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[MIS25-08] 貞観津波の堆積物の石英光ルミネッセンス年代測定
キーワード:津波, ルミネッセンス年代, 貞観地震, 津波堆積物, 仙台平野, 年代測定
光ルミネッセンス(OSL)年代測定は,堆積物粒子に直接適用できることから津波堆積物の編年に有効な方法となる可能性がある.西暦869年貞観津波の堆積物にOSL年代測定を適用することにより,そうした古い津波堆積物への有効性を検証した.仙台平野において得られたジオスライサーにおいて,OSL年代を貞観津波の年代と比較した.ジオスライサーでは,下位より海浜-砂丘堆積物,泥炭層,貞観津波の堆積物,泥炭層,土壌,2011年津波の堆積物が観察された.海浜-砂丘堆積物の2試料,貞観津波の堆積物の4試料から粒径180-250 μmの石英粒子を抽出し,標準的なSAR法により等価線量(De,bulk)を求めた.観察されたOSL信号には通常年代測定に用いる減衰の速い成分(ファストコンポーネント)よりも減衰速度が中程度の成分(ミディアムコンポーネント)が卓越している.そのため貞観堆積物の4試料のうち2試料については3成分の指数関数的減衰を仮定してOSL信号を分離し,ファストコンポーネントにもとづいた等価線量(De,fast)を求めた.繰り返し測定によるDe,bulkの分布はどの試料でもばらつきが小さく,この地点での貞観津波堆積物の砂は津波による堆積前に露光していたことが示唆される.しかしDe,bulkにもとづく堆積年代は,貞観津波の年代に比べて30-40%程度の過小評価となり,下位の海浜-砂丘堆積物の年代も貞観津波より若くなる結果が得られた.一方,De,fastでは若干の過小評価が残るもののほぼ適当な結果が得られた.アニーリングテストの結果,バルクの信号で卓越するミディアムコンポーネントが熱的に不安定であり,過小評価の原因となっていることが明らかとなった.このようなミディアムコンポーネントの卓越は活動縁辺でよく報告されることから,津波堆積物のOSL年代測定においては適切に扱う必要がある.