日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG01] International comparison of landscape appreciation

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 101B (1F)

コンビーナ:*Christoph Rupprecht(Griffith School of Environment, Griffith University)、高瀬 唯(千葉大学大学院園芸学研究科)、古谷 勝則(千葉大学大学院園芸学研究科)、座長:Christoph Rupprecht(Griffith School of Environment, Griffith University)

09:00 〜 09:15

[HGG01-01] 沿岸域の住民による風力発電施設の景観印象評価とその要因

*狭間 倫哉1松島 肇2 (1.北海道大学大学院農学院、2.北海道大学大学院農学研究院)

キーワード:風力発電, 海岸景観, 属性, 印象評価, 住民, 再生可能エネルギー

近年、再生可能エネルギーの中でも特に風力発電が注目されている。特に北海道の沿岸部は風力発電の建設適地として、全国的にも高いポテンシャルを有することが知られており、風力発電施設による次世代エネルギーパークへの期待は高い。一方で、風力発電施設を導入することにより、景観への影響、鳥類を中心とした生態系への影響、騒音、低周波音やシャドーフリッカーによる近隣住民への健康被害への懸念も指摘されており、日本でもしばしば近隣住民との軋轢が生じている。しかし、鳥類や健康被害については注目されるものの、景観に関しては可視・不可視のみが注目され、見えることの景観的影響まで考慮された研究は少ない。本研究は、日常で風車との関わりが異なる4つの地域において、風車のある景観に対する印象評価について、回答者の属性や風力発電施設に対する考え方の違いとの関連を明らかにし、景観の印象評価に影響する要因を明らかにすることを目的とした。
11基の風車群が町のシンボルである寿都町の本町地区および歌棄地区、これから風力発電施設が建設予定の札幌市手稲区、3基の市民風車を有する石狩市を調査対象地とし、「風車のある写真の印象評価」、「風車に対する考え方」、「回答者の属性」に関するアンケート調査を行った。
写真の印象評価では、いずれの地域でも遠景、中景、近景と風車が大きくなるにつれて評価が下がる傾向がみられた。次に風車に対する考え方の設問では、寿都は風車に肯定的な考え方、手稲は風車に否定的な考え方を持つ傾向があり、石狩はその中間の考え方を持つ傾向が見られた。この得点を用いて写真の評価に影響を与えている要因を因子分析で特定したところ、「人体・環境に及ぼす影響」と「風車の能力・特性」という2つの因子が得られた。さらにこの因子得点を用いて回答者を4つのクラスターに分類した。風車に対して肯定的な考え方を持つグループは風車のない写真よりも風車のある写真の方が好ましいと評価していた。また風車に対して否定的な考え方を持つグループは風車がある写真はいずれも好ましくないと評価した。
本研究の結果から、風車の可視・不可視や見えの大きさも景観の印象評価に影響を与えていたが、「風車に対する考え方の違い」も景観の印象評価に影響することが明らかとなった。風力発電施設の新設に際して、景観面からはこのような考え方の違いが景観の印象評価に影響することを考慮して、丁寧な住民説明会や事後対応の十分な議論を行うことが重要だと考えられた。