17:24 〜 17:27
[SCG57-P20] 日本海沿岸域における地震発生層深度
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:地震発生深度, 地震発生層, D90, D10, 震源断層
1. はじめに
日本海側に多数分布している津波や強震動を引き起こす活断層について、津波波源モデルや沿岸・陸域における震源断層モデルを構築することを目的として、文部科学省により「日本海地震・津波調査プロジェクト」が実施されている。防災科学技術研究所(防災科研)は同プロジェクトにおいて、日本海沿岸域における震源断層の断層面の深さを推定するため、地殻内で発生する地震の発生層深度を推定した。地震発生層深度は、震源断層における地震の発生規模の推定に結び付く。地震発生層は、地殻内部における脆性破壊の可能な範囲に対応し、そのような媒質の性質は、岩質・温度・圧力等に強く依存している。そのため、地震発生層深度は地域性を持つので、震源断層が想定されている場所毎に地震発生深度を推定する必要がある。
微小地震の発生分布から地震発生層の下限を評価する指標として、D90がある。D90とは、その深さより浅い領域で、その地域の地殻内において発生する地震数の90%が含まれることを示す。この地殻内には、沈み込むプレート内で発生する地震は含まないものとする。一方、地震発生層の上限の指標としてはD10があり、その深さよりも浅い領域に、その地域で発生する地震数の10%が含まれることを表す。本研究では、日本海沿岸域におけるD10, D90を推定し、地震発生層の深度および厚さを求める。
2. データ・手法
防災科研の高感度地震観測網(Hi-net)では、一次元速度(1D)構造(鵜川・他,1984)を用いて震源決定が行われている。2001年1月~2013年12月に日本海沿岸において決められた地殻内で発生したマグニチュード(M)1.5以上の地震について、日本列島全域における詳細な三次元速度(3D)構造(Matsubara and Obara, 2011)を用いて、震源再決定を行った。
次に、これらの震源カタログを用いて、地震発生層深度を推定した。ある地点を中心とした0.20°四方の領域において地表から深さ50kmまでに発生した地震の個数うち、地表から10%, 90%の地震が発生した深さをそれぞれD10, D90として、この間を地震発生層の厚さとする。
3. 結果
3D構造を用いて震源再決定をすることにより、地表付近の地震は約2kmほど深く、深さ15~30km付近で発生していた地震は約5km程度浅くなった。これは、観測点補正値等を考慮し、地表付近の堆積層の影響が除かれたためである。
3D構造に基づくD10は1D構造に基づく深さよりも深くなった。秋田県~青森県にかけての陸域では、深さ8~12kmと深くなっているが、その他の地域では深さ4~8kmに分布している。沿岸海域については、北海道沖では陸域と同程度の4~8kmである一方、青森県以南の沿岸域のD10は、陸域に比べて深くなり、8~16kmであった。
D90は1D構造に基づく深さよりも3D構造に基づく深さのほうが浅くなった。陸域では多くの領域が9~15㎞であるが、沿岸海域では16~24㎞と深くなる。北海道北部・青森県から新潟県では16~24kmと深くなる。さらに、山形県沖の飛島周辺や新潟県沖では深さ30km程度まで達する領域も存在する。
地震発生層の厚さは、1D構造に基づく厚さよりも3D構造に基づいた厚さのほうが薄くなった。北海道北部では陸域から沿岸海域まで北側の18kmから南側の5km程度と地域により大きな差が存在する。北海道南部では陸域では4~8km程度であるのに対し、海域では6~14kmと厚くなる。青森県から秋田県の男鹿半島付近では2~8km程度である。一方、男鹿半島以南~新潟県にかけての地域では、陸域においても8~16kmと非常に厚く、特に海域に向かって厚くなっている。富山県~鳥取県の地域では、2~7kmと薄くなっている。
4. 議論
Omuralieva et al. (2012)は、気象庁一元化震源を3D構造で再決定したうえで、D90を推定している。本研究と同様3D構造に基づくD90は気象庁一元化に基づくものよりも浅くなっている。また、北海道北部、秋田県から新潟県にかけての沿岸で深く、富山県より西で浅い点も一致する。
5. 結論
日本海沿岸における地震発生層の厚さを推定した。3D構造に基づく震源カタログを用いることにより、1D構造に基づく震源カタログよりも浅い地震は深く、深い地震は浅く再決定されることにより、D10は深く、D90は浅くなり、地震発生層の厚さも薄くなった。北海道北部と男鹿半島から新潟県の領域では地震発生層の厚さが厚いが、富山県~鳥取県にかけては、非常に薄くなっている。
