方の低速度の表層で表面波が強い分散を起こし,波群の伸びとともに振幅が小さくなること,2)低Qsの地殻(特に表層)による短周期地震動の距離減衰が大きいことが考えられる。