11:45 〜 12:00
[SGL39-11] 太古代ジルコン中アパタイトの水素、ストロンチウム同位体比測定:初期地球内部進化の解明を目指して
キーワード:アパタイト, ウラン鉛年代測定, 水素同位体比, ストロンチウム同位体比, 太古代
太古代火成岩中の水素などの揮発性成分や、ストロンチウムなどインコンパティブルな元素の同位体比を明らかにすることは、初期地球の内部進化を解釈する重要な手掛かりの一つである.火成岩中に産するジルコンにはアパタイトやガラスなどの包有物が見られることがあり、特にアパタイトは水素やハロゲン、ストロンチウムなどの元素を保有しているため、分析対象として好ましい.こうした包有物はジルコンに保護されることによって初生的な同位体比を保持していると期待されるが、数十マイクロのジルコン中の包有物であるため数マイクロ程度の直径であるものがほとんどである.そのため、こうした包有物の分析には高精度かつ高空間分解能な手法が求められる.本研究ではNanoSIMS50を用いてこれらの問題へのアプローチを行った.
本研究におけるこれまでの分析において、カナダ、Nuvvuagittuq supracrustal beltのトーナル岩から分離されたジルコンを対象にNanoSIMS50を用いたU-Pb年代測定を行ってきた.過去の研究で報告されているこのトーナル岩の年代は、LA-MC-ICP-MSを用いたU-Pb年代測定法で3661±4Maであるが、これと良く一致する3638±19Maの年代が得られた.一方で一部の試料において2つの年代値の不一致(ディスコーダント)が見られており、熱変成による鉛の損失が示唆された.このようなジルコンでは包有物中の揮発性元素の始原性は失われている可能性が高いと考えられる.そのような試料は対象外とし、包有物アパタイト中の水素同位体比およびストロンチウム同位体比の測定を行った.測定はCs+イオンを1次イオンとして水素同位体比測定ではHおよびDを、また、O-イオンを1次イオンとしてストロンチウム同位体比測定では86Sr、87Sr、88Srを、磁場を変化させひとつの検出器で1組の同位体比を測定可能なよう分析を行った.測定においては試料表面のコンタミネーションやチャージアップの影響を極力低減するため、測定領域のスパッタリングや電子銃によるチャージアップの中和など最も効果的な方法を検証した.
アパタイトの水素同位体比の分析の結果、分析試料表面や分析チャンバーに由来する水素のコンタミネーションが大きいものの、ジルコン中アパタイトの水素同位体比値として+17±40‰という値を得た.これはPopeら(2012)によって報告されている太古代海洋の水素同位体比値-25‰と比較して重い値であり、直接的に地球内部物質の水素同位体比を測定した初めての例である.ストロンチウムの同位体比の測定についてもアパタイトを対象とした分析手法の確立を進めており、本発表ではその最新の分析結果を報告する.
本研究におけるこれまでの分析において、カナダ、Nuvvuagittuq supracrustal beltのトーナル岩から分離されたジルコンを対象にNanoSIMS50を用いたU-Pb年代測定を行ってきた.過去の研究で報告されているこのトーナル岩の年代は、LA-MC-ICP-MSを用いたU-Pb年代測定法で3661±4Maであるが、これと良く一致する3638±19Maの年代が得られた.一方で一部の試料において2つの年代値の不一致(ディスコーダント)が見られており、熱変成による鉛の損失が示唆された.このようなジルコンでは包有物中の揮発性元素の始原性は失われている可能性が高いと考えられる.そのような試料は対象外とし、包有物アパタイト中の水素同位体比およびストロンチウム同位体比の測定を行った.測定はCs+イオンを1次イオンとして水素同位体比測定ではHおよびDを、また、O-イオンを1次イオンとしてストロンチウム同位体比測定では86Sr、87Sr、88Srを、磁場を変化させひとつの検出器で1組の同位体比を測定可能なよう分析を行った.測定においては試料表面のコンタミネーションやチャージアップの影響を極力低減するため、測定領域のスパッタリングや電子銃によるチャージアップの中和など最も効果的な方法を検証した.
アパタイトの水素同位体比の分析の結果、分析試料表面や分析チャンバーに由来する水素のコンタミネーションが大きいものの、ジルコン中アパタイトの水素同位体比値として+17±40‰という値を得た.これはPopeら(2012)によって報告されている太古代海洋の水素同位体比値-25‰と比較して重い値であり、直接的に地球内部物質の水素同位体比を測定した初めての例である.ストロンチウムの同位体比の測定についてもアパタイトを対象とした分析手法の確立を進めており、本発表ではその最新の分析結果を報告する.