日本海側に多数分布している津波や強震動を引き起こす活断層について、津波波源モデルや沿岸・陸域における震源断層モデルを構築することを目的として、文部科学省により「日本海地震・津波調査プロジェクト」が実施されている。防災科学技術研究所(防災科研)は同プロジェクトにおいて、日本海沿岸域における震源断層の断層面の深さを推定するため、地殻内で発生する地震の発生層深度を推定した。地震発生層深度は、震源断層における地震の発生規模の推定に結び付く。地震発生層は、地殻内部における脆性破壊の可能な範囲に対応し、そのような媒質の性質は、岩質・温度・圧力等に強く依存している。そのため、地震発生層深度は地域性を持つので、震源断層が想定されている場所毎に地震発生深度を推定する必要がある。
微小地震の発生分布から地震発生層の下限を評価する指標として、D90がある。D90とは、その深さより浅い領域で、その地域の地殻内において発生する地震数の90%が含まれることを示す。この地殻内には、沈み込むプレート内で発生する地震は含まないものとする。一方、地震発生層の上限の指標としてはD10があり、その深さよりも浅い領域に、その地域で発生する地震数の10%が含まれることを表す。本研究では、日本海沿岸域におけるD10, D90を推定し、地震発生層の深度および厚さを求める。
2. データ・手法
防災科研の高感度地震観測網(Hi-net)では、一次元速度(1D)構造(鵜川・他,1984)を用いて震源決定が行われている。2001年1月~2013年12月に日本海沿岸において決められた地殻内で発生したマグニチュード(M)1.5以上の地震について、日本列島全域における詳細な三次元速度(3D)構造(Matsubara and Obara, 2011)を用いて、震源再決定を行った。
次に、これらの震源カタログを用いて、地震発生層深度を推定した。ある地点を中心とした0.20°四方の領域において地表から深さ50kmまでに発生した地震の個数うち、地表から10%, 90%の地震が発生した深さをそれぞれD10, D90として、この間を地震発生層の厚さとする。
3. 結果
3D構造を用いて震源再決定をすることにより、地表付近の地震は約2kmほど深く、深さ15~30km付近で発生していた地震は約5km程度浅くなった。これは、観測点補正値等を考慮し、地表付近の堆積層の影響が除かれたためである。
3D構造に基づくD10は1D構造に基づく深さよりも深くなった。秋田県~青森県にかけての陸域では、深さ8~12kmと深くなっているが、その他の地域では深さ4~8kmに分布している。沿岸海域については、北海道沖では陸域と同程度の4~8kmである一方、青森県以南の沿岸域のD10は、陸域に比べて深くなり、8~16kmであった。
D90は1D構造に基づく深さよりも3D構造に基づく深さのほうが浅くなった。陸域では多くの領域が9~15㎞であるが、沿岸海域では16~24㎞と深くなる。北海道北部・青森県から新潟県では16~24kmと深くなる。さらに、山形県沖の飛島周辺や新潟県沖では深さ30km程度まで達する領域も存在する。
地震発生層の厚さは、1D構造に基づく厚さよりも3D構造に基づいた厚さのほうが薄くなった。北海道北部では陸域から沿岸海域まで北側の18kmから南側の5km程度と地域により大きな差が存在する。北海道南部では陸域では4~8km程度であるのに対し、海域では6~14kmと厚くなる。青森県から秋田県の男鹿半島付近では2~8km程度である。一方、男鹿半島以南~新潟県にかけての地域では、陸域においても8~16kmと非常に厚く、特に海域に向かって厚くなっている。富山県~鳥取県の地域では、2~7kmと薄くなっている。
4. 議論
Omuralieva et al. (2012)は、気象庁一元化震源を3D構造で再決定したうえで、D90を推定している。本研究と同様3D構造に基づくD90は気象庁一元化に基づくものよりも浅くなっている。また、北海道北部、秋田県から新潟県にかけての沿岸で深く、富山県より西で浅い点も一致する。
5. 結論
日本海沿岸における地震発生層の厚さを推定した。3D構造に基づく震源カタログを用いることにより、1D構造に基づく震源カタログよりも浅い地震は深く、深い地震は浅く再決定されることにより、D10は深く、D90は浅くなり、地震発生層の厚さも薄くなった。北海道北部と男鹿半島から新潟県の領域では地震発生層の厚さが厚いが、富山県~鳥取県にかけては、非常に薄くなっている。